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”小さな原石”が放つ「ワイン色」の光-宙組娘役・美星帆那さんの活躍が嬉しい

この小さな原石は一体どんな光を放つのだろうか?

その原石と出会ってから、4年目の夏を迎える。

4年と言う月日はコロナ禍と言う逆境の中、進んでは立ち止まり、進んでは立ち止まり。新人公演と言う成長の機会を奪われ、舞台に立つ時間を奪われ、時間だけが過ぎていくような不安もあっただろう。

逆境に負けず、小さな原石は磨かれ少しずつ光を放ち始めた。

4年目。美星帆那と言う娘役の中での「芝居心」が見えて来た。

「プロミセス、プロミセス」はミス・ウォンと言う役名。主人公の通う会社のOLの1人と言った所か。大勢の娘役の中でも光るものがあった。特筆すべきは、クリスマスパーティーの場面の歌手。春乃さくらさんと朝木陽彩さんと共にオーシャンズ11の3ジュエルスのような3人娘に抜擢された。ああいうアイドルっぽい可愛い場面には不可欠の存在なのね~と目を細めた。第二幕の「怪しげな八番街のバー」の場面では、バーの客女の1人と称し、上級生に大胆に絡んでいくし男役さんに逆壁ドンするなど肝が据わっているアドリブを見た。映像化されなかった作品。役として楽しみ、役として生きる彼女の姿を記憶にしっかりと焼き付けた。

「Never Say Goodbye」は、大劇場公演の長期間の中止・新人公演の中止など波乱に満ちた始まりだったが、ネバセイの世界に生きる彼女が居た。

ココナッツ・ガール、スペインの女、少年、祭りの女。

チャーミングなココナッツグルーヴの場面はその愛らしさに目を細めるばかり。まるでマスコットのようだ。次の場面では真っ赤なドレスで情熱的なダンスを披露する。戦火に吞み込まれていく国への不安・政治への不満。宙組のコーラスワークから、彼女の意志の強い目力からそれが痛いほど伝わってくる。お馴染み少年役は愛らしさそのものだったが、勇ましく無邪気に訓練に参加するが銃を向けられると怯えて背中に隠れてしまう。普段なら「娘役さんに銃は重くないのかな?」なんて無邪気に思うが、ちょうどウクライナとロシアの戦争が始まったタイミング。遠い国で少年たちが同じ目に遭っているのかもしれないと思うと笑えなかった。

特筆すべきは、研3にして娘役群舞のナンバーに入った事。

宙組上級生の数が少ない事を思うとそうなるだろう事は予想できるが、間違いなく同期の愛未サラ・山吹ひばりの方が先に入るだろう。彼女はもっと先の話かな~なんて思っていた。ロケットでの愛らしい笑顔からの~、妖艶なフラメンコ衣装のギャップが凄い。水音志保さんを軸に栞菜ひまりさんと両脇で踊る。上級生さんに負けず大人っぽい(←贔屓目)壇上で風色日向さんと組むのだけど、壇上の段差+本人達の身長差。上級生様の包容力にエスコートされる姿は涙なしでは見れなかった。身長差萌えに覆いかぶさるようなキス!エモいとしか言えない。ナニーロ先輩お世話になりました!

そして「カルトワイン」

この作品で「美星帆那」と言う名は大きく知れ渡った。モニカ役の子と言えば分かる位にはその存在を知らしめるインパクトを残した。

瑠風輝さん演じるフリオの妹・モニカ役。病弱で繊細ながらも芯の強い少女だ。第一幕だけの出番ながらストーリーの要となる重要な役どころを担った。親父さんを殺そうとし錯乱するシエロを優しく諭し震える手で銃を受け取る迫真の場面は印象深い。母親を失くして以降この家はモニカが母親のような役目でもあったのだろう。国を脱すると言う大きな決断、フリオの迷いにそっと背中を押す。シエロへの誤解を解こうと周囲を説得する強さを見せながらも、強がっていても列車の屋根でお兄ちゃんの膝枕で寝てしまう無邪気さも胸を打つ。第二幕では手術は成功した、とだけでモニカ自身は登場しない。だけどモニカの事だからきっと強くたくましく生きている。手術のお金の出どころは一生知らないままだろうが…。

モニカ役で繊細なお芝居で涙を誘った後、フェスティバルで踊りとうもろこしをむさぼり食べていたり(笑)、ソムリエの格好でコロコロと表情を変えながら踊り明かすかと思えば、見違えるようなドレスアップで目を惹く淑女に変身したり…小柄ながら表情が豊かでチャーミングで見ていて笑顔になる。

その小さな原石は輝きを増すばかりだ。

何処からどんな光を照らしてもキラキラと何色にでも輝く。

カルトワインで得たものが、大劇場でも強みになっているとファンの贔屓目でも感じる今日この頃だ。何より大きく変わった事は「美星帆那」と言っても「何処に出てるの?」「誰?どんな子?」と聞かれ説明するところから始まる。そこからだったのに「カルトワインのモニカだった子だね」「苺美瑠狂のアベの子はモニカだよね」で分かるようになった。夢千鳥の不二彦ちゃんでも伝わらなくはなかったが、少年役だった不二彦から娘役の彼女は結びつきにくい。

カルトワインと言う作品、モニカとの出会い。それは、小さな原石に大きな眩い光を当てる作品だったと言える。

まだ研4、娘役芸を究めていく過程の中の長い道のりだと思っているし、モニカ以上の役に出会える事を願っているが「カルトワインのモニカ」に出会えた事は美星帆那の娘役人生の中でも大きいのは間違いない。

モニカは小さな原石にどんな色をどんな輝きを与えてくれたのだろうか。

まだまだ磨き続ける小さな原石の行方をこれからも見届けたい。