旅するバスタブ

キリンは少し疲れていました。
ここはサバンナ。
少しでも気を緩めれば、食べられてしまう自然の世界。

そんなキリンだって、まったく休まないわけではありません。

少しウトウトしていると、
　　　　　　　何やら聞きなれない物音が・・・・。

（あら、人間だわ。）
人間にはもう慣れっこ。人間は自分たちを見るだけで、別に危害を加えたりはしません。

でも、この人間はちょっと変わっていました。
「キリンさん、いつも立ちっぱなしでご苦労様。少し疲れていませんか？」

私に話しかけてくるではありませんか。

「私は風呂屋です。世界中を旅しているのです。お風呂はいいですよ。疲れが取れます。どうです？入ってみませんか？」

私はお風呂というものが何なのか知りません。そんな私に、風呂屋は丁寧に
（風呂とは何か）を教えてくれました。

「じゃあ、お願いしましょうか。」
「喜んで！いろんなお風呂がありますが、何にしますか？」
「お任せします。」

お風呂が出来上がったので、私は恐る恐る入ってみました。
とってもいいにおいがします。座るのは久しぶりでした。

私は、気持ちがよくて、少しウトウトしました。

「お客さんの幸せが、私の幸せです。ああ、今日もいい日だなあ。」
ウトウトしている私を乗せたバスタブを、風呂屋の車がゆっくりと引っ張っていきます。シャボン玉がたくさん、青空に飛んでいきました。

　サバンナの動物たちが、みんな不思議そうにそれを見ていました。

　　　　　　　　　　　　　( おしまい）

　　　　　　　　　　　★　　★　　★　　★

                                                  あとがき

（しばちゃんの「雨の絵」のリンク　↑　
　この絵は下が切れているのでリンクを押してページへ飛んでください。）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

しばちゃんの「雨の絵」の雲にそっくりな切り抜きを見つけてしまった。しばちゃんの表現が好きな私は、この切り抜きを使いたかった。でも「雨」だとまねっこになってしまう。そこで泡＝風呂と無理やり連想を進めたらこうなった。

なぜ（サバンナのキリン）なのか。最近、NHKの（地球ドラマチック）を見たからなのだ。すぐ影響されるね。