姉に溺愛されているお嬢様を助けただけなのに… 4話
カフェでお茶しながら、〇〇と彩は今度の休みの日に出かける場所について話し合っていた。
その様子を、外から美空は観察していた。
美空:本当、あの子は誰なの?
美空:というか、それにしても…
美空:可愛い!!!!
独り言がうるさくて、一瞬周囲の人に白い目を向けられた。
美空:あ、す、すいません…笑
〇〇:今度はどこ行こうか?
彩:どこでも良いですか?
〇〇:うん。
彩:じゃあ、ハワイ!
〇〇:え?
彩:冗談です笑
ミルクティーを飲んでカップに、彩のニコッとした顔が半分隠れていた。
〇〇:本気で言っているのかと思ったよ。
〇〇:ほら、彩ちゃん家凄いお金持ちだし笑
彩:確かに。
彩:でも、海に行きたいな〜って思います。
〇〇:海か〜
彩:まだ夏じゃないから海には入れないですけど、潮風に当たりたいな〜って。
〇〇:うんうん、気持ち良いよね。
〇〇:俺もね、昔よく行ってたサイクリングのコースがあるんだけど、そのコースの途中で海の側を通るんだよ。そこの潮風が気持ちよくてさ〜
彩:へ〜、良いですね。
彩:あ、じゃあそこに行くってのはどうですか?
〇〇:ん、あ、それ良いね!
二人の次に出かける場所が、そのサイクリングコースに決まった。
彩:なんか、思ったより早く決まりましたね。
〇〇:そうだね、もうちょっと色々考えても良かったかもだけど。
彩:本当は、遊園地とかにも行きたいな〜って思ったんですけど。
彩:でも、欲張っちゃいけないかなって。
〇〇:そっか。そしたら、次の次に行くところ遊園地にするってのはどう?
彩:え、良いんですか?
〇〇:うん。
彩:えへ、やったぁ!
〇〇の提案ではしゃぐ彩を見て、〇〇は和んでいた。
〇〇:(ふふ、本当に可愛いな。)
二人がカフェから出てくると、美空は物陰に隠れた。
その時、空が夕陽で紅く染められていた。
彩:綺麗ですね、空。
〇〇:そうだね、夕陽で紅くなって。
彩:そう言えば最初に会った時も、空がこんなでしたよね。
〇〇:ああ、そうだったね。
と話していると、
ダッ ダッ
ゴン:お嬢様ー!
〇〇・彩:え?
ゲン:お前を連行する。
〇〇:いやぁ、ちょっt…!?
前に〇〇を拘束した彩のSPであるゴンとゲンが現れ、ゴンは彩を保護し、ゲンは〇〇を再び拘束した。
彩:違うの二人とも!この人は…
ゴン:もう大丈夫ですよ、すぐ家にお連れしますから。
そう言って、ゴンは彩をお姫様抱っこして連れて行く。
ゲン:覚悟しろ、美波様に裁きを下してもらうからな。
〇〇:いや、誤解なんですぅーーー!!
と〇〇が言うのも聞かず、ゲンは〇〇を肩に乗せて連れて行った。
美空:〇〇!?
物陰に隠れて様子を見ていた美空が、慌てて〇〇たちを追いかけた。
少しして〇〇たちは彩の屋敷の前に到着し、屋敷の前では久しぶりに暴走族の格好をして木刀を持った美波が立ってた。
ゴン:美波様、彩様を無事連れてきました。
ゴンが彩を下ろして、彩が美波のもとに寄る。
美波:ご苦労。
彩:お姉様、あの…
美波:彩、怪我はない?
彩:う、うん…だって…
ゲン:コイツです、美波様。彩様を連れてこうとした怪しい奴は!
美波:そうか、面を見せろ。
美波に命令され、ゲンは〇〇を下ろして顔を見えるようにして拘束した。
〇〇:あの…
美波:!?
美波:なんだ…あんただったのか。
ゲンが拘束していた者の正体が〇〇と知った美波は、ため息をついて呆れていた。
ゲン:知り合いですか?
美波:ああ、というか…
美波:コイツは怪しい奴じゃない!!!
ゲン:へ??
ゴン:そうなんですか?
美波:彩の友だちだ!
美波:ね、彩?
彩:うん。
美波から〇〇のことを知らされ、ゲンは〇〇を解放するとゴンと一緒に〇〇に謝罪した。
ゲン:し、失礼しました!!!
ゴン:本当に、申し訳ない!!!
〇〇:あ、い、良いですよもう。
美波:いいから、二人は戻って。
ゴン・ゲン:は、はい!
ゴンとゲンが屋敷の敷地内に戻っていくと、美波が〇〇に謝った。
美波:すまない、余計な騒ぎをさせて。
〇〇:いえ、大丈夫ですよ。
彩:お姉様…
美波:話はあとで。
美波:今は、この人に挨拶して。
彩:う、うん。
彩:〇〇さん、またすいません…
〇〇:いいよ、全然。こっちも勝手にカフェに誘ったし。
〇〇は笑って、彩を安心させようとした。
彩:でも、それは…
〇〇:またね、彩ちゃん。
彩:あ、はい…また。
〇〇:お姉さんも、また。
美波:ああ、気をつけてな。
彩たちに挨拶して、〇〇は帰っていった。
〇〇が去った後…
美波:はぁ〜、良かった。ゴンが、彩が知らない人に連れてかれているって言うから焦ったよ…
彩:ごめんなさい、お姉様。心配かけて。
美波:彩、この前なんて約束した?
彩:え…、それは。
彩:〇〇さんに会うときは教えてって。
美波:もう、前に約束したじゃない。会うんだったら、教えてねって。
彩:う、うん…
美波:知ってるでしょ?お父様とお母様が凄く過保護なのは。彩が昔、小さい時に誘拐されかけて、それから二人がああなったんだから。
そう言う美波の眼差しは、本気で妹を思って言っているのをよく表していた。
彩:でも、〇〇さんは悪い人じゃ…
美波:それは分かってる。
美波:でも、教えてくれないと二人に誤魔化せないでしょ?私が。
彩:お姉様…
美波:それに、またゴンとゲンが勘違いしちゃうでしょ?
彩:そ、そうね。
美波:さ、早く入ろ。
彩:うん。
美波が彩の背中に手を添えて、二人で一緒に屋敷の中を進んでいく。
美波:彩?
彩:何?
美波:あの人とカフェにいたんだって?
美波が立ち止まって、彩の方を向く。
彩:う、うん。次、一緒に出かける場所を話し合って。
美波:で、決まったの?
彩:うん、今度ね海の側を通るサイクリングコースに行って、サイクリングしてくるの。
美波:そっか。
彩:お姉様?
美波:楽しんでくるんだよ?
そう言うと、美波は彩に微笑んで頭を撫でた。
彩:う、うん!
ギュッ
美波:へ?
彩:お姉さま、ありがとう!
彩が満面の笑みで美波に抱きつき、美波はまた悶えていた。
美波:(はぁ〜〜、可愛い過ぎる彩!!!)
〇〇:はぁ〜、やれやれ。
〇〇:でも、楽しみだな。
彩たちと別れて、帰り道を歩いていた〇〇は笑みを溢していた。
美空:へ〜、何が何が?
〇〇:うお!?
驚いた〇〇が振り返ると、美空が立っていた。
〇〇:って、美空。何してるの!?
美空:こっちの台詞!
〇〇:はぁ?
美空:誰よ、あの子は!?
〇〇:え、ああ…この前知り合ったばかりの。
美空:随分と仲良さそうにしてたじゃない?
〇〇:な、別に…美空には関係ないだろ?
美空:あるの!
〇〇:なんで?
美空:だって…
美空:すっっっっっっっごく、可愛いじゃない〜!!
〇〇:お前な…空ちゃんだけじゃなく…
美空が推してるアイドルグループのメンバーの名前を出しながら、可愛い子に目がない美空に〇〇は呆れていた。
美空:もう、なんで教えてくれないのよ〜
〇〇:やめろ、人の頰つっつくなって。
〇〇が嫌がるも、美空は悪戯っ子な顔で構わず〇〇の頰を突っつく。
〇〇:ていうか美空、ずっと俺たちのことつけてたの??
美空:うん、カフェに〇〇たちがいた時から、なんかサングラスかけた男の人に〇〇とあの子が連れてかれて、なんか屋敷みたいなところに木刀持った女の人が立っていたのまで、全部見てた。
〇〇:そうか…
美空:あの子、お嬢様なんだね。
〇〇:う、うん。
美空:でも、どうして〇〇がそんなお嬢様な子と?
〇〇:前に一人で道端で怪我していたのを助けて、それからだね。
美空:へ〜、〇〇も意外とロマンチックな出会いするんだ〜
〇〇:何がロマンチックだよ。
美空:良いな〜、美空もそんな出会いしてみたいな〜
〇〇:へ〜、そうなんだ。
美空:そうなんだって、何よ!?
美空が頰を膨らませて、〇〇の脇腹を拳で小突く。
〇〇:だって、美空は空ちゃんにしか興味ないのかと。
美空:そりゃ、私の推しは空ちゃんだけど…
美空:私だって、運命の人との出会いを夢見てるよ。
〇〇:ふ〜ん。
〇〇がそっぽ向いていると、
ギュッ
〇〇:ん?
美空:手繋ぐの、ダメかな?
美空に真っ直ぐな瞳を向けられ、〇〇は手を握られた。
〇〇:仕方ないな。
美空:ふふ、ありがとう。
美空と手を繋いで歩いていた〇〇は、
〇〇:(彩ちゃんには見られたらまずいな、これ…)
〇〇:(でも、なんでかな…)
〇〇:(隣にいる美空が、凄く可愛…)
〇〇:(ああ、ダメだろ!〇〇。)
〇〇:(この前、彩ちゃんとキスしておいて…)
1人葛藤していた。
〇〇と手を繋ぎながら歩いていた美空は、
美空:(〇〇って、普段素っ気ないけど…)
美空:(こう、たまに優しいから好き。)
と、一人で〇〇に好意を抱いていた。が、
美空:(でも、あの子のこと好きなのかな…〇〇)
美空:(だって、すごく可愛いし…)
美空:(私だって、あの子好きになっちゃいそ…)
美空:(あー、ダメダメ!こんなこと考えてちゃ!)
〇〇同様、葛藤に苦しんでいた。
4話 完 (5話に続く)
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