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SCRAP&BUILD-エンターテイナー・留依蒔世(留依まきせ)の門出をこの目で見た「三ッ矢直生クリスマス演奏会」

男役としてやり切ったからこそ、新たなステージに立つ。

12月22日、宝塚ベガホールで開催された「三ッ矢直生クリスマス演奏会」へ。退団して1か月ちょいの留依蒔世さんが出演するとあって、また、個人的に晴音アキさんが「ブエノスアイレスの風」を披露されると聞き、それを聞きたくて夜の部に足を運んだ次第。

退団ほやほやのあーちゃん(留依蒔世さん)は、メイクこそ頑張って女性寄り←だったものの、お衣装もあってかまだまだ肩で風を切っていらしたし(白いケープ?マントのような衣装だったの)舞台から袖への捌け方の勢いや男役らしい男前な歩き方…と、随所に男役時代の名残があって(笑)そりゃぁ10数年染みついた習慣だもんねー。男役OGあるある。

自己紹介メドレーと称した、それぞれの宝塚時代の代表曲。

あーちゃんは「Never Say Goodbye」より「No pasaran!」2000人以上の大劇場をも呑み込むあの圧巻の歌声を、バウホールが一回りか二回り小さくなった程度のこの空間で聞ける。臨場感が半端なくて鳥肌どころじゃない。留依蒔世の歌声で殴られるかと思った。プロミセス、プロミセスのマージ、そしてラ・パッショナリアと女役を経て退団を決意したと聞く。女役が男役としてのSCRAPで、カルトワインのチャポ・HiGH&LOWのリンと男役としてのBUILDしてきたものの極みの役だったなと思い返す。

タンゴメドレーも良かったな。あーちゃんって歌も上手いけどダンサーでもあるんだ。身体のラインがハッキリ見える黒いお衣装が艶めかしくて。こう言うのは男役時代では見られなかったよね。男役の女役ではなく、生身の女性のあずささんを感じてドキドキしてしまった。でも仕草は男役のソレなんだけどね。そのギャップがたまらなかった。

まだ退団したてて男役時代の名残もチラホラ残っている中、「やっぱルイマキセだわー」と納得しちゃう部分、そして新たな可能性の部分も垣間見えてとてもいいものを見せて貰ったと思った。歌、芝居、ダンス。「宝塚の男役」と言う究極の型を究めたからこそ、これからは型にハマらない表現を見せて欲しい。あーちゃんが良いと思う表現をやればいい。これからはエンターテイナー・留依蒔世を見ていたい。

そしてこの「門出」に三ッ矢直生さんがいらしたのは大きかった。

現役時代は存じ上げないし、名前は知っている程度。どちらかと言うと前に「蛙たち」でご主人の高野ピエールさんの歌声を聞いた事があって「妻とは芸大の同期」と言う話もMCでされていたのを覚えている(12歳年下にはびっくりした)そっちの方が先なの、私はね。

三ッ矢さん、凄かったんだよ…

冒頭、肩に羽根を背負った衣装で高らかに歌い上げるお姿が神懸っていて。ベガホールの舞台ってパイプオルガンがあって神々しいのよね。そこにホンマモンの神が降臨されたぞーーー!!みたいな。「愛あればこそ」をアカペラから徐々に歌い上げていく所、「失われた小鳥たち」を舞台の上から歌う姿、「クンバンチェロ」の圧巻の歌声…常に圧倒され過ぎてマスクの中常時口ポカーンってなってたもん。私の2022年のクリスマスプレゼントは三ッ矢直生さんの歌声を聞いた事だと思う。ルイマキセと言う名のサンタクロースはこの極上のエンターテイメントに立ち会わせてくれた。贅沢なプレゼントだわ。

クリスマス演奏会、素敵な内容だった。

行く!!と決め手になった晴音アキさんの「ブエノスアイレスの風」が聞けた事。配信で見てて途中で寝落ちしてしまい、起きたら風間柚乃君が死んでいたと言う所まで進んでいて何の話??と思ったのだが、晴音さんのブエノスアイレスの風が妙に耳の残って。何故風間柚乃君は死んだのか?(←役で言いなさい)そしてこの晴音さんの歌声を聞きたいと思いご縁があり観劇した。私にとってはブエノスアイレスの風と言えば晴音アキであり、晴音アキと言えばブエノスアイレスの風なのだ。

5月に舞台で見た時とはまた違った印象の、柔らかく優しい歌声にはーちゃんもこの歌を大切にしてくれているんだなと思うと嬉しくなった。今だから言えるけど、ブエノスアイレスの風を観劇した時の印象から次の公演で退団発表があった時に寂しいけど腑に落ちた感覚があった。あれだけの場面に出会えたから踏み出す事を素直に応援出来たし、こうやってまた会えたのが嬉しかった。小鳥のダンスの真っ白なドレスも素敵だったなー。(ピエールさん以外全員女性なのに)紅一点のチャーミングなお姫様でした。

愛音羽麗さん、今でもすぐに男役に戻れるんちゃう?と言った男役のソレ、完全に王子様のいで立ちだった。めっちゃかっこよかったなー。男役OGさんって、完全に女子に戻る人と男役のカッコよさを残している人もいるよね。こう言うエンターテイナーとしての歩み方もあるよ、とその背中が語っているようだった。

高野ピエールさん。この中に男性の声が入る、と言うのが宝塚では絶対見られなくて、男性ならではの厚みのあるいい声が相乗効果をもたらした。どう頑張ったって女性には出せない声だし、凄く好きな歌声なのでまた聞けて嬉しかった。また「蛙たち」にも行きたいなー。

SCRAP&BUILD

宝塚の男役と言う殻を突き破り、新たな旅立ちを迎える。

宝塚の男役OGでかつ、数十年経っても第一線のエンターテイナーとしてご活躍される大先輩との共演。この偉大なる大先輩のステージを見ながら、留依蒔世の1年後、5年後、10年後があればいいなぁと思った。どうか息の長い舞台活動をと願わずにはいられない。