エルの店(14)
普段は犬と暮らしている。限界集落と呼ばれる田舎に。
(ここの暮らしが好きだけれど、いつまでここで過ごせるか・・・・。)
冬が近づくにつれて、こんな悩みで頭がいっぱいになった。
日が短くなって、寒くなると、畑に出ることもなく家にいる時間が長くなる。くよくよ考える時間も増える。食欲が落ちて、よく眠れなくなった。
そんな日々が続いていた時、娘に誘われてその店に行った。
赤い半開きの扉。 店の前にはミルクティー色の眠り猫。
なんでも、脚のケアをしてくれるそうで、とても気持ちがいいらしい。
「そんなのいいよ。」
と固辞していたけれど、ある日娘が車でやってきて、
強引に私を連れ出した。
店に入って、びっくり。
こんな店は見たことがない。
店主のエルさんも、こう言っちゃなんだけど、変わった人だ。
私はたじろいだが、もう店に入ってしまったので、観念するしかなかった。
つづく