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紙で遊ぶ 燐寸のお話(3)

前回のお話

結局、ぼくはマッチ屋から、マッチを買った。

永遠の愛を結ぶ1本のマッチ。

もちろん、信じたわけではない。

でも、彼女に誕生日のプレゼントを渡したい気持ちは強かったので、
このロマンチックなセールストークに乗ってみることにした。

その後、ぼくは百均とスーパーへ行った。
『お金はないけれど、気持ちとアイディアはある!』

カップケーキと、ホイップクリームと、ロウソクを買った。
本当は、苺を買いたかったけれど、高いので冷蔵庫の中のイチゴジャムを使ってピンク色のクリームを作った。

彼女が仕事から帰ってきた。

ぼくは、デコレーションしたカップケーキをハンカチでかくした。
「今日は、君の誕生日だから、スペシャルなものがあるよ。
3,2,1!

ハンカチをサッとはいだ。

カップケーキ

現れた小さなカップケーキ。

彼女は
「何これ!かわいい!作ったの?うれしい!!ありがとう!」
                       と言ってくれた。

「さあ、ロウソクに火をつけます。」

シュッ!1本しかないピンク色のマッチ。ちゃんと火がついた。

ろうそくに火

ハッピーバースデイ

「ゆあちゃん、驚くなかれ。このマッチはね、この箱にたった1本だけ入っていたマッチなんだよ。特別なんだ。永遠の愛を結ぶ世界で1本だけのマッチさ。君への愛と共に捧げます。さあ、火を吹き消して!

ぼくは、ジョークのつもりで芝居っけたっぷりに言ってみせたのに、彼女は泣いていた。

「ありがとう・・・・・。最高の誕生プレゼントだね。」

彼女が真面目に言うので、ぼくもつい、
「こんなぼくだけど、ずっといっしょにいてくれる?」
                        と言ってしまった。

「うん。いいよ。」と彼女は答えた。

その後、小さなカップケーキは、半分ずつ、それぞれの胃の中へおさまった。彼女は「このマッチ箱を取っておく。」と言って大事そうに、箱をしまった。

ピンクのマッチ箱

                             (つづく)