旅する木と犬
木さんは、旅をする木です。
少しずつですが、自分で移動できます。
言葉を話せます。
あとは、普通の木と変わりありません。
木さんが歩き疲れて休んでいると、一匹の犬がやってきました。
「やあ、こんにちは。」
犬は、びっくりして木を見上げました。
そして、トボトボ木に近づいてくると、
しょんぼりと根元に座り込みました。
「いったい、どうしたんだい?」
木さんは、犬に優しく話しかけました。
「ドックランで、パパと楽しくすごしていたら・・・」
ガラガラ・・・ドーン!
「大きな音と光に驚いて、ぼくは走って逃げたんだ。
走って、走って、もう大丈夫と思ったら、
帰り道がわからなくなっちゃった・・・・。」
「そうだったの・・・・・。」
「ぼく、パパにもう一度会えるかな。」
「会えるさ。キミが着ているその縞模様のお洋服、とても似合っているし、 よく目立つ。その縞々が、いい目印になるよ。きっと、パパもキミを探しているに違いないから、しばらくここに居るといいよ。」
「ありがとう。」
しばらくして、犬がハッと振り返りました。
「パパだ!」
「パパー」
犬は、もう、すっかり安心して、同じように縞々の服を着た飼い主といっしょに帰っていきました。
木さんは、遠くから、その様子を見ていました。
犬は
「さようなら。ありがとう。」と言うようにしっぽを振りました。
木さんも、葉っぱの一枚を手を振るように揺らしました。