【F評価】令和2年 予備試験 再現答案 民法

第1 設問1
1 Cは、Aに対して、B C間で結んだ消費貸借契約(587条)の効果が帰属することを
理由に、貸金の返還請求ができるか。
2 まず、右返還請求ができると言えるためには、B C間で結んだ本件消費貸借契約の効果がAに帰属している必要がある。
 (1)まず、有権代理(99条1項)の成立について検討する。
(2)ここで、AはBの代理人であることを示しているから、「本人」たるBの「ために」
 意思表示していると言える。もっとも、BはAに何らの代理権を付与していないのだ
 から、BはAの「代理人」ではない。
(3)よって、有権代理は成立せず、無権代理(113条1項)として効果帰属しないた
 め、CはAに対して請求できないのが原則である。
3 もっとも、表見代理(110条)が成立しないか。
 (1)ここで、BはAに基本代理権を与えていない。よって、成立しないのが原則である。
(2)もっとも、以前から、BはAの世話をしており、また、本件消費貸借契約は、Aの
 後見開始の審判の前日の令和2年4月20日に行われており、後見人には財産管理権
 (859条参照)があることから、実質的に基本代理権があったとして、同条を類推適
 用できないか。
(3)ここで、110条の趣旨は、本人に帰責性ある理由で作出された代理権があるとい
う虚偽の外観を信頼して取引関係に入った第三者を保護するという権利外観法理にある。そこで、①本人が実質的に従前より無権代理人に財産管理等の権利を与えていたとの事情があり(外観)②特にその点について相手方に説明等をしていたこともなく(帰責性)、③外観を信頼して相手方が取引関係に至った場合には、同条が類推適用されると解する。
(4)本件で、本件消費貸借契約がなされるよりも前の4月10日以前より、Bは時折Aの自宅を訪問してAの様子を見ていて、何かしらの保護をしていたという意味での外観は存在している。また、4月10日にAが倒れて以降それ以降Aは意識不明で何らの行為ができない以上、①外観は存在している。
 次に、Cは、Aが倒れるのを目撃して、それ以降についての100万円の貸金をBより求められているから、Aも特に説明等していない(②充足)。
 そして、その外観を信頼して本件消費貸借契約を締結している(③充足)。
(5)よって、同条が類推適用され、CはAに対して貸金返還請求することができる。
第2 設問2
1 債権者代位権(423条1項)
 まず、Dは、AがEに対して有する詐欺取消権(96条1項)代位行使(423条1項)した上で、本件登記の抹消登記請求をすることが考えられる。
(1)まず、Dは、Aに対して500万円の貸金債権(587条)を有していて「債権者
である。
(2)そして、本件売買契約によって、Aの唯一のめぼしい財産である本件不動産の所有権がEに移転されれば、300万円の債権以外のAが責任財産を失い、その債権の回収を図ることが困難だから、「自己の債権を保全するため必要があるとき」と言える。
(3)そして、EはAに対して、不当に安く買い受けようという意思のもと、本件不動産を300万円の価値しかない旨述べて、Aはそれを信じた上で本件売買契約を結んでいるから、Eの「詐欺」によるAの「意思表示」であるとして、「債務者」Aに詐欺取消権(96条1項)という「権利」が属している。また、一身専属権(同項但書)には当たらない。
(4)そして、EのAに対する債権は令和5年4月末日で履行期を迎えているため、「債務の期限が到来」(同2項)している。
(5)また、取消権は形成権であるも、「強制執行により実現することのできないもの」(同3項)ではない。
(6)よって、債権者代位権を行使して、本件売買契約を取り消すことができる以上、Dの請求は認められる。
2 詐害行為取消権(424条)
 次に、AのEに対する売買契約を詐害行為取消(424条1項)請求することが考えられる。
(1)まず、上記同様Dは「債権者」(同1項)にあたる。
(2)次に、「害する」か否かは、債務者の詐害意思及び詐害行為の相関関係により決する。
 本件で、確かに、Aは本件土地が3000万円の価値があることを知らずにこれを売却
 している。もっとも、本件売買契約を締結すれば、Aには他の財産がないことから、Dに
 対する債務の履行が困難になることは認識していて、一定の詐害意思はある。そして、右
 行為は責任財産を減少させる行為である。よって「害する」といえる。
(3)そして、Aはこれを「知って」したと言える。
(4)また、「受益者」たるEはそもそも不当に利益を得ようとしていたので、「害するこ
とを知らなかった」(同項但書)とは言えない。
(5)また、本件売買契約は「財産権を目的としない」(同2項)とは言えない。
(6)そして、EのAに対する債権は、本件売買契約より「前の原因で生じた債権」(同3項)といえる。
(7)また、「強制執行により実現することのできないもの」(同4項)ではない。
(8)よって右請求は認められる。
以上


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