見出し画像

Kawasaki ZX-14R “ENDLESS NOISE” -排気音は響き続ける-

高架路の路肩へ、単車を止めた
妙に思うだろうが、意味など無い
大型トラックが通り過ぎるたび、
橋脚の継ぎ目が頼りなく軋む
先を急ぐテールランプを眺めながら、
この無駄で貴重な時間をかみしめるように、
ミラーシールドをゆっくりと開けた

単車に跨ることに、意味など必要無いさ
いまはただ、耳をつんざくこいつの雄叫びと、
風切り音の不協和を楽しむだけだ

さあ行こうか、空吹かしは開演の儀式
右足で路面を蹴って前へ出る
ギアを一段落とし、タコメーターを踊らせた
騒音を遮ろうとする遮音壁が、
高まる気持ちと重低音を、逆に増幅する
アクラポビッチの咆哮を響かせろ
突き上げる4気筒の唸りと躍動が、
この身に深く反響する


橋脚の継ぎ目をきっかけに、
魅惑のノイズは、さらに勢いを増していく
いつしか、フルフェイスのエアーダクトから、
クライマックスへの誘いが聞こえてくる
いや、終演はまだだ!
アクセルスロットルに伝わる震えは、
限界へのためらいか、無謀への後悔か

遮音壁が途切れるまで、朝焼けが消え去るまで、
相変わらず穏やかで非情だった、
昨日までの日常を振り切るまで、
この愚行に、この馬鹿げた時間に、
疾駆し続けるこのマシンに、
もう少し、しがみついていたい…


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?