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【仕事メモ】消火士?防火士?

こんばんは

自立に向けてとにかく手を動かしたいとっとです。

わたしの職場では、年度初め、社員に対して”防火型”の仕事の取り組み方をしよう、といった部門方針が伝達されます。

ものづくりでは、工程の最初によくよく考えて検討や調整をしないと、うしろの工程で大幅な手もどりが発生してしまうことがあり、火を吹いたので消火しなきゃ!といった状況になりがちです。

そういった、時間にシビアな突発作業に対しては、往々にして経験豊富&優秀な人材が出向き、まさに消火士として火を消すために全力を投入します。


そのため、そもそもそういった事にならないよう、防火士として日頃から先々のリスクを念頭に業務にとり組もう、というごもっともな言い分なのですが。。


消火士の仕事

大規模なシステムになると、一部標準設計も導入して入念に検討したにもかかわらず、やはりオーダメイドのシステムである以上、あとの方になってからインタフェースの齟齬が発覚し、結果的に部分的な設計見直し(=改修)をすることが後を絶えません。

人工衛星の場合、ロケットの打ち上げタイミングが決まっていますので、そういった手戻り作業が発生すると、打ち上げタイミングを死守するために全力でその改修作業を収束させるべく、従来の計画を無視して人的リソースが優先投入されるのです。

ましてやすでに宇宙で活動中の衛星の場合は、サービス停止のリスクを伴うために最優先での火消し作業となるにもかかわらず、一度宇宙にいった衛星の処置は地上からのコマンドで操作するしかないため、消火活動は困難を極めます。

そういったときに消火士として招集されるベテラン勢や優秀な人材は、場合によっては本業の別プロジェクトも中断して駆り出され、最優先で火を消しにとりかかるのです。

そうなると、玉突きで他のプロジェクトも計画倒れとなります。


出火しゅっかのメカニズム

出火の原因は、つくるシステムの規模にふさわしい組織編制がされていないこと、だと個人的には考えています。

大規模なシステムにも関わらず、大企業特有の足かせがあるのです。

・大企業特有の分業体制で横のつながりが弱く、システム全体を見渡せない
・忙しすぎて目の前のタスクをその場しのぎでクローズする傾向にある


一点目は、どの企業もある程度大きくなるとおなじかとおもいます。

取り扱うシステム(製品)の規模も大きいと、それに合わせて社内の体制も細かく分割されます。

このとき、責任分界もきっちり分割・分担されるため、同じ会社なのにまるで別の会社のようにそれぞれの部門が損益を気にし、自部門さえ赤字にならなければ良い、という考えが浸透しているように感じます。

結果、工場一丸となったモノづくりができない組織になり下がり、それぞれが自分のところの設計だけを最適化した結果、あとで手戻りが発生することになります。


二点目も、大きな企業だとあるあるかと思います。

システムが大きいため、多岐にわたるステークホルダーたちとのインタフェース調整や他部門との設計調整、現場との連携、工程管理、自作業、といったとんでもない数のタスクに日々追われる担当者たちが、上司の言う締め切りを絶対死守するため、ときには付け焼刃でなんとかその場をしのいでしまう、ということが横行せざるを得ない事態に陥るのです。


極端な話、打ち上げ時期を死守したがために、打ちあがった後、いざ衛星がこれから10年がんばって宇宙で仕事をしよう!という時になってうまく動かない、という本末転倒なことになりかねません。


このように、組織の分界が適切でないこと、各作業者のタスクが実務レベルで管理しきれていないこと、があいまって、後の工程で火をふくという現象がおきるのです。


防火士の仕事

これらのことから、出火を防ぐためには、規模が大きくても一つのシステムとして見渡せる体制を整え、現場レベルの作業におとしこんだ上でタスク管理をすることが求められます。

それらしく書きましたが、至極あたりまえのことです。

その当たり前のことが、組織が大きくなるとできなくなるんですね。

そのため、

一つのシステムとして視る視野を持とう!そのためには自分の担当業務以外にも目を向け、早期に火種を見つけ、出火するまえに食い止められる人材に育ってください!

という戦略になってしまうのです。


それはそれで大事なことですが、これだとやはり限界があります。


例えば、ある個人が設計変更点についての波及範囲に見落としがある、といった火種をみつけ、関係しそうな他チームや他部門に忠告するも、責任分界の外だから、と組織の壁に阻まれることが往々にしてあるのです。


そっちの火種はそっちで消しといてね、ということですね。


下手をすると自部門でも、チームが違えば”あなたがそんなことを気にする必要は無い”といった感覚にまで陥っている場合もあります。

これだとなかなか防火するのは難しいですよね。

もはや出火の原因は人災といっても過言ではありません。



火付け役が必要だと気づいた

森林火災の拡大を防止する一つの手段として、防火帯を作るため、まだ火がついていない箇所に自ら火をつける、という手があるのをご存じでしょうか?

これは既に出火している火災の延焼を防止するための手段なので、厳密にはおなじではないのですが、これと似たようなことが、仕事の火種を未然につぶしておくのに有効だと最近感じています。


どういうことかというと、将来火を吹きそうな火種を見つけたら、消そうと努力するのではなく、軽く火をつけてしまうのです。



例えば、これからみかんの皮をむいてみかんを食べたいのですが、ごみ袋が無いので、食べ終わった後に皮の処理に困りそう、という火種に気付いたとします。

ふつうは、ごみ袋を用意してください、と担当部門にアラームをあげるとおもいますが、大企業では”いそがしいからそれどころじゃない”となります。


そこで、最初にちょっとだけ皮をむいて、テーブルの上に放置し、が寄ってくるのを待ちます。

虫が寄ってきたら、

・ゴミ袋を用意してください
・虫を駆除してください


と各担当部門に今起きている小さな問題として作業を振るのです。

将来起きるかもしれない忠告ではなく、今起きている(小さい)問題に対する依頼ですので、処理しないわけにはいきません。

結果的に、最後まで全部皮をむいてからおなじ事態に陥るよりも、小さいロスで済む、というものです。


本来であれば、火種に気付いた時点でゴミ袋を用意しておくだけで、小規模ながらも虫の駆除という作業は発生しないのですが、現実問題として認識しないと(=目の前の作業として認識しないと)動かない大企業には、有効な手段となります。


まとめ

最近本業のほうで思うところがあったので、何かの役に立てばとおもい、思考を整理してシェアさせていただきました。

理想論ではありません。泥臭い実践論です。。

組織のなかですこしでも良いものをつくるためにはどうすればいいか、自分のおもうようには決してならない組織のなかで、泥臭く続けてきた中で気づいた、個人的な意見です。


組織は変えられないけど、自分の作業に関係する一人一人に対して、直接の理解が得られずとも、理想とするゴールに近い状態に持っていくための一つのやり方として、なにか役に立てば幸いです。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!





今働いている会社でおもうことなどをまとめたマガジンです。もしお時間ありましたら、ぜひ覗いてやってください!





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