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亡霊のギミック

前回キャンパスの亡霊と言っていた彼のお話の続きになります。

素敵なMAPを描いて去っていった日から、
2年ぐらい過ぎた頃でしょうか。

またショートメールが届きました。

『君の街を通り過ぎたんだけど』

ん??
通り過ぎちゃったの??


『君に渡したいものがあったから』

『駅前のコンビニに忘れ物として置いてきた』

!?

『そしてついさっきそのコンビニに電話で、君が代わりに受け取りに行くと伝えた』

!!

『なので受け取り宜しく頼むねー』

サラリとしたショートメールは終わりました。


私は仕事をしながら思い出したのです。

『これはギミックだ!!』と。

彼と私は大学在学中に
『ギミック』という言葉が好きでたびたび乱用していたのでした。

『君のそのギミック、気に食わないね』

『時間のギミックにやられて遅刻したさぁ』

『今日のそのギミックスタイル、悪くないさぁ』

『バンドってさ…結局ギミックじゃないかって思うさぁ』

そんなくだらない愛しい会話を思い出したのでした。

仕事を終え、
指定されたコンビニに向かい、
アルバイトさんに事情を説明しました。

するとアルバイトさんは
『あ!忘れ物の方ですね!』
と言ってすぐに持ってきてくれました。

持ち手がギューっと固結びされた
くっちゃくちゃのコンビニ袋。
折り畳み傘が入ってそうな状態。

ちなみにどのぐらいくっちゃくちゃかというと、
コンビニ袋を縦に捻りあげて結んだ状態で、
半年ほど保管してたものを広げてみた感じです。

そこにレシートの裏紙で丁寧に
『〇〇様受け取り予定』と記入されて貼られていました。

内心、
『こんなゴミみたいなモノ!?』
でしたが、
『ありがとうございます』
とお礼を言い、
ミルクサンドフランスパンとコーヒーを買って退店しました。

帰り道、少し鼻の穴を膨らませて
『これはギミックだ』
と興奮して楽しんでいる自分がいました。

自宅について、
いざ開けてみるとそこには

『伊勢國参り』

という小さな可愛いラベルの日本酒が入っていました。
その年は出雲大社と伊勢神宮のダブル遷宮なる年で、その記念酒でした。
どうやら国内をブラブラしているんだな??楽しそう〜と微笑ましくなりました。

そしてミニクロッキー帳を破いた手紙も添えられていました。

その手紙を写真に撮ってこちらにアップしようと思ったのですが、
彼はフリクションで描いていたことがつい先程判明しました。
経年により、まっさらになっていました。

こんなギミックいらないよ…!!

そして彼はまだ亡霊です。
私の街を通り過ぎたので、
いまだ成仏していないようです。

そんなお話でした。

元気にしているかなぁ。

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