小さな原石がひと際輝く瞬間を見た「PAGAD」「Sky Fantasy!」
007の新人公演が終わった頃に、大路りせ君のファンの一人と遭遇した。
お互い顔を見るなり「新公ありがとうね~」と労い合った(笑)
新公の募る思いあれこれを話しながら、次の大劇場公演、2人の扱いって変わるのかな?ショーで銀橋渡ったりするのかな。りぃちゃん(大路君)は路線上級生のナンバーに入れて貰うとかあるんじゃない?
「うち(美星帆那)は、埋もれない立ち位置になるのかな」
158㎝、長身揃いの宙組の中ではひと際小柄な人。学年と香盤順がショーの立ち位置でもきっちり決まっている世界。まだ下級生の彼女は、ショーで2列目3列目に居ると埋もれてしまうのだ。
せっかくSS席のど真ん中を取れたにも関わらず、銀橋の真ん中に立つトップスターの衣装のひらひらにすっぽり隠れてしまうし、上級生の肩と肩の合間からしか見えない事もある。2階席は2階席で、座る場所によっては花道の壁に隠れてしまう始末。(東京宝塚劇場の2階席って微妙に前に出てません?)
席によっては全く見えなくなっちゃうのだが、それも下級生時代の通過儀礼。学年を重ねるにつれ立ち位置は変わり、いつかは一番前の列に来る。今はどんな後ろでも、端っこでも、上級生の肩に隠れても「あなたを見ているよ」と伝えるのがファンの使命だと思っている。
「PAGAD(パガド)」「Sky Fantasy!」の初日を見た。
初日の興奮さながらに、感想のお手紙を書こうとメモを取っていた。翌日、あんな事になるとは思わず…あれ以来、しばらく開けなかったメモを見返して、せめてここに残しておこうと思いパソコンを立ち上げた。
お芝居で、恐らく初めてのセリフ、ソロのナンバー。一瞬だけど感慨深かった。シックな紫色のゴシック風ドレスが大人っぽく、メイクもゴシック風?なのかな。いままと印象が違った。ウィーンの市民では安心安定の子役でほっとした。アイリス・ワトソンのような明るいピンク色も似合うが、若干渋めのくすんだ色の方が似合う気がする。
そして、見ている方もカロリーを消費しそうなスピード感溢れるショー。「埋もれない立ち位置になってるのかなぁ」と笑っていた事が現実となった。
端っこだけど集団の1列目、ナンバーの中で本舞台で真ん中で踊る場面。トップスターの斜め後ろ。初見は割と必死に「ちっちを探せ!」で精一杯になるのだが探さなくても目に入る。2列目・3列目になる事もあるが、センター付近だったりと、今までよりも探しやすくなった。
今回は何と鷹翔千空さんと組ませていただく。大逆転裁判のシャーロック・ホームズとアイリス・ワトソンだった2人は「ホームズ君とアイリスちゃん」の面影は全くない、鷹翔さんの上級生男役の包容力に寄り添う立派な娘役だった。夏の2人とは余りにも雰囲気が違い過ぎてそのギャップにドキドキした。
そして、中詰めでの大路りせ君と2人での銀橋渡り。
新人公演主演コンビ。同期とたった2人きりで渡るのだ。
(見る側の)心の準備もそこそこに、飛び出て来た2人は明らかに緊張してる面持ちだった。そんな中でりぃちゃんが一生懸命エスコートしてくれていた。りぃちゃんに必死についていく姿。青いショートカットの後ろ姿。相手役を見上げる首の角度。華奢な肩のラインに光るゴールドのネックレス。手を繋いで捌けていくまでのあの時間、とても尊いものを見た気がした。
緊張で声が上ずってたな~。緊張が声に出てしまいやすいのは、彼女の弱点だろうし、きっとこの後2人は悔しがって反省会でもしているはず。どんなに練習をしても、舞台に立つ本番でないと分からない事がある。新人公演の「見守って下さっている」お客様ばかりではない。本公演のまた違う雰囲気のお客様たちの前に出る、それは2人にとって経験した事が無かった事。
2人は個の悔しさを乗り越えていく。
この初日の緊張感を「エモい」と懐かしむくらいに、この2人の場面はこれからどんどん成長していくのだろう。今日感じた事を素直に伝えて「楽しみにしています!」とお手紙に書くつもりだった。
そのお手紙はまだ書けていない。
今、このタイミングで出すのかどうか悩んだが、私があの日見た風景を残しておきたくてここに記す事にした。