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「せめてできることを」

愛してやまない八咫烏シリーズの最新刊、発売されました。うきうきで買って帰りました。躊躇いなく単行本で買う本って実はあまりないんだけど、これは間違いなく買う。一刻も早く読みたいから。

八咫烏シリーズの魅力は、ひとがひとを裏切ったり、信じていたものが信じられなくなったりする世界を描きながら、絶望や諦めとは違う未来を描こうとするところにあると思う。どんでん返しも巧妙な仕掛けも、ひとりひとり印象的な登場人物たちも、そのために存在しているんじゃないかと思う。

今作も、ストーリーに関しては何を言っても未読の人にはネタバレになるので、印象的なセリフについてのみ書きます。

登場人物のひとり、澄生が口にする言葉。

「せめて、私にできることを」

どんなに世界が理不尽で、少数者の意思で動いていて、あるいは、自分が無力で、世界全体を把握し理解することはできなくて、その少数者からは締め出されていたとしても。それでも彼女は、自分にできることを、と望む。苦しむひとの存在を知っていて助けないのは罪だから、と。その考えは誰しも持てるものではない。むしろ自分自身に余裕があるために生まれる考えではないかということも、物語では触れられている。ただそれでも、その願いがひとを動かし、何かを変えるきっかけにはなるということを、わたしは今作から受け取った。

最後、予想外に次ぐ予想外の展開には、もはや胸が晴れるような気持ちになった。きっとまた1年くらい待たなくてはならないだろうけど、早く続きを読みたい。

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