◆游◆ 組織名鑑【罪罰】 ◆呪◆ 正式名称は罪罰影業組合。京都二条城を本拠地とする、呪術的な秘密結社。 罪罰大君主の下に、騎士団めいた厳格な位階構造の術師組織を持つ。 日本経済の支配権をめぐり、総会企業組合等と抗争を続ける。

呪術総監部のうち、御三家と派閥争いを行う平安時代以前からの術師の旧家が、母体となっている。

 その中には、家格や術式の練度が御三家に対抗しうる家系も存在する。(鳳凰堂家、四十九院家等) 京都高にも息のかかった、大師や達人位階の術師を派遣している。

 非術師への差別感情も御三家に匹敵するが、術師であっても、新興の術式や歴史の浅い者を見下している。その理念は、彼らの掲げる「士農工商」や「新世界秩序」に如実に顕れている。

 この呪術界の因習や旧態を詰め込んだ組織は、一応準国家組織たる高専とは異なり、総監部の一部が集った私兵である。

 しかしながら、一族内で訓練や編成を行う御三家とも違う特徴がある、幹部はともかく構成員はスカウトや志願者が多く、一般家庭出身や半ば傭兵やヒットマンめいた、アンダーグラウンドな人員も多く在籍する。

 それら玉石混交な人員をまとめ上げ、呪詛師集団のような烏合の衆と隔絶する点がある。以下の3点である

①厳格かつ複雑な位階制度

 罪罰影業組合(以下、罪罰)が、準軍事組織であるにもかかわらず、裏社会の呪詛師と区別される理由がこの「位階制度」である。要は、一般的な呪術師の任務査定や階級とほぼ同義だ。しかし、いくつか特異な点も存在する。

 呪術界は、上に行くほど年功序列や格式、歴史などを尊ぶ傾向にある。若い術師を縛り付け、時には重圧にさえなる因習である。しかし、呪詛師やフリーの術師になったとて、組織だった行動をするためには無軌道では難しい。この因習を保ちつつ、そうした実利を延ばしたものが、「位階」だと言える。

 呪術師は、近代以降、公家や武士の解体と並行し、上流階級としての表の権益はむしろ制限を受けた。更に、西洋文化や近代思想の本格的な輸入の過程で、呪術は居場所が無くなってきてもいた。御三家を含む旧家や総監部は、戦争の拡大や、国際規模化した呪霊や呪害に対抗したい政府に取り入り、確かに国家への影響力は拡大した。それでも、時代の煽りから、前者は地主や富豪に留まり、後者は半ば政治や圧力団体にまで成り下がった。

 しかし、位階制度であれば、小さな社会を形成し上に行けば、特権階級のような振る舞いすらできる。総監部や御三家と派閥争いする一族には、願ったり叶ったりである。

 当然、下の者や呪術界からドロップアウトした者達にも、時に査定の誤りや権力闘争があり、昇進しても、大した権益を得ることができない現行制度より、立身出世や再起のチャンスがあると感じる者がいるようだ。

 また、術師として仕事をしても身入りがなく危険だが、秩序のない呪詛師では長く生きられないと考える野良術師も、位階に可能性を感じて罪罰の門戸を叩くのだ。

 謎の 罪罰大君主が掲げる、「新世界秩序」はこういった層には、平安時代以前の「貴族」を思い起こさせ、ある種の希望なのだ。初めは半信半疑な者でも、すぐに忠誠を誓い、位階制度のもとに秩序を形成する。それは正に、前近代の呪術師の在り方のエピゴーネンである。また、次の「擬似的貴族文化」にも繋がる。

② 擬似的貴族文化

 罪罰は御三家を始め、古風なしきたり、形式の色濃く残る呪術界でも輪をかけて古めかしい組織である。起源はわかっていないが、少なくとも京都から権力が徐々に、江戸へ推移し始めた江戸時代初期に母体が出来たとされている。

 内部では、前述の位階制度と並行して、「擬似的貴族文化」や平安復古とでも呼べる独自な雰囲気が広がる。上意下達、年功序列に加え、有力な旧家が組織内での権力と、京都での地盤を活用して下の者を家来のように扱っている。

 通常であれば、反発は必至、組織の求心力も削がれる。だが、実際はそうではない。初期から、罪罰に属し、大師や達人として実力を発揮した者は呪術界の文化に慣れており、違和感を覚えない。その上、小さな社会での秩序に安心感を覚え、現行の構造に反発した者からはむしろ好意的でさえある。

 また、呪術を学ぶことは、旧来のプロトコル(信仰、経験則、儀式のない混ぜ)を研究、習熟することであり、この慣習は術師を縛る一方、助けるものであると認識されている。つまり、相伝や歴史ある術式を持つ術師は自然と、復古的な気風やプロトコルに親和性があり、実用的な術式理解にも都合がいいのだ。

 反面、新興の術式や異能とでも言える実力者には意味がなく、またしきたりに疎ければ排斥されるので罪罰にはほぼいない。

 しかし、一部には一般家庭出身者もスカウトされている。実際、家格から見下されはするも、一方でプロトコルを覚え、位階で鍛え上げられることで、イニシエーションされていく。これが、最後の特異性、「徒弟(ギルド)制度」である。

③徒弟制度

 前述の二つは、長らく日本呪術界の文化や構造に根付いたもので、その発展性とも言える。対して、最後の特徴は、ある種舶来物の性質を帯びている。

 高専や御三家のように、呪術やそれに付随する現象・原理を教育するシステムが、「徒弟制度」である。違いは、高専は公的教育機関や職業訓練であり、御三家は親族継承の武道のそれであるのに対して、罪罰はギルド(職人組合)や騎士団的な師弟関係で成り立っている。

 志願ないしスカウトにより入団した者は、主人たる大君主に叙任される。そして、実習生の位階に就き、師匠となる大師の下で経験を積む。一人前となり、単独で呪霊や呪詛師討伐に参加できる者と認められれば、達人となる。

 高専の様に、呪術について学習しつつ少しずつ任務を振られるものである。しかし、担任と生徒の形で一対多の形式になるわけでなく、ある程度マンツーマンの形式を取る。そのため、師弟関係を通して、ある程度年功序列や士農工商の概念が浸透しやすい。

 また、御三家の様に、あくまで実力主義で、使い潰したり、飼い殺したり、上位者には逆らいにくい構造でもある。

 一方で、それぞれ適性を伸ばし、場合によっては呪力量が少なくとも貴族文化やプロトコルに精通した者、生得術式に恵まれずとも嘱託式の儀式に特化した者、一般家庭の下賎な生まれであっても補助や特異性に秀でた者にはある程度の待遇を用意している。

 そのため、御三家の非相伝、術式のない者、術式や呪力に恵まれても後ろ盾のない者も高専より相性が良く、御三家より適切な指導が受けられる言われる。場合によっては、知識に秀でるも術式に恵まれない術師も位階で昇進することが可能である。

 これら要素が絡み合い、京都府を中心とする地域に大規模な勢力を築いているのが罪罰である。目的は、「新世界秩序」と「士農工商」、言ってしまえば、術師の復権と貴族化である。しかし、少なくとも呪霊討伐に貢献し、呪詛師になりかける一部の受け皿になっているため、反対派でも手が出ない状況である。

 真の目的は、天元の確保とも、夏油傑のような非術師の淘汰とも、単純な表社会への権益拡大とも言われる。罪罰大君主の正体も依然として不明である。助監督や教師、政府の任務へも術師を多く出向させている。それら、達人や大師も素性は知られているのだが、やはり目的は明かされていない。

 最終目標は一体…



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