海に向かう坂道
朝、バケツにお花を入れて家を出ます。
朝市でお花を売るのです。
港に続く坂道を下っていきます。
石畳は、夜半に降った雨で濡れていました。
カモメが頭上を飛んでいきます。
磯の香りが強くなってきました。 港は、もう すぐそこ。
花を買ってくれる人は、大体顔なじみです。
少しばかり世間話をして、時々、魚を分けてもらったりします。
商いが終わると、大事なお金と売れ残りのお花と、
海の幸を抱えて家に帰ります。
朝下ってきた坂道を、今度は上っていきます。
家に帰って手を洗ったら、ホーローのやかんを火にかけます。
そして、ミルクコーヒーを淹れます。
窓を開けて外を見ました。
まだ石畳は濡れていて、ほんの少し磯の香りがしました。