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社内政治生存マニュアル 第5章 やばいやつをパージする~未経験上司がやってきた

🌟前回までのあらすじ🌟
ずんずんは段々とプレゼンスの示し方がわかってきた。
その結果、仕事で実績を出し始め、社内でのポジションも確立されようとしていた。

「これが自分の居場所を作るってことなの…?」

そう思いはじめたずんずんの元に訪れたのは、非情な組織編制であった…。

ーーーーーー

‘‘組織編制が行われるらしい‘‘

そんな噂が流れはじめた。

こういった噂は不思議なことに、

「噂が届く奴」と
「噂が届かない奴」

に分かれる。

「噂の届かない奴」になってしまうと、本人からすればある日突然、組織編制が行われることになる。

この時点で社内政治は負けていると言っても過言ではない。

過去の私は「噂の届かない奴」であった。

知らない間に組織編制が行われ、異動が起き、そしてローテーションという名のもと入社時と全く違う仕事が振られていく…そんな「ついていない」役どころだった。

しかし、今回の私は違った。
「噂が届く奴」サイドの人間になっていたのだ。

韓国人の同僚が、

「ねぇ知ってる?」

と来月末に行われるであろう組織編制の噂について教えてくれた。
持つべきものは、噂好きの同僚である。

組織編制は今までのレポートラインが変わる大がかりなもののようだった。
噂によると、私の上司が出世して、上司のポジションに新しい人間が来るという話だった。

そのポジションは、第三章で出てきた「先輩」…ではもちろんなかった。

先輩はついていく人間を誤ったため、今回も出世はない。
詳しくはこの社内政治生存マニュアルの第三章を読むか、島耕作を読んでほしい。

代わりに来る新しい人間は、衝撃の人事であった。
その人間は他部署からの

「未経験者」

だったのだ…。

この他部署から来た未経験の人間のことを、以下「未経験さん」と呼ぼうと思う。まんまやないか。

未経験さんが我がチームを混乱に陥れ、我々はパージに動き出すことになるのだったが…。
今回はそこに行きつくまでの物語をしたいと思う。

私は未経験さんについて、顔だけは知っていた。
長身でさわやか、言い方が正しいか分からないが小綺麗な中年男性である。彼は七年程この会社におり、他部署に所属している。ちなみに、経理や税務の経験はない。

我々のチームはごりっごりの税務部である。

日本だけではなく、世界中の税務を見ているごりっごりの税務部である。
世界中から猛者が集まっている部署なのだ。

未経験者ができるような仕事ではなく、そして、知識も経験もない未経験者がその猛者どもをマネジメントできるかは甚だ疑問であった。

なぜそんな未経験さんが上司になるかというと…、

彼はCFOのお気に入りなのだという…。

それを聞いた我々は絶望した。

皆が皆、大学時代から専攻を会計にし、日々研鑽を磨いてきた者たちである。
その努力が「CFOのお気に入りガイ」によって、台無しにされようとしているのを感じた。

そして、誰もが未経験さんが起こすであろうがこれからの災厄を予見した。

しかし、出世コースを外れた先輩だけは、その話を聞いても飄々としていた。

というか、先輩はすでに未経験さんにレポートすべき仕事を違うスタッフに振っていた。
先輩が直接未経験さんに関わる仕事はほとんど無かった。

きっと、私よりも早くこの組織編制の噂を聞きつけて、自分が火の粉をかからないように事前に行動していたのだろう。

行動はえええええええええええ!!!
仕事できるぅぅぅぅぅぅ!!!!

私は先輩の仕事の早さにのけぞりかえった。

その仕事の早さを、もっと社内政治に使って、あんたが出世してくれれば、
今頃あたいたちはこんな目に遭わずに済んだのに…。
出世してよう…。

先輩に対してそう言いたくもなる。

これを読んでいる方で「出世って大変そうだな~🌟出世とかしなくてもいいか」と思っている方がいたら、ぜひ出世して欲しい。
あなたが出世することで守られる下々がいるのだ。


さて、私は先輩から好かれたかったため、先輩からたんまりと仕事を引き受けていた。そして、その中の仕事は未経験さんにレポートするものがたくさんあった。

火の粉がかかりまくりであり、状況は絶望的であった。

しかし、私は以前に「未経験上司」の経験があった。
なので、これから起こることがある程度、予想することができた。

未経験上司にあたったのは、私がぴっちぴちの丸の内OLであった頃である。

外銀のバックオフィスに勤めており、その頃の私はえげつないお局様たちにいびり倒されていた。思えば、この頃のお局様たちも今では60代できっと、退職して第二の人生を歩んでいるか、下手したら死んでるかどっちなのかであろう…。

さて、その時も上司が出世して、新しい人間が上司になった。
その新しい上司は小綺麗で英語が達者、そして仕事は未経験であった。
そして、その上司は最悪なことに「学ぶ姿勢」が全くなかった。
何度説明しても覚えようともしない。会計知識は全くない。
いつも定時に帰る…。
彼はお局様たちの受けは最悪で、しかし、英語が達者なので上の受けはいい…。

彼が辞める前に私は辞めてしまったが、風の噂では、彼はリストラも避け、10年ほど会社に居続けたという。仕事を全く覚えず、厄介者扱いされながらも10年居続けるというのはどんな気持ちなのだろうか…。ちょっと私には真似できそうにない。

この時の経験から私には思うことがあった。
一つは「未経験」で役職に就こうとする人間にはろくな人間がいないということ。

そして、もう一つは「未経験」で役職に就こうとする人間は「口が達者」ということだ。

未経験で役職に就くというのは、例えるなら、ずっと経理畑でやってきた私が営業部長になろうとしているようなものだ。

普通なるだろうか?
ぼこぼこにされる未来が見えてしまう時点で、その役職に就こうとは思わないはずだ。

普通なら選ばない選択をしてしまうという点で何かがおかしい。

そして、未経験でも上に気に入られて出世するところをみると相当「口がうまい」のだろう。

過去の経験から、私は今度来る「未経験さん」にもある程度の予想をしていた。

未経験さんは、間違いなく口達者でろくでもない人間であろう。

だが、そこで二つの可能性が考えられる。

地頭が良いろくでなしか
地頭が悪いろくでなしか

このどちらかだ!!!

地頭が良いろくでなしだった場合、まだ未来がある。
私がサポートすれば、大惨事は避けられるのだ。
そして、新しい上司も私のことを重宝するであろう。

しかし、地頭の悪いろくでなしだった場合は…?

私はそこで考えた。

ははは…まさか…弊社は超一流企業で超一流人材しかいないんだぜ…。
まさか、地頭が悪い人間なんているわけないじゃないか…。

私はこの可能性については考えないことにした。
いや、考えたくなかったのだ…。

そして、一か月後、組織編制はしめやかに行われ(?)、私たちの上司様は出世し、噂通り未経験さんが上司となった。

未経験さんは「地頭の良いろくでなし」か「地頭の悪いろくでなし」のどちらであったか?

結論から言おう。

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