空を見るだけの1日(5)
日が沈むと、あっという間に、変電所は闇に包まれた。
街灯も何もない、山の中の深い闇。
バス停までは、歩いていかなくてはならない。
スマホは持っていない。
それは、ギャラリーに入るにあたっての唯一の規定だった。
不意に赤いランプが灯っているのを見つける。
そばに行くと「非常持ち出し」という赤い扉があった。
開けてみると、懐中電灯、リュック、防寒着、チョコレート,
救急バッグなど、一通りのものがそろっていた。
(これだけあれば、何とかなりそう。)
バスは20:00発。
支度をしてから、もう一度、アウトドア用の椅子に座る。
(思った通りだ・・・・。)
三日月と、明るいダイヤモンドみたいな星が夜空に輝いていた。
ふと、時計を見ると・・・19:10。
(さあ、出発しよう。)
こうして、空を見るだけの、贅沢な1日は幕を閉じた。
(おしまい)