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小さな原石はRED,BLACK,GREENの輝きを放つ

「あなたを見ているよ」

出会ってからずっとそのスタンスだったが、もう初舞台の頃のひたむきな子じゃない。親心のような運動会の保護者のような(笑)そんな気持ちからスタートしたので今でもそんな気持ちが抜けなかった。その個性そのパフォーマンスに惹かれる・舞台人としての魅力より、初舞台から見守っている気持ちが強くて成長過程を見守っていると言うスタンスだった。

セリフがあろうがなかろうが、小さくて埋もれてしまおうと。舞台に立っている以上「見ているよ」「頑張っているよ」と言う気持ちで見ていた。もちろん初舞台からの5年で大きく成長したけれども、大劇場の新公ですら「でも頑張ったもんね」「初めてだったもん」と言う目で見ていた。

もう、そう言う風に見る事を辞めよう。

ここに至るまでに、彼女自身の言葉を沢山聞けた。

ステージトークの配信にインタビュー。潤花さんのさよなら番組。メディアを通じてその思いを発する姿を見た。何を考えて何を思い舞台に立つのか。コロナ禍では限られたスター以外、その他大勢の生徒はその思いを知る術は無かった。彼女の言葉を聞いて、生みの苦しみ、大きな壁。とてつもない緊張と戦った新人公演だったと思う。今までにだって役はあったしその役に対して向き合って来ただろうけど、新人公演のヒロインと言うのは、それらの比じゃないぐらいに大きな壁ばっかりで、悔しくて苦しい事も沢山あっただろうなかで全力で向き合って来たんだなと思った。

東京では大劇場と役の作り方を変えてきている印象があった。

大劇場はとにかく緊張感が伝わって来たし、自分の個性以上に潤花さんの役に寄せようとしていたように思う。本役さんのイメージに忠実に作り上げる事も、自分の頭で考えてオリジナルの役に昇華させる事もどちらも正解だと思う。けれども、彼女の場合潤花さんに寄せようと意識し過ぎている部分もあったかもしれない。「潤花さんに似てる」は正解だけど、潤花さんは潤花さんだからあのデルフィーヌなのだ。彼女のそれは本役デルフィーヌのように信念を持った女性と言うより、もっと幼い若さゆえの暴走・ロマノフのお嬢様の戯言のように見えた。(あの危うさはそれはそれでアリかなと思ったけど)

東京で見たデルフィーヌは自然体だった。

美星帆那の心が信念がデルフィーヌの生きざまに表れていた。

映像で改めて見返すと大劇場の新人公演とは声の出方が違う。実際劇場で見て、大劇場の時の危うさを感じる事が無かった。ヘアメイクも若干違う。研5のメイクなんてまだまだ試行錯誤だよね。ぐっと垢抜けた印象もあった。

テクニカルな部分以上に、心を突き動かされる瞬間に出会えた。

RED BLACK GREEN

その歌声が天井から降り注いでくるような、空気と一緒に包み込んでくるような。言葉にどう表していいのか分からないけれども、彼女の歌声を聞いてそんな気持ちになった。大劇場ではあんなに震えていたのに、ご本人も悔しがっていたのに。スターのオーラとか、空間を掌握するみたいな大げさなものではないし、感動とはちょっと違う。とても心地が良かったように思う。以降のお芝居は自然に入り込んで来たし、開演前にあんなに緊張していた事を忘れていた。

いつかはそんな舞台人になるのかな。その片鱗が最近は見え始めた所だったが、早々にこんな瞬間が訪れるなんて思わなかった。

これからは舞台人・美星帆那を信じて応援していく。

舞台人の彼女が舞台上で生み出すもの全てをこの目で見たい。感じたい。私はこの小さな舞台人が作り出す世界が好きなのだ。彼女にしかない、この小さな身体から発せられる全ての表現が好きで、彼女が生み出すもの全てを応援していきたい。

君に会えて良かった。

翌日見た本公演のこのフレーズが胸の奥に響く。

彼女に出会わせてくれたのは、それを歌っている大きな背中のトップスター・真風涼帆さんなのだ。その全てにありがとう。感謝の気持ちで耳を傾けた。