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2022年 視聴覚派 往復書簡② (宮田涼介→本藤太郎)

本藤さん

本年もどうぞよろしくお願いいたします。
現在絶賛繁忙期で、体調も芳しくなく執筆が遅れてしまいました。

創作したい衝動は衰えていないようなので、合間を縫ってこの往復書簡の執筆に勤しんでいます。

また、牛歩ですがiPhoneを片手に映像も少しずつ撮ってみたり…。

さて、前回の返信で本藤さんを取り囲んでいた「亡霊」についてのお話をお聞かせ頂きました。
本藤さんの家庭を取り巻いていた事情についてお話しいただき、このようなお話を綴るというのは、さぞかし魂を擦り減らす執筆だったことと思います。
こちらからお伺いしたとはいえ、この往復書簡という場で語って頂けたことに感謝申し上げます。

私はフェミニストを名乗ったことは無いのですが、今回のお話を聞くとやはりジェンダーの観点を引き合いに出してしまうところがあります。

伝統的な家父長制が美徳だった時代が確かに日本にもあったはずで、寧ろ「現存する」と言った方が良いでしょう。
今や「男は仕事」「女は家事育児」のような昔ながらの「男性性」「女性性」を声高に掲げられない時世ですから、皆表向きには閉口しています。しかし、令和の時代においても不文律としてこの思想は根深く残っていると思います。
ネットやYouTube等の匿名で書き込み出来る場面においては皆本音を言いうものですが、そこではジェンダーフリーの価値観やフェミニスト、LGBTQの存在を「面倒臭い」と捉えて非難する人もいます。

「こんなんだから今のテレビは面白くなくなっている」
「LGBTは声だけでかい精神異常者」
等様々煽る方が居ます。

自分の中の「美徳」の外に居る者達は「面倒臭い」「恐るべき」存在です。だから、本能的に拒絶反応を引き起こし、口封じ或いは抹消を試みる。
「自分にとって不都合な人だから居ないことにしたい」と願う身体反応です。
本藤さんのお母様 対 お父様の家系の構図にも通じている気がしています。

本藤さんのお母様が古くからの「男性性」に対して何か意見を唱えるというのは労力を要することであったと想像します。しかも、相手が身体的/精神的虐待を辞さない人物なら尚の事のはずです。

今の私に出来たことではありません。
僭越ですが、長きに渡り「男性性」と闘ってきたお母様に敬意を表します。

私も20年近く「男性性」に疑問を抱いて居たのは事実で、心のどこかではそれに対して抵抗していました。
自分をその「男性性」に当てはめて欲しくない、という思いが根底にありましたから、学校の授業などで「男子と女子」で分けられて強制的に「男子」にされる場面には心底辟易させられていました。

「男のくせに◯◯」「男らしくない」「ピアノって女子がやることでしょ?」「女の子みたい」
よく言われていた言葉ですが、とんでもない話、余計なお世話と思っていたものです。
これらを理由に「自分が劣っている」と感じたことは一度もないからです。
「このままがいい」と信じて疑う余地もありませんでした。女の子に間違われた時も心なしか安堵していた自分が居ました。

でも、声高らかに男性性に歯向かう気力は無くて、粛々と自分の望むままに立ち振る舞う、そんな人間だったと思います。

ただ、歳を重ねるごとに、現存する「男性性」「女性性」に衝突することが多くなった気がしていて、やがて性別という観念自体が足枷になってしまい、「男性性」でも「女性性」でも括れない存在となることを願っているのかもしれません。

そういった意味で、自覚はありませんでしたがお母様とは異なる「戦い方」で男性性に抵抗しているのでしょうか。

(また、これまでの人生において私のことを「男性でなくさせた人間」は何人か居ますが、話が逸れてしまうのでここでは割愛します。)

お父様に纏わる一連の出来事を拝読し、もう一度ghost noteの映像を見てみました。
前日に映像を全て差し替えたとのことで、こちらも相当に勇気のいる決断だったことと思います。

体調も戻りつつあるとのことで、本藤さんの認識の中で、私の爆音・轟音が「亡霊」を振り払う儀式の手助けになり得たでしょうか。もしそうならば、音を紡ぐ人間としての冥利に尽きます。

いずれにせよ、逗子アートフィルムや視聴覚派での活動が、本藤さんにとって前を向いて生きる指標になったのであれば、私も2年間一緒に活動してきた甲斐があったというものです。


2022年の新たな趣味

さて、私も今年に入って新たな趣味を始めました。
「お菓子作り」「歌」です。

元々、料理を作るという行為はある種瞑想に近い要素があって好きだったのですが、遂にお菓子作りにも踏み込んでみました。
手始めにクッキーなど焼いてみて、次はパウンドケーキでも焼いてみようかと思っています。

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ただ、砂糖や小麦の摂取を割と気にしている方なので、慣れてきならグルテンフリーのお菓子・パン作りに徐々にシフトしていくつもりです(笑)。
(小麦は腸内環境にはあまり良く無いようで、腸の調子が肌の具合にも直結するので)

「歌」に関しては前々からやってみたいと思っていて、昨年の往復書簡で歌の話をしたこともあり、遂にボイトレに通い始めました。
まだ駆け出しですが発声の基礎からレクチャーしてもらい、最近ビブラートの真似事みたいなことが出来るようになりました。

暫くは基礎から習得することになると思いますが、目標は「両声類」になることです。

両声類とは「女声で歌う男性」または「男声で歌う女声」のことを指します。

完全に習得できるのはいつになるやら、といった感じですがちょっとずつでも邁進したいものです。


焚き火も良いですね。
自分の周囲で焚き火が出来る環境が無いのですが、たまに焚き火を取り囲むと何故か自分が浄化されている気がします。

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(逗子アートフェスティバル2020の打ち上げにて)

あの少し焦げた匂いや、木のパチパチする音など、何故あんなに癒やされるのでしょうね。
暑くなるとシーズンオフになってしまうでしょうから、その前に一度焚き火したいです。

今年何をやるか、そろそろ検討してみましょうか…。

映像は個人的に撮りつつありますが、視聴覚派として何をやっていけるか、諸々相談出来ればと思っています。
(ここのところZAF関連の打ち合わせもリモートで、単純に人肌恋しくなっているというのもありますが)

それでは、今回もよろしくお願いいたします。

宮田涼介

本藤太郎/Taro Motofuji a.k.a Yes.I feel sad.

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逗子生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒。カメラマンとして撮影現場を奔走する傍ら2016年より美術活動を開始。写真作品を中心に舞台やインスタレーション、楽曲や映像等を制作し国内外のアートフェアや地域アート等で発表している。 ZAFには2013年の「逗子メディアアートフェスティバル」の頃から雑用として関わっており、2017年には作家として参加。基本寝不足。
https://www.yesifeelsad.com/
https://www.instagram.com/taromotofuji/?hl=ja


宮田涼介 / Ryosuke Miyata

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神奈川県在住の音楽家。ピアノ楽曲や電子音響作品を中心に、国内外でアルバムを発売。
2021年5月に新アルバム「slow waves」を配信リリース。
また、カフェやWebコンテンツでのBGM制作、シンガーへの楽曲提供・編曲を行う。
http://ryosuke-miyata.com/
https://www.facebook.com/ryosuke.miyata.music/

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