三軒長屋(3)
街外れに三軒長屋がありました。
左端の住人は、自分の尻尾を探す旅に出て留守。
右端の住人は大家さん。眠ってばかりで頼りにならない眠り猫。
真ん中の住人は、誰も姿を見たものがいません。
それも、そのはず
「ドアを開けるのは、午前7時7分でなくてはならない。」
猫はそうした強迫観念にとらわれていました。
毎日、万全の準備をしてドアの前に立つのですが、ドアノブに手をかけた所で必ず何かが起こるのです。
忘れ物に気づく・・・・火の元が気になる・・・・
トイレに行きたくなる・・・家の電話が鳴る・・・
気づけば時計は7:08を指していて、今日もまた、
ドアノブがまわされることはないのです。
「あなたのそれは、強迫観念ですよ。」
と わざわざ、電話をくれた人もいます。
そんなことは、猫もわかっているのです。
午前7:06になりました。
ドアの前でスタンバイ。
(今日こそは!)
期待に胸を膨らませる猫がいます。