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「クレイジーな彼女の夏大作戦で〇にかけました」


夕方になり、空が赤く染められていた。俺は、浴衣を着た奈於と縁側で涼んでいた。

奈於:ねぇ、〇〇?

〇〇:どした?そんな顔して?

奈於:花火したい。

〇〇:花火?ん〜っと、家にないから買ってくる…

奈於:いや、普通のじゃダメ。

〇〇:え?普通じゃダメって…まさか家で出来る打ち上げ花火とかじゃないとダメ?

奈於:ん〜、それも良いけど…あっ、そうだ!

奈於は縁側から家の奥に移動すると、誰かと電話をし始めた。


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少しして、電話が終わった奈於がこっちに戻ってきた。

奈於:〇〇。今から車出してくれる?

〇〇:え、どこ行くの?

奈於:今から、おじいちゃんが用意している場所に。

〇〇:へ??


車に乗り込み、奈於が目的地にナビをセットした。

〇〇:ん?乃木丘公園?

奈於:そ。そこに行ったら、おじいちゃんが凄いの用意しているから。

そう言う奈於は、ものすごく楽しみな感じに笑っていた。


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車で1時間くらい運転すると、目的地の乃木丘公園に着いた。

奈於の祖父:おお。待っとったぞ〜、奈於〜!

奈於:ヤッホ〜、おじいちゃあ〜ん!!

〇〇:(え…まさか…)

見ると、花火師がセットするかのような花火発射台が置いてあった。



奈於の祖父:言われとったの、用意しといたぞー。奈於や〜!

奈於:ありがと〜!

奈於の祖父:やあ、奈於の彼氏さんや。とびっきりのを用意しといたからのう。

〇〇:なんか、すいません。こんな凄いの、用意してもらって。


奈於:ほら、〇〇人混みの中で花火見るの嫌だって言ってたじゃん。


 最初は、「こんなにしなくても…」とか思っていたが、奈於なりに俺に気を遣ってくれたのかと思うと、なんだか申し訳なくて、でも嬉しかった。

〇〇:ありがとう、奈於。


奈於:ふふ。あ、始まるみたいだよ。

奈於の祖父:お二人や〜。心の準備は出来とるかいなあ〜?

〇〇・奈於:は〜い!!


ヒュルルル〜〜〜〜  ドォーーーーーン!!!


見事な花火が1発、空に打ち上がった。


それから何発もの、色鮮やかな花火が上がり、空は幻想的な景色に変わっていた。


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全ての花火が終わったと思った俺は、奈於の祖父にお礼を言った。

〇〇:凄く綺麗でした!!ありがとうございました!

奈於の祖父:おぉ、何を言っておる?まだ、お楽しみがあるんじゃよ!

〇〇:はい??

すると、突然黒子のような人たちが現れ、俺と奈於の体に巨大なロケット花火を括り付けた。


〇〇:う、嘘ですよね???

奈於:おじいちゃん、準備できたよ〜

奈於の祖父:ほいよ〜、点火するぞ〜


一瞬、夢でも見ているかと思い頰を抓った。

そして、これが紛れもなく現実だと思い知らされた。

奈於:へへ、楽しみだね?

〇〇:いや、おかしいからぁあああ!!!!今すぐ、火を消してぇええええ!!!

奈於の祖父:はは、安心せい。花火が爆発する前に、お前さんたちはロケット花火から切り離されて、安全な位置でパラシュートが開くからのう。


そんな、笑顔で冷静に言わないでください…おじいさま…


シュ〜〜〜〜〜  バァーーーン!!!!!


〇〇:うぉおおおおおおお!!!!!????

奈於:いよっほおおおおおお!!!!!!!

悲鳴をあげる俺とは対照的に、奈於は歓喜の叫び声をあげていた。

奈於の祖父:はっはぁー、特等席から花火が見れるぞー!

〇〇:(そんな特等席、いらないでぇええす…)


ゴォオオオオ!!!!!!!

上昇して空気との摩擦で、激しい音が耳に響く。

〇〇:(ああ、俺…ここでさよならだ…)

ゴォオオオオ!!!!!!!

〇〇:(短い人生でした…)

ゴォオオオオ!!!!!!!

〇〇:(もっと、遊んでおけば良かったぁあああ!!!!)


そこから、俺の意識は飛んだ…


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〇〇:…

目がさめると、どうやら地上に無事降り立っていたらしかった。

奈於:あ〜、良かった。〇〇、失神してたんだよ?

そりゃそうだ!!!

奈於の祖父:はっははは!!どうじゃ、凄いじゃろ?


奈於:うん、凄く楽しかったよ!!!

奈於の祖父:〇〇君はどうじゃった?

〇〇:もう…勘弁してください…


fin.






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