読書メモ『博士号の取り方[第6版]学生と指導教員のための実践ハンドブック』

概要
誰も教えてくれなかったガイドの決定版。技術マニュアルを超えて、博士号取得をその考え方から解説、論文の執筆計画から教師・学生のコミュニケーションにいたるまで、だれもが経験するプロセスへの対応をわかりやすく論じ、学生・教員から絶大な支持を集める世界的ベストセラー。

指導教員を選ぶ(p.25)
①その学者は最近論文を執筆しているか
②研究室は効率よく運営されているか
③研究助成は受けているか
④国内外の学会に呼ばれているか

研究する技法(p.84)
最初の段階で重要なのは、研究分野の「お手本」をみて、どんなスキルやテクニックを用いているか、できるだけ体系的にまとめること

先行研究のレビュー(p.92)
・目的は研究分野の背景を研究者自身がプロとしてよく知っていることを示すこと
・「プロとして」とは、その研究分野について他の実践者や研究者などのプロたちが聞きたくなるほどの内容を述べられていることを指す
・レビューとは、独特の視点から先行文献をまとめ、他人の貢献を評価・批判し、研究活動のトレンドを見つけ、理論的・実証的な面における弱点を指摘すること

指導教員とのコミュニケーションの壁を低くする方法(p.108)
人間関係の樹立、締切の設定、博士号取得の意義(目的)、適切な指導の時間の設定

指導教員とのミーティングの議題(p.117-118)
・前回合意した内容のレビューのまとめ
・進捗状況に関するディスカッション
・前もって渡していた文章などの内容に関する指導教員からのコメント
・そのフィードバックに対する自分の回答
・指導教員から自分の行動を見て感じたことに関してのコメント
・ミーティングでカバーしたかった内容を全て完結しているかどうかの確認
・次のミーティングの日程の設定
・次のミーティングのスタート地点として使用する要点をまとめる
お互いが相手に期待することを話し合うのが最も重要(p.125)

指導教員を育てる必要性(p.122-123)
あなたが伝えなければ知り得なかった情報を指導教員に与えることで、彼らを「教育」するのだ。(中略)指導教員との関係のイニシアチブが次第に指導教員からあなたへと移る(中略)「報告先」だった指導教員は、新しいアイデアや考えを話し合う相手に変わる。(中略)実際、指導教員を持つ重要な目的はこの関係の変化にある

何を書くか(p.135)
ともかく、常に何かを書き続けるというのが私たちからのアドバイスである。論文の最も取り組みやすいところから書いたら良い。それは当たり前すぎて、あえていうほどのことでもないと思われるかもしれないが、実際は驚くほど多くの学生が、論文は出版される形態そのままに書くべきだと信じている。

リライト課程としてのライティング(p.140-141)
もし、自分が書いたものをあたかも他人が書いたもののように読むことができれば、自身の不正確で雑な文章を簡単に批判できる。自身と自分の書いたものの間に「距離」を置く方法は、書いたものを2、3日傍に置いた後、初めて手に取るような気持ちで読んでみることだ。

ライティング工程サイクル(p.144)
一週間に2時間から5時間を執筆に費やす計画を立てること。毎週初めにその時間をいつにするのかを決めて、トロロープのようにその時間を守り、邪魔が入らないようにすること

学術誌論文を書く(p.150-153)
その雑誌に掲載された最近の論文の中で特に優れたものを見つける(中略)次にそれがなぜ優れていると感じるのか、検証するべきである。論点が合理的に構成されているからなのか、集めたデータの信頼性と妥当性なのか、それとも分析の形式と厳密さにあるのか、あるいは結果のオリジナリティーや結論の明確さなのかなどを見極めるのだ

博士課程学生として成功するための費やす時間(p.200)
博士課程学生であることと、フルタイムで雇用されている状態とはほぼ同じであると言える。つまり、一週間に40時間を目安にすれば良いだろう。

口頭審査のための準備(p.251)
・よくある質問についての回答を準備すること
・論文の体系的なサマリーを準備すること
・口頭審査で話題として挙がってほしい内容をリスト化しておくこと
・模擬口頭審査をしていくこと
準備の中でも特に重要なのが、口頭審査を受ける前から、できるだけ多くの批判の対象を見つけ、それらについて検討しておくこと(p.255)

E.M. Phillips and D.S.Pugh(2015)How to Get a PhD: A Handbook for Students and their Supervisors. Open University Press, Maidenhead(角谷快彦訳(2018)博士号のとり方[第6版] 学生と指導教員のための実践ハンドブック. 名古屋大学出版会, 名古屋)


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