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【web小説感想】『薬まみれの人魚姫』著:砂藪

皆さまごきげんよう。スガでございます。

夏にやった読書感想文企画が思いのほか楽しかったので、冬にもやることにしました。
前回は創作系のディスコードサーバーで募集したのですが、今回はTwitterの『#RTした人の小説を読みにいく』タグで募集。
あっという間に10作埋まったのでTwitterすげ~と改めて思いました笑

さて、記念すべき第1弾は砂藪さんの『薬まみれの人魚姫』です。

前職の研究所で起きたとある事件から、故郷に戻って子どもたちに勉学を教えている男の秘密を描いたお話。
とても楽しく読ませていただきました。

<あらすじ>

元研究員だったオスカーは、同じ研究員だった妻のサオリと共に故郷の村に暮らしていた。
そんなオスカーの妻のサオリはとあるウイルスの研究の際の事故でいくつもの薬品を溶かした水に浸かっていないと腐り果ててしまう身体になってしまった。
オスカーはそんな彼女のことを愛し、サオリも彼のことを愛していた。
そんな中、オスカーが研究途中だったウイルスを持って逃げたと考えた同じ研究所の元後輩のエミリオが二人が住む家に訪ねてくる。
オスカーのことをナイフで脅し、サオリの元まで案内させたが、自分と一緒に行こうと言うエミリオの誘いを断り、サオリはエミリオを薬品まみれの水の中に引きずり込み、夫との今の穏やかな生活を守るのだった。

『薬まみれの人魚姫』あらすじより

まずはタイトルがすごくツボです…!
『薬まみれの人魚姫』…性癖がくすぐられますね。
物語の内容も幻想的かつ、主要人物であるオスカーとサオリの互いへの愛情が感じられて、とても素敵なお話だと思いました。

個人的に好きだったのは、

彼は口づけをしない。彼女も口づけをしようとしない。
どんな風に感染するかは開発をしていた彼らがよく知っている。

『薬まみれの人魚姫』より

という表現です。
愛し合っているけれど、サオリの感染しているウイルス(経口感染?)のせいで愛情を体現することができない。
だからこそ、二人はお互いに愛に満ちた言葉をかけるのだろうなと感じました。

サオリの「ダサいプロポーズね。おことわりよ」というセリフにも痺れました!
かっこよすぎる…!
優しいだけじゃない女。
愛した男以外は眼中にないのよ、という強かなところがとても好きです。

1点だけ、サオリの浸かっている薬液の説明がもう少しほしかったなと思いました。

エミリオの殺害方法にも関わるので、感染者以外が触れると危険とか、飲み込むと毒になるとか、そういった説明がほしかったです。
結局エミリオは窒息死? それとも、薬液による毒殺? と考えてしまいました。
窒息死だと20秒という時間は短いし、そこまでサオリに力があるようにも思えないので、多分薬液によるものだとは想像はつきます。
ただ、薬液に触れているサオリにオスカーは触れているので、触れているだけでは問題はない…? とめちゃくちゃ勝手に考察していました笑
薬液の効能や、危険性に関する説明があるとうれしかったです。

優しくありながらも、どこか不穏な空気の漂う幻想的なお話。
文体は丁寧で読みやすく書かれていて、読んでいてとても心地よかったです。
素敵な小説をありがとうございました。


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