早稲田ロー 2021(令和3)年度 再現答案 民事訴訟法【半免】

第1 問1
1 (2)の訴えが適法であると言えるためには、訴えの利益が認められる必要がある。
訴えの利益とは、本案判決がなされる必要性のことを言う。
 本件の、(2)の訴えは、確認の訴えである。確認の訴えは、判決の効力に執行力がなく、またその対象が無限定に拡大するおそれがあることから、訴えの利益が認められる範囲を限定的に解するべきである。そこで、確認の利益は、①方法選択の適切性(他に適切な訴訟形態が存するか)、②対象選択の適切性(訴訟物として適切か、自己の現在の権利法律関係の積極的確認か)、③即時確定の利益(現に当該事項について、権利利益への危害が現実化していて、救済の必要性があるか)をもって決するべきである。
2 本件で、売買契約は、過去の一点での事実に過ぎず、現在の権利・法律関係とは言えない。また、その不存在は、消極的な事項であり、積極的確認ではない。よって、②対象選択の適切性を満たさない。また、契約関係により、生じる個々の債務、本件では、所有権移転登記債務の不存在の確認をすれば足りるから、①方法選択の適切性も認められない。
さらに、特に権利侵害が切迫しているということもなく③も認められない。
3 よって、確認の利益が認められない以上、訴えは不適法である。
第2 問2
1 後訴について、前訴の既判力(114条1項)が及んでいる場合、後訴の受訴裁判所の判決に影響を及ぼすため、既判力の有無について検討する。
2 そもそも、既判力とは、確定判決の後訴に対する通有性のことをいい、その根拠は手続保障に基づく当事者の自己責任と、紛争の一回的解決にある。
(1) そして、既判力が及ぶ範囲は、客観的範囲については、「主文に包含されるもの」(114条1項)、すなわち訴訟物について及ぶ。訴訟物に既判力を及ぼせば趣旨を全うするに十分であるし、判断の拘束する範囲をできるだけ限定することで、迅速な裁判ができ、また、手続保障にもなるためである。
 本件で、前訴の訴訟物は、甲土地の所有権である。よって、前訴の口頭弁論終結時における、甲土地所有権がXに存することにつき、既判力が生じる。
 そして、主観的範囲は、「当事者」(115条1項)について及ぶ。本件で、前訴の当事者はXとYであり、XとYに既判力が及ぶ。
(2)そして、既判力は、前訴訴訟物と後訴訴訟物が①同一②先決③矛盾関係にある場合に作用する。
 本件で、前訴訴訟物は甲土地の所有権であり、後訴訴訟物は所有権に基づく妨害排除請求としての所有権移転登記請求権であり、①同一ではない。もっとも、後訴訴訟物は、≒の所有権がYに存することを前提とするものだから、②先決関係にある。
 よって、既判力が作用する。
(3)そして、その効果として、裁判所は、前訴判断に矛盾抵触する判断することを禁じられ(積極的効力)、反射的に、当事者の主張する前訴判断に相反する主張を排斥するという消極的効力もある。
 そうすると、後訴において、甲土地の所有権がXに存することを前提として判決することになる。
 よって、後訴を棄却するべきである。
以上

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