店長論 第二章⑧

最終話。

僕らが失敗したこと。
お客さまを人としてではなく、数で見てしまったこと。

僕らが失敗したこと。
コーヒーの技術を磨き切らなかったこと。

僕らが失敗したこと。
素人とプロの差を自覚していなかったこと。


華々しくデビューしたお店は、
最初の2週間くらいは行列ができたが、
ぱったりと止まった。

失敗と書いたが、実は自分たちなりにはやりきっていた。

研修で学んだとおり
全力で挨拶したし、失敗しても全力で巻き返したし、接客の本質にもトレーニング時からこだわって磨いていった。

たくさんの人に「美味しい」と笑顔で帰ってもらっていた。

このお店の特徴は、
・本格的なスペシャルティコーヒーが飲める改札前のお店
・特にカフェラテやハチミツラテが美味しいお店
・地元の名産品を集めて紹介するお店
・地元の幼稚園児の絵をクリエイターの力でアート作品にしたカップで飲めるお店
・テイクアウトのみのお店

コンセプトもデザインも悪くない。
立地だってめちゃくちゃ人が通る。

お客さんだって喜んでくれている。


結構努力してみた。

珈琲のトレーニングはとにかくやった。

手が震えだすほどカフェインとった。

お客さんきたら100%どのスタッフも楽しくお話掛けした。

常連のお客さんともめちゃくちゃ仲良くなった。

新メニューもコラボ先の珈琲屋さんに通って、一緒に開発した。

でもなぜかいつものが来てしまう。
オープンしてからまだ5ヶ月しか経ってない。


「次は、本社に来ないか?」


今思えば、普通の会社員としてはよくやった。
それなりに努力もしたし、色んなトライもしたし、たくさんの人を笑顔にした。
げんに、異動が決まってお客さんに伝えたら
最後の1週間に50人近くの方がわざわざ会いに来てくれた。


僕の店長人生は、ここで終わる。
正直、その時の感情としては、やりきって清々しく異動した覚えがある。


自分では精一杯がんばっていたんだけど、
自分の限界を自分で決めていた。
そして外の世界をあまりにも知らな過ぎた。

結論のこのお店は、3年と少しで閉店した。
次の店長に熱を伝えきれなかったし、
スタッフの教育も半ばだった。
スタートダッシュに失敗してからの巻き返しは、難しかった。

初めて会社としてチャレンジする新業態の店長。

めちゃくちゃ難しかった。

今でこそ気づけるこの感覚は
本当に大切にしたいし、伝えていきたい。

最後に
店長=経営者でありたい。
店長=教育者でありたい。
店長=家族でありたい。

そして、本当にそうなりたいのであれば
学びをやめないこと
覚悟を持つこと
誰よりも楽しむこと

何よりも、失敗は終わりを告げた瞬間に初めて失敗になる。
終わらないための始まりをいかに知っているか。
終わらないために何にこだわるべきか。
終わらないために何を毎日続けるべきか。


店長は、本当に楽しかった。
大変なこともたくさんあったけど、本当に楽しかった。

店長論 第二章はここまで。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。



店長論 第三章は、少し未来の話。
ブランドを作る立場から見た店長論を話す。
ただ、それはまた別のお話。

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