従者旅日記 時が止まる昭和古都「中野」

新宿駅からおよそ8分、かの地は「サブカルの聖地」と呼ばれる場所、中野である。線路には陽炎がたゆたう午前11:30。日差しは暑く人々を照りつけ時折吹く風が清涼感を誘う。中野駅を降りて改札を抜けると、目の前には商店街の入り口がある。まるで獲物を誘い込む大きな口の如くそこにある入り口を入れば、どこか懐かしい雰囲気のアーケード街がある。最近のお店から老舗の面持ちで佇む寿司屋まで、今昔入り交じる空間が広がっていた。アーケードを進んでいくと繋がるように入り口がある大きな商業施設、そう、「中野ブロードウェイ」である。アーケード街を「時間が交差する場所」とするならば中野ブロードウェイは「時が止まった場所」と呼ぶにふさわしいところである。中に入ればそこはもう昭和、平成の空気感がうずくまっている。外は晴れ晴れとした空であったにも関わらず、ブロードウェイの中は薄暗くどんよりとした空間だ。しかしそれこそがこの場所を形作る一つの大事な要素なのである。

構成として地下一階から四階までが商業スペースであり全体的に高級時計、古着、古本、ソフビといったようなものが多かった。一階は古着や時計が多く、地下一階はもっぱら食品売場であった。おや、思っていた中野はもっとソフビたっぷり古本たっぷりの場所だったのだが…そんなことを考えていたが杞憂だった。二階に上がるとそこはもうサブカルの密集地帯。そこかしこにアニメやゲームの中古店がズラリと並ぶ場所であった。年代物から最近のラバスト(ラバーストラップ)、中にはレアなお宝までよりどりみどりであった。歩いていると昔好きだったウルトラマン怪獣のソフビがずらりと並ぶ区画を見つけた。懐かしい怪獣たち、思い出に耽っているとその中の一つに目を奪われた。そこにはかつて従者が喉から手が出るほど欲しかったソフビがあるではないか。まさか時を超えてこの地で出会うことができるとは、思いがけない出会いに体が震えた。この場所はどうやら本当にタイムマシンのようだ。階層を進むと三階四階には同様にサブカルグッズがずらりとならんでいる。書籍やアニメの原画、古いドールのお店もあった。皆一様に従者の興味を引くものばかり、正直一日中いたかったが間違いなく色々買ってしまうだろうと危惧してその日は帰ることにした。そんなわけで初めての中野はとても興味深く楽しい所だった。帰りに初めての入るラーメン屋さんの美味しいラーメンを食べ、腹も心もいっぱいになりながら帰りましたとさ。

昭和情緒溢れる中野、そこはいつかの時を閉じ込めた儚い都。かつてあなたが感じた懐かしさを、心を思い出させてくれる…かもしれない場所。サブカルの扉はいつでもあなたを呑み込まんとその口を開けている。興味が湧いたのならぜひ訪れてみてほしい。

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