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「職場で怖がられる彼女は僕といる時は可愛くて仕方ないんです」
ー日向商事ー
陽菜:水野さん、これ確認お願いします!
〇〇:おお、良いよ。どれどれ?
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陽菜:一応、自分でも変なところ無いかは確認したんですけど…
〇〇:うん大丈夫だと思う。
陽菜:良かったです!ありがとうございます。
仕事の合間、こうして課長の僕は後輩たちの作成した資料の確認をしていた。
ただ、本当はしなくても良いことで、本来なら僕を通さず、部長に見せれば良いのだが…
〇〇:じゃあ、あとで部長戻って来たら忘れず出してね?
陽菜:うぅ…やっぱり不安です。また齊藤部長に叱られるかも…
〇〇:大丈夫だって!ちゃんと分かりやすく要点は纏められているし、見やすい資料になっているよ。
陽菜:それでも…
〇〇:何かあったら、僕が弁明するから平気だよ。
陽菜:うっ、そう言って貰えるなら…頑張ります!
〇〇:うん。
そう、異常にここの部長は恐れられているのだ。
怒鳴り散らすとかは無いし、理不尽なことを言う訳ではない。
ただ資料にミスがあると、
京子:この前も同じことしてたよね?
だったり、
京子:流石にこれはないよ。
と少し言い方がキツい。
あと普段から社内で笑うことがなく、人を寄せ付けない雰囲気が部長にはあって、それが後輩たちとの距離を生んでいたのだ。
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〇〇:ふー、ちょっと休憩するか。
仕事がひと段落着いたところで、僕は缶コーヒーを買いに行った。
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京子:あ、〇〇。
〇〇:おお、お疲れ京子。
今会話したのが、齊藤京子。
そして、
後輩たちに恐れられている部長その人だ。
〇〇:会議、どうだった?
京子:あぁ、この前皆んなで考えた案、採用してくれるってさ。
〇〇:おーッ、良かった!
京子:うん。
〇〇:あ〜、今コーヒー買いに行くけど京子もいる?
京子:じゃあ微糖のお願い。
〇〇:おっけー。
こんな風に普通に喋っていると何故?と思われるかもしれないけど、実は僕と京子は付き合っている。
周りには言ってなくて、だから職場の人はほとんど知らない。
まぁ、1人を除いては…
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自販機に辿り着くと、違う部署の潮さんがちょうど缶のカフェラテを買っていた。
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潮:あっ、お疲れ〜〇〇くん。
〇〇:潮さん、お疲れ様です。
潮さんと挨拶を交わし、僕と京子がそれぞれ飲むコーヒーを買った。
潮:ん?それって京子の?
潮さんが僕が右手に持っていた微糖の方を指差す。
〇〇:そうです。
潮:ってことは、京子嬉しいことあるんだ〜
そう、京子はいつもは僕と同じように無糖のコーヒーを飲むが、機嫌が良いときは微糖にするのだ。
潮:もしかして、デートとか?良いな〜
僕は京子がてっきり、会議で案が通ったことを喜んでいたのかと思ったが、実は明後日に京子とデートの約束を本当にしていたのだ。
そのことを潮さんに言われて、漸く思い出した。
〇〇:(うわぁ!まずい…なんてことだ…彼氏失格だ…)
なんて思いながら、
〇〇:き、きっとそうです。明後日に京子と約束しているんで。
潮:やっぱりそうだと思った♪
一瞬、動揺しているのがバレバレな言動だったが、潮さんには気付かれず、そのまま互いに挨拶をして別れた。
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それから、定時から2時間ほど経て漸く今日の仕事を全て終えて京子とオフィスの戸締まりをした。
〇〇:よし、帰るか。
京子:うん。
〇〇:明後日、楽しみだね?
忘れないうちに、デートのことに触れた。
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京子:そうだね!
普段職場では見せない満面の笑みを見せてくれた。
駅まで一緒に歩いて、駅で別れる時も笑顔で手を振ってくれた。
〇〇:(凄く楽しみにしててくれたんだ。)
そう思うと嬉しかった。
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そして、デート当日。
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京子:〇〇〜!
〇〇:京子!
久々のデートでお互いウキウキだった。
そして、今日の京子は一段と可愛さが増していた。
〇〇:今日も、髪型も服も可愛いよ。
京子:ありがとう!
クシャっとした京子の笑みが、ドキっとさせてきた。
〇〇:久々だよね、2人で出かけるの。
京子:うん、だからすっごく楽しみだったんだよ!
そう言うと隣に来て僕の手を握り締め、肩に顔を寄せてきた。
京子:良い匂いする〜〇〇から。
〇〇:そう?ありがと。
僕と京子は、最初に脱出ゲームのイベント会場に向かった。
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会場に着くと、会場の看板に、
「脱出率0.001パーセント 難攻不落のステージ」
と書かれていた。
京子:ここ、マジで難しいんだって!今まで誰も脱出できたことないらしいよ。
〇〇:へ〜、じゃあ僕たちが最初の脱出者になりたいね。
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京子:もっ、ちろん、そのつもりだよ!!
両手をグーにして、やる気全開だとアピールして来た。
そして、脱出ゲームの列に並び、遂に僕たちの番が来ると、
京子:やばい…緊張してきた。
僕はソッと京子の手を握って、
〇〇:一緒に頑張ろ?
と励ました。
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京子:うん!
係員:それでは、脱出目指して頑張ってくださいね!
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脱出ゲーム中、謎解きのところで選択問題があった。
京子:あ、分かった!これだ!
〇〇:ほんとに?
京子:うん、だって〇〇〇〇で…
と自慢の謎解き力を披露して、京子の選んだ方に選択すると、正解のサウンドが鳴る。
〇〇:すごい、京子!よく分かったね。
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京子:任せてよ!
しかし、時に京子でも分からない問題があると、
京子:うわぁ〜、これ無理かも!!!
〇〇:ん〜、じゃあこっちだ!!
と山勘で選択した。
「よく分かったな。」
とゲーム内のキャラクターによる、正解の時の音声が流れて来た。
京子:すご〜〜〜い!!!!
〇〇:よっしゃああああ!!!!
そんなこんなしていると、遂に出口に辿り着いた。
係員:おめでとうございます!!!お二人が初の脱出者です!!!!
〇〇・京子:やったぁああああ!!!!
二人でハイタッチをかわし、トロフィーと賞状と景品のぬいぐるみを貰った。
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京子:すっごい嬉しい!!〇〇、ありがと〜!!
〇〇:いや俺なんか勘でしかやってないよ。
冷静に思ったけど、凄くないか???
京子:それで正解引き当ててるの、むしろエグいから笑。
とちゃんとツッコまれた。
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それからランチを食べたあと、美術館に向かった。
西洋の絵画や彫刻がたくさん展示されていて、見ていると過去にタイムスリップしたかのような気分になった。
京子:この絵、綺麗…
〇〇:綺麗だね。
二人で手を繋ぎながら、時々京子の頰が僕の腕に触れながら、芸術に触れる優雅な時を共に過ごしていた。
美術館の外に出ると、美術館が誕生して100周年記念の銅像が飾られていた。
その銅像の説明には、
「ここで一緒に写真を撮った人と、永遠に結ばれます」
と書かれていた。
永遠にか…なんて一人考えていたら、
京子:〇〇、撮ろうよ。
と京子から誘って来た。
〇〇:うん。
美術館のスタッフさんに写真を撮ってもらった。
僕は京子とそれぞれハートの半分の形を手で作って、それを互いに合わせた。
撮ってもらった写真を見ると、
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京子:なんか、恥ずかしいね笑
〇〇:うん笑
顔を見合わせて、お互いに顔を赤らめていた。
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そのあと、SNSで流行っていたパンケーキのお店に入った。
京子:うわ、おっきいい!!
僕たちのテーブルに、5段積まれたパンケーキの上にクリームが乗ったのが運ばれてきたのだ。
〇〇:うわ、すごいね!
二人で分けっこしてパンケーキを食べていた。
〇〇:美味しいね。
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京子:うん、すっごく美味しい!!
〇〇:あっ。
京子の鼻についていたクリームを取ってあげた。
京子:え?
〇〇:ついてたよ、鼻に。
京子:ごめん笑。
照れ臭そうにしていた。
〇〇:もうドジっ子さんだな。
京子:ドジっ子じゃないも〜んだ!
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そして、そろそろ辺りが暗くなりかけた時、
京子:ね〜、〇〇?
〇〇:どうしたの?
京子:ちょっと相談に乗って欲しいことがあるの。
〇〇:相談?どこかで座る?
京子:ううん、良い。歩きながらで。
それから、京子が相談の内容を話し出した。
京子:私って怖いのかな…普段会社で…?
〇〇:気にしてたの?
京子:うん…なんか私はただ真面目に仕事がしたいだけなんだけど、でもみんなが私に対して怖いって思っていたら良くないのかなって…
〇〇:でも京子は部長だし、多少は厳しいのは仕方ないと思うな。それだけ責任抱えているし。
京子:でも、もうすこし皆んなに優しく出来たら、もっと働きやすくて良いのかなって思ってね。
〇〇:京子って、本当に真面目だよね。一緒に働いてるから分かるけど、京子のやってる事凄く大変だし、誰でも出来るわけじゃない。それなのに、みんなのことも考えて。そんな京子も、僕は好きだよ。
京子:もう、褒めてくれなくて良いの笑。
〇〇:あはは、ごめん!そうだな〜、時々皆んなにもありがとうって言ってみたら?
京子:ありがとうって?
〇〇:無理しない範囲で良いからさ、他の社員の子たちが作った書類とかで良いのがあった時とかにね。
京子:そっか…分かった。やってみる!
すこし前まで落ち込んでいた京子の表情に再び笑顔が戻って、僕は安心した。
京子:あ〜、なんか歌いたくなって来たな〜
〇〇:カラオケ、行く?
京子:うん!
デートの締めにカラオケはちょっと変わっているかもしれないが、テンション上がって楽しくなれるから良いかなと思った。それに、京子の歌声が聞きたかったから。
京子:〇〇。
〇〇:何、京子?
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京子:大好きだよ!
〇〇:僕も、大好き!
fin.
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