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紙で遊ぶ 燐寸のお話(1)

 ぼくは、町はずれの通りを、独りとぼとぼ歩いていた。

 仕事を二つかけもちして一日中働いて、それなのにお金がなくて、生活はカツカツ。いつも疲れていた。

 今日は大切な彼女のお誕生日。お祝いしてあげたいけれど、プレゼントを用意することができない。

ため息の先に、目に飛び込んできたのは、年季の入った店の看板。    

『今どき、マッチを買うような人がいるのかな。・・・ああ、そうか、きっとマニアックな人のための趣味の店なのだな。』

                             (つづく)