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藁の籠

アン・モロー・リンドバーグの「海からの贈り物」に、
禿げちょろの藁の籠が出てくる。

浜辺へ禿げちょろの藁の籠に本や、紙や、もうずっと前に返事を書くはずだった手紙や、削りたての鉛筆や、しなければならないことの表などを一杯詰めて、張りきって出かけて行く。そして本は読まれず、鉛筆は折れて、紙は雲一つない空と同じ状態のままになっている。

海からの贈り物「浜辺」より。

ああ、こういう経験が、私にもあるなあと思う。
そして、禿げちょろの藁の籠という記述によって、浜辺を吹いてくる風や、波の音、海の色などが鮮やかに想起されるのだ。

藁と言えば、日本では稲を連想させるけれど、アメリカ人にとっての藁はたぶん麦藁ではないかと思う。当地には麦畑もあって秋まき小麦の収穫が間もなくだ。海も貝殻も好きだけれど、麦もまた好きな物の一つ。