紙で遊ぶ 燐寸のお話(6)
たばこの箱を置いて、ふと本棚の上を見ると、よく山に持って行ったオイルランタンが目に留まった。
『マッチの名前の(若い頃の思い出)にぴったりじゃないか。たばこを吸うのは後のお楽しみにして、オイルランタンに久しぶりに灯をともしてみよう。』
シュッ!青いマッチは、火の付きがよかった。
やさしい光は、夜の澄んだ空気、木々のざわめき、満天の星空を思い出させてくれた。遠くから水の流れる音も聞こえてくる。
あの頃人生は始まったばかり。
『自分は、いったい何者なのか。何になろうとしているのか。』
漠然とした不安の中、答えの出ない問いについて、
いつまでも考え続けていたっけ。
そして今。人生は終焉に近い。
『自分はこのような者らしい。』
大方、答えは出ているのだ。
しかし、まだ、人生終わってはいない。
『めくられていない自分の物語のページがある。』
ランタンの灯を消し、思った。
『もう一度行ってみようか。あの山へ。
読みかけの物語のページを開きに・・・。』
(つづく)