洋菓子店の香り
バス停の横の洋菓子店。
お店自体が、四角いケーキのようです。
(ジャムおじさんが若かったころ)といった風貌の男性が
一人で営んでいます。
中に入ると、チャイムの音が響きます。
つづいて「いらっしゃいませ。」
という店主の声は、少年のようなアルトです。
店内はチョコレートと洋酒、小麦粉とバターの入り混じった
いい香りがします。
最近のケーキ店とは違うような、
子どもの頃の記憶を呼び覚ますような、どこか懐かしい香り。
「スワンシュー1つと、チョコレートケーキ1つ。」
ケーキを箱に入れてもらっている間に、店内を見渡しました。
硝子ケースの後ろに、厨房が見えました。
菓子作りも販売も、すべてをひとりで行っている店主。
先代といっしょに写っている写真が、壁に飾ってありました。
昭和 平成 令和と受け継がれてきた洋菓子のレシピ。
フランスで修行はしていないけれど、
ここで育った店主に、
この街で愛されてきた洋菓子が守られています。