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「有」ったけの「愛」を届けてくれたあなたへ

宙組には、明るい太陽のような娘役が居た事を一生忘れない。

他の誰も真似できない、唯一無二の魅力を持つ娘役さんだった。

彼女を語る上で、真っ先にそのまん丸くて真っ直ぐな瞳を思い浮かべる。舞台からその真っ直ぐで丸い瞳で語りかけてくる。本当にコロコロとよく動く瞳だった。お芝居ではセリフが無い場面でも、瞳を追いかけているとその世界観に入り込めた。ショーでは動きながらお客様に目を配っていた。キョロキョロと視線が動いたと思えば、パッと大きく目を見開いて、次の瞬間にはクシャクシャと嬉しそうに目を細めている。その愛しい姿こそ彼女そのものだった。見ているだけで私まで何度も目が合ったと思わせる。

春の日差しのような朗らかさ、時に初夏の日差しのような眩しさ、まん丸い満月のような温かみもあった。舞台からさまざまなコントラストの光を放っていた。

あの愛しい瞳の奥に命を落とす程の辛さがあったなんて…と思うと悲しくて切ない。舞台から貰った温かさを彼女にお返しできなかった。

あの日も、いつも通りに舞台に立ってて、いつも通りに歌ってたじゃない。お芝居にショーに目を見張る活躍ぶり。これまでも、これからの宙組を支えてくれる大きな存在になる。そう信じて疑わなかった。終演後すぐに彼女を応援するファンの仲間に「活躍してるよ」「楽しみにしていて」と連絡した。観劇後に語り合いたいねと添えて。

今となっては、吉本新喜劇ばりのコミカルな場面があった、青い衣装で娘役4人で歌ってた。断片的な記憶しか思い出せない。あなたが居なくなった日から、あの日のあなたの姿を思い返すと辛くて苦しくて、言語化しておこうと言う気持ちが起きなかった。あれが生きてる最後で、2度と会えないなんて今でも信じたくない。

初舞台から何十回とその舞台姿を見ていた。彼女にまつわるエピソードやファンへの対応などを見聞きして思う。彼女はとても優しくて真面目な人だったんだと言う事。誰かに甘えたり頼ったり出来なくて、周りに迷惑を掛けたくないって言う優しさがあったのだろうか。一人で抱え込んで、頑張りすぎて、疲れちゃったんだろうか。

何が彼女をそうさせたか、ご本人に真意を聞けない今はどうしようもないけれども。

辞めたら良かったのに、なんて無責任な事は言えないよ。だって、そこは夢を見ていた大好きな舞台だったよね。そんな大好きな場所すら辛くなるまで、疲れ果てるまで頑張り過ぎてしまった。最後の一日まで私達に舞台を届けようとしてくれたよね。弱くないやん、めっちゃ強いやん。だからこそ限界を超えてしまったんだよね。

尊い命であると共に、宝塚歌劇団の誇るべき娘役だった。みんなに愛される娘役だった。大切な宙組の娘役だったし、私の大好きな娘役だった。もう二度と同じ人は出てこない。あの笑顔はあなたにしかない。

だからこそ、舞台から届けられた「有りったけ」の「愛」があった事を忘れない。

劇団とご遺族との間で合意締結したとは言え、失われた命を一生悔いて生きていくだろうご家族に掛ける言葉が無い。いちファンの私から言える事があるとするならば、あなたの大切なお嬢様に舞台から沢山の幸せを頂いた事。娘役だったお嬢様を大切に思っている人が沢山居た事を、このネットの片隅に記しておく。


改めて、ご冥福をお祈りいたします。

どうか、安らかに…

空の上から、大切な人達の事を照らしていてください。その温かさを感じる事が出来た時には、あのコロコロとよく動く愛しい瞳を思い出します。