あお色の鞄
これは、私の鞄です。鞄の中には、硝子のキューブが入っています。
大きさは、手のひらに乗るくらい。私は路上でそれを売っているのです。
硝子のキューブにオイルが入っていて、そこに青空を閉じ込めてあります。
日が傾いてくると、キューブの空も暮れていきます。
夜になると、キューブの中には、月と星が浮かびます。
欠点は、24時になると透明な硝子の箱に戻ってしまうこと。
お客様には正直に説明しています。
「300円で買える夢ですね。」
納得したお客様だけがお金を出してくれます。
24時。私はどんどん小さくなります。
そして、鞄のジッパーを開けて中に入って眠ります。
夜が明ける前には、起きだして次の場所に移動。
同じ場所に店を出すことは二度とありません。