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岬の青い家

岬に小さな青い家が建っていました。
(どんな人が住んでいるのかな。)

ある日、思いきって近くまで行ってみることにしました。

扉に小さなプレートが下がっていました。
(青色えんぴつの店 どなた様もお気軽にお立ち寄り下さい。)

呼び鈴を押すと、店主が出迎えてくれました。
「うちは、鉛筆屋です。青色の鉛筆ばかり扱っています。」

その鉛筆は、1本1本手作りされていました。森から木の枝を集めてきて軸にします。芯の色は、海と空から分けてもらっているそうです。

この魅力的な鉛筆を、是非持って帰りたいと思いました。
鉛筆は1回に1本しか買えません。
色は選べず「処方」されるのだそうです。
鉛筆屋さんは鉛筆を選び始めました。ヤドカリさんもお手伝い。

家に帰ると、さっそくスケッチブックを開きました。
そして(私だけの青色鉛筆)で色を塗りました。

波の音が聞こえてきます。
いつのまにか、私は眠っていました。

夢を見ました。

私は砂浜に立っていました。遠くから、懐かしい人影が近づいてきます。
懐かしくて、嬉しくて、私は泣いていました。

こうして、鉛筆を使い切った時、私が抱えていた悲しみは空と海に溶けていました。