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かばん(1)
「頼むよ。我が弟よ。今は、猫の手も借りたいんだが猫はいないし、猫がいたところで手伝ってくれるはずもないだろう?助けてくれよ。な?」
兄貴は古本屋をしている。実店舗はない。通販専門。これがなかなか繁盛している。お客様のニーズを聞き、選書をして、それを買っていただいているのだ。兄貴の選書はセンスがよいらしく、顧客が増えて右肩上がりなのだ。
ぼくが頼まれた仕事は、本を届けること。
「そんなの、宅配に頼めばいいじゃないか。」
「いやいや、このお客様はね、(直接、届けてください)とご所望なのだよ。専用のかばんでね。ほら、この古い革のかばん。このお客様にとっては、本をめぐるあれこれも全部かけがえのない(物語)なんだ。いつもは僕が行って、ひとしきり話をして帰ってくるのだが・・・。たまには、変化球というかさ、な?頼む。」
こうして、ぼくは、兄貴の代わりに渋々本の配達に行くことになった。
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(つづく)