【小3・4】偏差値20~30台の子の国語の苦手の克服
うちの子の国語の偏差値が30台なんです…
扱う中心が日本語であるため、他科目と比べてそれまでの活字体験や生活環境が点数に影響を与えてしまうのが国語という科目です。
何年も指導していると、それこそ入塾時は偏差値20~30台という生徒さんとたくさん出会ってきました。
模擬試験でこの辺の偏差値が続くと、中学受験はあきらめたほうがいいのかもしれないという気持ちになってしまうかもしれませんが、もしかしたら学び方のアプローチを変えることで大きな変化が起こる可能性があります。
今回は僕がこうした生徒さんを担当することになった場合に使う教材と設定するカリキュラムの紹介と、指導法や指導の際に注目する点について紹介したいと思います。
「問題演習」以外のアプローチが必要
偏差値が20台30台だからといって国語をあきらめる必要はないとはいいましたが、もちろん苦手な科目であるわけですから、成績の向上には大きな労力と時間が必要です。
(特に本人が現状勉強に対するモチベーションが高くない場合は)わずかに変化の兆しが見える程度で早くて半年、1年で何かしらの変化が認識できるくらいの長期的な向き合い方が必要です。
そしてもうひとつ、特に20台~30台前半という場合は、そもそも活字との向き合い方からインストールしなければならない場合も少なくなく、抜本的にアプローチが違うということも注意しなければなりません。
このレベルで国語が苦手な生徒さんなら、対話形式のつきっきりの指導が効果的なので、で僕の場合は個別指導で対応することにしているのですが、教材準備は多少面倒かもしれませんが、指示内容自体はどれも特別なことではないので、アレンジをすればご家庭でも実践していただけるかと思います(というか僕が個別指導に入るわけにはいかないので学生さんに教材と指導案、マニュアルを渡して対応してもらっています)
読解“以前”を鍛えるためのカリキュラム
こうした国語が非常に苦手(そもそも読めないor読む気がない)生徒さんの指導に対しては僕は次のようなカリキュラムを用意します。
これだけ?と思うかもしれませんし、何よりこれが国語?と驚かれるかもしれませんが、3年生や4年生初めでそれほど勉強に前向きでなく、かつ国語が嫌いな子であれば、入り口で保てる集中力から考えると、このくらいの分量が妥当かなあと思っています。(もちろん熱心に取り組んでくれる子や指示を聞いてくれる子に関しては知識系の問題や、その他ゲーム感覚で行えるような心情把握系のプリントを渡します)
具体的にそれぞれのカリキュラムの意図は次の通りです。
①週間課題のチェック
正直指導のメインはここと言っても過言ではありません。
国語(というかそもそも勉強)が苦手な子に関しては、生活習慣の一部に勉強を組み込むことが必要になります。
そのため僕の教材では習慣課題として、毎日の語句調べ(こちらが1日ごとに次の週で使う教材に出てくる語句の中から選んでプリントにしてあるものを用いて辞書で調べる&例文作り)と毎日の音読(保護者チェック欄付き)課しています。
分量に関しては初めは取り組みすらしない子も多いので初めは音読と意味調べを1日おきを目標にしたりする場合もあります。(とりあえずの目標は半年で課題をやり切る習慣をつけること)
こうした課題に取り組んでもらい、授業の冒頭で添削をしていきます。
添削の際には作った文章が主語述語を意識したものになっているかどうか、習った漢字を使っているかどうかを確認すると共に、書いてきた文の内容に対して質問したり深掘りしたりということをして褒めることを重視しつつコミュニケーションを深めます。
これは文を書いてくることが子供たちにとってポジティブな行為となることを意識して行っています。
音読に関しては前回単元のテキストの文章を段落や場面ごとに分けて毎日数分の音読をしてもらっているので、それをこのタイミングで伐採して音読してもらいます。
こちらも授業中には良い点を褒め、お迎えの際に必ず保護者の前で良かった点を報告するという形をとることで、音読に対する苦手意識の払拭を目指します。
また、課題に取り組めていない場合はこの時間で一緒に取り組み、辞書の引き方や例文作りのアドバイス、音読のコツを教えていきます。
②左右の文章の間違い探し
課題のチェックが終わったら文章の誤りを見つけてただす課題に取り組んでもらいます。
これは通常テキストの文章と同レベルの400字程度の文章が左右に並んでいる教材なのですが、その中には5箇所の間違いを散りばめています(漢字の間違い、主語述語が対応していない、使われる語句の順番が入れ替わっている、長いひらがな言葉の語順違い、付属語の間違いなど)。
国語を非常に苦手とする子は、a好きな語句だけを抽出して頭の中で組み合わせる、b非常に漠然と内容を受け取るという姿勢であることがすくなくありません。
両者の原因を解決するために必要なのが、「正確に文をたどる力」です。
たまに見かける新聞のコラムの書き写しという課題などはおそらくここに期待したものなのでしょうが、国語が苦手な子に書き写しはかなりハードルが高いものです。
この間違い探しは、(やや効果は劣るものの)同等の効果をより国語が苦手な子へのアクションとしてカスタマイズしたものです。
(慣れてきたら短文の書き写し、数十字の文章の書き写し、要約といった課題に変更しますが、スタートではこうした教材を用いていきます。)
ちなみにこの際、指導としてはどういった間違いに苦戦するのか、課題への取り組み姿勢と時間の変化を意識的に把握していきます。
③ひらがな文の音読
次に取り組むのがひらがな文の音読です。
これは30〜50字程度のひらがなで書かれた文(初めは文節に限られたもの、慣れてきたら文節に限られていないもの)を音読する作業なのですが、ひらがなを音読する場合、自分の中で単語の塊を意識し、その音が何を意味するかを考える必要があります。
極端な例ですが次の文を見てください。
aであれば母という名詞と、述語を受けた「ははは」という笑い声を認識する必要があります。(さらに「母の母」=「おばあちゃん」という印象も音読を通して得られるはずです)
bではまずは「すももも ももも ももの うち、ももも すももも ももの うち」という意味の塊を頭の中で意識した上で、桃とスモモという名詞を認識する必要があります。
文章読解が苦手な子は単語の音と文字、そしてイメージが結びついていない場合が多いのですが、ひらがなの音読練習はこれらを無意識に結びつける事を目的としています。
僕は徐々に難しくなるものを5種類ほど用意しています。
④400字程度の内容把握
これが終わると400字程度の内容把握の練習です。(難易度は通常使用するテキスト程度)
これは表面に文章が、裏面にそこに書かれていた内容に関する問題(主人公の名前や場所、時間帯、旅の目的といった、漠然と捉えていれば解ける一問一答)が4題用意してあり、まず時間を測って表面にある文章の意味内容をしっかり記憶するための練習です。
国語が苦手な子の中には国語を文章を読むことなく問いを見てから答えを「探す」作業であると捉えている子が少なくありません。
3年生くらいまではそれでなんとかなるかもしれませんが、高学年、まして難関校の問題を解こうとすれば、その姿勢では無理があります。
そこでこの教材を通して、「文章に目を通す→内容を頭に保持する→答える」という姿勢を訓練します。
またこの課題には、本文の内容をざっくり把握する事が苦手な子(抜き出しが苦手な子は多分ここに該当します)や濃淡のある読みができない子(文章を読むのがやたら遅い子がここに該当します)の対応にも効果が期待できます。
こうした弱点の克服が④の取り組みの目的です。
⑤漢字の練習
これが終わると漢字の練習です。
慣れてきたら家庭課題として行ってもらいますが、3年生や4年生の始めで国語が苦手な子は、まあ家で漢字の学習に取り組まないことと、取り組んでいても効果的なやり方を知らないために雑or非効率になることが少なくありません。
そこで、僕は通常指導の中に漢字の練習も組み込んでしまいます。(効果的な漢字学習ができるようになれば学校の漢字の効率化と、それそのものが漢字の対策になるという意図もあります)
漢字の学習で意識すべき点はa.丁寧な字で取り組むこと、b.濃い字でとめはねはらいを意識すること、c.パーツを意識すること、d.声に出すこと、e.意味にしっかり目を通ししたり身近な使われている例と関連づけたりすることなどが重要です。
a,bに関しては特に思考が速すぎる子に本来漢字を覚えるのに書けるべき時間(丁寧さ)を体感で習得してもらう目的と、思考速度>読解速度という状態になっているために情報の読み飛ばしが多発する子の速度調整という効果もあります。
c〜eに関しては漢字の学習を指数関数的な伸びにするために必要な要素です。
とにかく必死に書き殴るという学習をする子が少なくありませんが、あのやり方では意味や読みへの関心が湧きづらく、他の漢字との類似性への注目や同音意義語の把握などのところで躓きやすくなります。
こうした長期的に顕在化するであろう課題に予め手を打つという意味でも、授業内で漢字学習を取り入れています。
⑥通常テキストの文章読み進め
これらも終わったら初めて通常テキストに取り組みます。
こちらは問題は解かず対話形式で本文を読み進めていくという形。
指示語が出てきたらそれとなく確認したり、心情語がでてきたらどんなイメージの言葉かを尋ねたり、登場人物の性格を聞いてみたりと、とにかく会話のキャッチボールを増やし、本人の思考過程を言語化する事を目標にしています。
授業の残り時間をこれにあて、もし早く終われば問題を解きますし、解かない場合は家でやってきたい子は解いてきてもらうという形を取っています。
おわりに
以上のような指導を小3〜4年生で国語が非常に苦手な子には行っています。
まず第一目標は国語の授業というものへの抵抗感を払拭すること。
そのため①と⑥では子どもが会話を多くしやすくしてあり(①は導入として、⑥は集中力が切れかけているため)、また①③⑤が声に出すというフィジカルのアプローチ、②④⑥がテキストに向き合うという思考のアプローチという形にしています。
そして第二の目標は国語学習の習慣化です。
正直偏差値が伸びるという部分は後回しで、早くて半年、1年で上記2つが身につけば十分という感覚で指導にあたります。
もちろん目先の不安はあるでしょうが、それくらいの長期スパンで見ておかなければ国語が非常に苦手という子に変化を起こし、最終的に難関校に届くまではいかないと思うからです。
教材を用意するのは多少面倒かもしれませんが、どれもアレンジしていただければ近いことは出来るかと思います。
もしお子さんが国語嫌いで、このアプローチが効果的であると判断される方がいらっしゃいましたら、ぜひ実践してみて下さい。
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