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8話「出会い」

ー前回までのあらすじー

人間を襲うオルフェノクと戦う、ファイズに変身する飛鳥と、カイザに変身する瑞穂。

啓太郎を襲ったオルフェノクを倒し菊池クリーニング屋に戻ろとしていた飛鳥は帰りの途中、さくらと瑞穂が立ち話をしているのを目撃する。


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さくら:すいません、こんなところに呼び出して…
父さんのことで聞きたいことがあるんです。

瑞穂:私も丁度さくらちゃんに会ってその話をしようと思っていたんだ。

さくら:土生さんも、あのベルトを父さんから受け取ったって言ってましたよね。もしかして、土生さんも。

瑞穂:そう、さくらちゃんと同じように私もお父さんに引き取られた。両親と妹を亡くした私に、お父さんは優しくしてくれた。


さくら:そう、だったんですね…

瑞穂:父さんのことなんだけど、私父さんに連絡しようとしたけど、全然取れないの。それで、スマート・ブレインに直接行って面会しようとしたけど断られて…

さくら:土生さんも…やっぱり、父さんに何かあったんですね。

瑞穂:これは、あくまで憶測なんだけど…父さんは、スマートブレインには居ない…

さくら:!?

瑞穂:社長が面会を断っているって向こうは言ったけど、何かスマートブレインは、父さんに起きたことを隠していると思う。だから、そう誤魔化しているんじゃないかって。

さくら:だから、土生さんは昨日あんなことを…

「スマートブレインには気をつけて」

瑞穂:うん。


さくらと瑞穂のやり取りを遠くから見ていた飛鳥は、ヘルメットを被りバイクのエンジンをかけると、その場から去っていく。


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?:お、俺には無理だ…

真昼の都会の路地裏を、一人ボロボロの服を着てフラつく足取りで移動する男がいた。

スマ:あらあら、こんな汚いところでどうしたんですか?あなたもオルフェノクなんですから、もっと人を襲って仲間を増やさないとダメですって言いましたよね?

?:無理だ、俺なんかに人を襲うのは!!

スマ:でも〜、そんなこと言っていると貴方は裏切り者となりますよ?そ〜したら、ラッキークローバーって言う怖い人たちが貴方を処刑しに来ちゃいま〜す。

?:!?

スマ:だから、思い切って人間を襲いましょう。じゃ、ば〜〜い♪

スマート。レディーが去り、一人取り残された男は壁に寄りかかり、そのまま膝が崩れ、地面に尻もちをつく。

?:(お、俺は…どうすれば…)


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ー菊池クリーニング屋ー

店の入り口の戸が開けられ、帰ってきた飛鳥が入ってきた。

啓太郎:あ、飛鳥さん!どこ行ってたんですか?
てっきり先に帰っていたのかと…

飛鳥:ちょっと、寄り道を…ね。

飛鳥は持っていたヘルメットをソファーに置くと、啓太郎の方を向く。



飛鳥:ねぇ、啓太郎くんはさくとどれくらいの付き合いなの?

啓太郎:あぁ、えんちゃんとは中学生の時にクラスが一緒になって、その時からの付き合いっていうか…

飛鳥:さくに、お父さんのこととか聞いたことある?

啓太郎:それが…えんちゃん、あまり自分の過去のことは話さなくて。だから僕驚いているんです、えんちゃんがお父さんのことを僕より先に飛鳥さんに話していたのが。やっぱり、僕じゃ頼りなかったのかな…


啓太郎が少し寂しそうな表情になるのを見て、飛鳥はなんて声を掛けたら良いか分からず、黙ってしまった。

啓太郎:あ、ごめん飛鳥さん!気にさせるようなこと言って。ゆっくり休んでください…

飛鳥:あ、うん…

飛鳥が二階に上がり部屋に戻ると、店の呼び鈴が鳴らされた。

啓太郎:は〜い。

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啓太郎が急いで店のレジに向かうと、クリーニングに出す服を入れた紙袋を持って待っていた美月がレジ前に立っていた。

啓太郎:お待たせしま…

美月の姿を見た瞬間、啓太郎の中で時が止まった。

美月:?どうか、しました…?

啓太郎:…


口を開けたまま、目を見開き微動だにしない啓太郎。

美月:あのぉおお!!

啓太郎:あ!ご、ごめんなさい!何かぼーっとしちゃって…クリーニングですよね?

美月:はい、お願いします。


啓太郎が美月から紙袋を受け取り、服の枚数と種類をチェックし始める。

美月:このお店って、一人でやられているんですか?

啓太郎:まぁ、そんな感じです。最近一人アルバイトを雇ったんですが、怪我しちゃったみたいで今日は休んでもらっています。

美月:大変ですね。

啓太郎:そんなことはないですよ。僕、昔から洗濯物を真っ白にするのが好きで、それでクリーニング屋になったんです。毎日、いろんなお客さんが来てクリーニングを頼まれて、それで綺麗になったのを渡すとすごく喜んでもらえるのが嬉しいんです。僕、夢が一つあって…

美月:夢…ですか?



啓太郎:世界中の洗濯物を真っ白にして皆んなを幸せにすることです。

美月:世界中の洗濯物を真っ白にして皆んなを幸せに…

啓太郎:って、すいません。勝手に自分語りをしちゃって…

美月:いえ、素敵な夢ですね。

そう言うと美月が啓太郎に微笑み、それを見た啓太郎も貰い笑みを見せた。


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ー櫻丘研究所ー

麻衣:ここが、菅井友香のいる研究所…

上司から渡された名刺に書かれた住所を頼りに、麻衣が研究所に辿り着き正門に近づくと、見張りをしていたガードマンが麻衣の進行を止めた。

ガードマン:止まれ、ここから先は関係者以外立ち入り禁止だ。

麻衣:こういう者なんですが。

麻衣が警察手帳を見せると、

ガードマン:警察!?な、なんの用ですか?

麻衣:添野浩二警部の紹介で、ここの研究者の菅井友香に会わせて貰えますか?

そして、添野の名刺と菅井の名刺ガードマンに渡した。


〜数分後〜


ガードマン:どうぞ、こちらへ。

正門を見張っていたガードマンの一人が、敷地内の別のガードマンに麻衣の案内を託し、麻衣はそのガードマンについていく。


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ー橋ー

さくらと別れた瑞穂は、一人サイドバッシャーに寄りかかっていた。

〜數十分前〜

瑞穂:そういえば、さくらちゃん。あの、齋藤飛鳥って人、どんな人なのかな?

さくら:飛鳥さんは、ちょっと口が悪い時があるけど、でもすっごく優しいんです。時々、腕の中に誘ってあっためてくれたり、バイクの後ろに乗せて自分を甘えさせてくれたり…

瑞穂:良い人、なんだね。

さくら:はい。



瑞穂:…

さくらとの会話を振り返っていた瑞穂は歯を食いしばり、拳を強く握りしめていた。


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〜数日後〜

ー菊池クリーニング屋ー

さくら:啓太郎、さっきから変じゃないですか?

飛鳥:うん、間違いない…

飛鳥とさくらは、一人ニヤけ続けている啓太郎を心配しながら、朝食を口にしていた。

啓太郎:どうしたの、二人でそんな見つめてきて?

さくら:いや、啓太郎こそずっとなんでニヤついてるの?

啓太郎:ニヤついてなんかないよ笑。

飛鳥:もしかして、客の中に好きな人が出来たとか?

啓太郎:ぶほぉぉ!!!!


飛鳥に聞かれた瞬間、啓太郎は飲んでいた味噌汁を吹き出し、噎せていた。

さくら:図星…みたいですね…

飛鳥:冗談で言ったつもりなんだけどなぁ〜。

さくら:あ、そうだ。この前、土生さんに会ってきたんです。

飛鳥:あぁ、あの確か…カイザとかに変身した人、だよね?

さくら:はい、どうやら土生さんもお父さんに連絡しようとしてダメだったみたいで、土生さんが言うにはお父さんはスマートブレインにはいないって…

飛鳥:!?

さくら:だから、面会もさせないんじゃないかって…あくまで憶測だけど、多分スマートブレインはお父さんのことを何か隠しているって、土生さん言ってました。

土生の話を聞いた飛鳥は、さくらの父が社長のはずのスマートブレインに疑心を抱く。


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?:きょ、今日こそ…

スマートレディーから警告を受けていたオルフェノクの男は、ターゲットとなりそうな人間を見つけた。

?:ゆ、許せ…

男は意を決してオルフェノクの姿に変身し、車のバンパーを開けて修理していた人間を背後から襲った。


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ー櫻丘研究所ー

友香:瑞穂には、白石さんに会ったことは言わないでね。あの子、相当警察のこと恨んでいるから。

隊員:わかりました…

友香:(でも、滅多にいない熱血な人だったな。もしかしたら、白石さんなら…)

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(バイクを停車させる音)

飛鳥:え〜っと、次はこの人っと…

啓太郎から頼まれた配達をしていた飛鳥は、道端にバイクを停め、次の配達先の住所と名前を確認していた。その時、飛鳥の耳に悲鳴が入ってきた。

飛鳥:!?

バイクを悲鳴が聞こえた方向へ向かわせると、一体のオルフェノクによって背後から触手を突き刺されたランニング中の男女が、その場で灰となり崩れてしまう。


オ:へへ、なんだ。一度やっちまえば、何も怖がることなんてないじゃないか。

飛鳥:オルフェノク!


ファイズドライバーを装着した飛鳥はファイズフォンに変身するための番号を入力し、ドライバーにセットした。

「5 5 5  Standing by」

飛鳥:変身!

「Complete」


オ:!?

飛鳥:たぁああ。

ファイズに変身した飛鳥は、オルフェノクの不意をついて顔面にパンチを1発叩き込む。


オ:ぐぉ…

横に身体を転がされたオルフェノクは体勢を立て直して反撃を試みるも、飛鳥からの膝蹴りを腹部に受け狼狽える。

その隙に、飛鳥はオルフェノクに続け様にフックを浴びせ左脚のキックをお見舞しオルフェノクを吹き飛ばすと、オルフェノクの身体が建物のコンクリートを破壊した。



オ:っ…ここでやられてたまるか、やっと俺は自由になれるのに!

コンクリートの瓦礫から身を乗り出したオルフェノクは、パンチをファイズに向けて乱発する。

が、全て飛鳥によって軽くあしらわれ、飛鳥からカウンターのキックをもらい、再び地面に叩きつけられた。


オ:ふぁああああ!

飛鳥:!

やけくそになったオルフェノクが飛び上がりこちらに向かって攻撃を仕掛けようとしているのを確認した飛鳥は、ファイズショットを右拳に装着しメモリをセットすると、ファイズフォンの「ENTERキー」を押す。


「Exceed Charge」

飛鳥:はぁぁ!

ジャンプ攻撃を繰り出そうとしたオルフェノクの胴体に、飛鳥はエネルギーが装填されたファイズショットの一撃を決めた。

オ:くそ…結局…

ファイズの必殺技「グランインパクト」を食らったオルフェノクは、空中で青い炎をあげて爆発し消滅した。


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あやめ:!

夕食の食材を買い出し、帰りの途中だったあやめの目に、オルフェノクを撃破するファイズの姿が映る。

あやめ:アイツが…

「ファイズもオルフェノクたちを無作為に襲う怖い人です」

スマートレディーからの言葉を思い出したあやめは、怒りを顕にする。

あやめ:許さない…

ホースオルフェノクに変身したあやめが、ファイズに変身している飛鳥の背後を、生成した魔剣で斬りつける。

あやめ:ふぁぁぁ!!!

飛鳥:!?


あやめからの不意打ちを喰らった飛鳥は、背中に火花を散らし地面に転がされる。

飛鳥:がはぁ…

8話 完


















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