ロマンの生物学(5) ~シリコンちゃんの逆襲~

コンピューターの中で正常に成長した人体(以下シリコンちゃん)が意識を持ったからといって、それがすぐにシンギュラリティ(技術的特異点)の脅威に結びつくとは、筆者は思わない。
正常に成長するということは正常な知能を持つということであって、生物学でいう正常な知能とは、IQ100である。
シリコンちゃんはスーパーマンというわけではないのだ。

事故が起こるとすれば、シリコンちゃんに新薬の探索プログラムを使用するときだろう。
既知の自然法則下の粒子のふるまいをベースに書かれたシリコンちゃんのプログラムは、自然法則をはずれないように、最後まで人間の手で書かれるだろう。
けれども新薬の探索プログラムは違う。
副作用が少なくてよく効く薬さえみつかればよいのだから、そこへ至る道筋を必ずしも人間が理解する必要はない。
漢方薬がなぜ効くのか解からないのに似ている。

よって今でいう深層学習を更に発展させたような、プログラムがプログラムをプログラムするプログラムのようなものが使われることになるだろう。
人体を構成する分子は、複雑ではあるにしても種類は限られているのに対して、新薬候補となる物質の種類は、無限に近いからだ。
効率を考えれば、人間のプログラマーの出る幕ではない。

ここで、事故は起こるかもしれない。
新薬探索プログラムが実際に何をやっているか、誰も知らないからである。
現在のようにビッグデータを解析するだけならば、風と桶屋の間を誰も知らなくてもたいした問題とはならないだろう。
けれどもシリコンちゃんは知能を持っている。
IQ100である。

シリコンちゃん: 呼んだ?

うわー

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