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15話「蘇った記憶」


センチピードオルフェノクに変身した蓮加が鞭を生成しカイザに変身した瑞穂に向かって鞭を振るうも、瑞穂は鞭を全て避け隙ができた蓮加にジャブを叩き込むと、キックで蓮加の腹部を蹴飛ばす。

蓮加と距離ができた瑞穂がカイザブレイガンを手に取ろうとした瞬間、カイザブレイガンを瑞穂から奪い取ろうと蓮加は鞭を飛ばす。

瑞穂:!

鞭は瑞穂の左腕に巻きついていた。その鞭が巻きついた左腕を瑞穂は後方に勢いよく引くと、鞭を持っていた蓮加が宙に浮かされながら瑞穂の方へ引き寄せられる。

蓮加:うわぁ!?

引き寄せられた蓮加の顔面に瑞穂が右腕でパンチを当てると、蓮加は地面に打ち付けられ顔を抑えていた。




お茶を終えた啓太郎と美月が歩いていると、騒ぎが聞こえた。その騒ぎが聞こえた方へ二人が向かうと、カイザがセンチピードオルフェノクを圧倒しているのが見えた。

啓太郎:お、オルフェノク!それに、瑞穂さん!

啓太郎は瞬時に瑞穂がオルフェノクと戦っていると理解しその様子を見守っていたが、美月は口を開けて目が動揺していた。

美月:(あ、あれは…)

カイザの姿を見た美月の脳裏に、以前別のオルフェノクに襲撃された時に現れたカイザに倒されそうになった光景がよぎる。


瑞穂:はぁ!

左腕に巻きついていた鞭を瑞穂が引き千切って腕から剥がすと、カイザブレイガンのソケット部にメモリを装填し黄色い刀身を出現させる。

カイザからパンチを顔面にもらった蓮加が起き上がったところを、瑞穂はダッシュして近づきカイザブレイガンの刃で蓮加の正面を連続で斬りつける。

蓮加:がはぁ!?

苦しむ蓮加をよそに、瑞穂はカイザフォンのENTERボタンを押す。

「Exceed Charge」

カイザブレイガンの刀身にエネルギーが蓄積され、刀身が黄色い光を放つ。

瑞穂:すぅああ!!!!

瑞穂がカイザブレイガンを横に薙ぎ払うように振ると、カイザブレイガンの刀身は残像を残しながら蓮加の胸部と腹部に深い傷を負わせた。

蓮加:うぐ…がっ…

蓮加は呻き声を上げ、身体中から壊れた機械から発生するような電気が漏れ、傷を抑えてオルフェノクの姿のまま逃走した。




啓太郎:瑞穂さん。

カイザの変身を解除した瑞穂のもとに、啓太郎と美月が駆けつける。


瑞穂:啓太郎くん。

啓太郎:あのオルフェノクは一体…

瑞穂:ああ、啓太郎くんたちを襲おうとしていてね。追っ払っといたよ。

啓太郎:僕たちを襲おうと…助けてくれてありがとうございます。

瑞穂:そちらは?

啓太郎:ああ、山下美月さん。僕の、彼女…っていうか。

啓太郎に紹介された美月は、頭の中で瑞穂に倒されそうになった光景がずっと浮かび、怯えた表情のままだった。

美月:……

啓太郎:美月さん、大丈夫??

美月:あっ。ええ…

我に返った美月は、表情を無理やり明るくした。

美月:あんな怪物見るの始めてで、それで怖くなっちゃって。もう、大丈夫です…

瑞穂:本当に?無理しないで、あれだったら私が家まで…

美月:ごめんなさい、失礼します!

美月はそのまま逃げるように、啓太郎と瑞穂のもとから去っていった。

啓太郎:美月さん!行っちゃった…

瑞穂:今はそっとしておこう。きっと彼女、相当怖かったんだよ。




マンティスオルフェノクと戦闘していたあやめは、魔剣でオルフェノクを斬りつけキックで蹴飛ばした。


オ:ぐほぉ…

壁に打ち付けられたオルフェノクに向かってあやめは高速で近づき、オルフェノクの心臓部に魔剣を突き刺す。


あやめ:はぁああ!

魔剣に突き刺された箇所から青い炎が上がると、マンティスオルフェノクの身体が灰化し始める。

オ:うぉぉ…

力なく声を上げながらマンティスオルフェノクは消滅した。


(爆発音)


背後から奇襲を受けたあやめが吹き飛ばされる。

あやめ:うぅ…!?

美波:許せないわね、私に襲いかかるだけじゃなく仲間のオルフェノクまで手にかけるなんて。

あやめ:あ、あなたは…美波:ここで○んでもらうわ、筒井あやめちゃん。


ホースオルフェノクの姿のあやめを冷たい目で見つめながら、美波はロブスターオルフェノクへと変身する。


あやめ:はぁあああ!!

咆哮をあげながらあやめはダッシュして美波に近づき、魔剣を振り下ろす。

美波:ふん。

あやめ:!?

渾身の力を込めて振り下ろした筈の魔剣は、ロブスターオルフェノクの両腕の頑丈なグローブで軽々と止められた。美波が魔剣ごとあやめの右腕を内側から抱えて背負い投げ飛ばす。

あやめ:うぐ…

地面に転がされたあやめは魔剣を手放してしまい、美波に魔剣を奪われてしまう。

美波:はぁああ!!!

体勢を立て直したばかりのあやめを、美波は容赦無く連続で斬りつけた。
あやめの身体から火花が散り、あやめの叫び声が辺りに響く。




ー菊池クリーニングー


ソファーの上で掛け布団を被り眠っていたさくら。

さくら:うぅ…うぅ…

そんなさくらが突然、うなされて声を上げだす。


「あはは」
「ちょっとふざけないで」
「みんなで写真撮ろうよ」
「ねぇ、あれ何?」
「きゃああああ」

さくらの頭の中では、顔がぼやけた人たちが会話をしていたところにオルフェノクが襲いかかる光景が見えていた。





さくらを菊池クリーニングに置いて、飛鳥はオートバジンに乗ってあやめの救援に向かおうとしていた。

そんな飛鳥の目線の先に、ロブスターオルフェノクにサーベルで滅多撃ちにされるホースオルフェノクの姿があった。

飛鳥:あやめちゃん!


あやめが吹き飛び、ホースオルフェノクの変身が解除され、地面にうつ伏せになって倒れ込んでしまう。


急ブレーキをかけ、飛鳥はファイズドライバーを装着する。

「5 5 5  Standing by」

飛鳥:変身!

「Complete」


ファイズに変身した飛鳥はオートバジンの左ハンドルにメモリを装填し、ハンドルを抜き取り「ファイズエッジ」を取り出す。

「Ready」

飛鳥:てぁあああ!

高速で接近してきた飛鳥に不意を突かれ、美波は肩にファイズエッジの斬撃を食らう。

美波:っ、ファイズ。

一瞬怯んだ美波だが、すぐに飛鳥の方を向きファイズエッジをサーベルで受け止める。

飛鳥:うぅ!!

美波:うぅ!!

互いに武器の刃部分に手を添え競合う美波と飛鳥だったが、飛鳥が力でサーベルを押しのけると、美波の腹部を右足で蹴飛ばした。


飛鳥はファイズアクセルに装備されていたメモリを外し、ファイズフォンにセットする。


「Reformation」


ファイズアクセルフォームへと変化した飛鳥がファイズアクセルのスイッチを押す。

「Start Up」

ファイズが10秒間だけ通常の1000倍の速度で行動が可能になる「アクセルモード」が発動され、一瞬にしてファイズの姿が見えなくなる。

美波:消えた…!?

突然、身体に衝撃をいくつも受けた美波は呻き声をあげ、体勢が崩れる。

美波:(ち、違う…動きがとてつもなく速い!)

高速で移動しながら飛鳥は美波にファイズエッジで何度も斬りつけ、美波の行動を制限し追い込む。


「Exceed Charge」

ファイズエッジの刀身に纏うフォトンエネルギーが増大され、ファイズエッジが赤い光を放つ。

飛鳥:たぁああああ!!!!

ファイズエッジの必殺技「スパークルカット」を美波は頑丈なグローブを構えて防ごうとした。

美波:ぐわぁああああ!!!


「3 2 1  TIME OUT」


ファイズアクセルモードが解除されファイズが元の姿に戻ると、スパークルカットを受けたロブスターオルフェノクのグローブが破壊され粉々に砕け散った。

美波:ちっ…うぐ…

変身を解いた美波は、両腕を痛そうにしながら逃走する。


飛鳥:あやめちゃん!!!

ファイズの変身を解除した飛鳥は倒れたあやめのもとに駆けつける。

あやめ:飛鳥…さん…

傷だらけのあやめだったが、なんとか会話はできる様子だった。

あやめに肩を貸し、飛鳥はオートバジンのところまで運ぶ。




ガチャンッ

啓太郎:ただいま〜って、えんちゃん!?

啓太郎が瑞穂とともに菊池クリーニングに戻ってくると、ソファーで寝ていたさくらが苦しんでいるのが見えたので駆けつけた。

瑞穂:凄い汗…さくらちゃん、大丈夫!?

啓太郎:えんちゃん!?

さくらの手をとった瑞穂と啓太郎に声を掛けられたさくらだが、目を閉じながら苦しそうにつぶやいていた。

さくら:いや…来ないで…



「逃げろぉおおお」
「いやぁああああ」
「さくらちゃん!」
「みず姉!!」


うなされ続けたさくらの頭の中では、さくらの周りにいた人たちが次々とオルフェノクに襲われ、瑞穂がさくらを庇ってオルフェノクに背後から刺され血を流して倒れていた。

さくら:みず姉!!!!!

上半身がソファーから勢いよく上がり、さくらは叫んだ。

さくら:はぁ〜、はぁ〜

さくらは息を切らして汗をかいていた。

瑞穂:さくらちゃん…思い出したの?

瑞穂に声をかけられたさくらは瑞穂の方を向くと、


さくら:よ、良かったぁ…

瑞穂に抱きつく。

さくら:怖かったよ…みず姉。


瑞穂:もう大丈夫だよ、さくらちゃん。

涙をこぼすさくらの頭を、瑞穂は優しく撫でた。




美月:はぁ…はぁ…

自宅のタワーマンションまで走ってきた美月は息切れを起こし、マンションの前で立ち尽くしていた。

(バイクの走行音)

そこへ、オートバジンに乗った飛鳥とあやめが現れた。

美月:!

飛鳥:山!

美月:飛鳥さん。あやめちゃん、どうしたの!?

怪我を負ったあやめを見て、美月が叫ぶ。

飛鳥:知り合いなの?

美月:ええ、というか一緒に住んでます。

飛鳥:なら良かった。部屋まであやめちゃんを運ぶの手伝って。

美月:はい。

美月もあやめに肩を貸し、飛鳥と美月であやめを美月たちの部屋まで運ぶ。




さくら:なんでみず姉のこと、私忘れてたんだろう…本当にごめんね、みず姉。

瑞穂:大丈夫だよ、さくらちゃん。

啓太郎:でも良かったね、二人が仲良かったこと思い出せて。

さくら:うん。小さい時から、みず姉は私のこと本当の妹みたいに可愛がってくれてたんだ。

瑞穂:そうだね。あの時から可愛いのは変わらないね、さくらちゃん。

さくら:ちょっとやめてよ、恥ずかしいから。

啓太郎:あ、そういや飛鳥さんは?

さくら:え、ああ…分からない。どこ行ったんだろう。

さくらがスマホを取り出し、飛鳥にメッセージを送る。




ー高層マンション 美月たちの部屋ー


ベッドの上で座るあやめを挟んで、飛鳥と美月は椅子に座っていた。


飛鳥:でもこんなにも世間は狭いものなのね。まさか、山とあやめちゃんが一緒にここに住んでいるとは…


美月:ええ、オルフェノクになった私たちはスマートブレインに拾われ、この部屋を新しい住居として用意してもらいました。

飛鳥:じゃあ、スマートブレインの社員ってほとんどオルフェノクなの?

美月:多分そうです。


あやめ:そして、これからスマートブレインに私たち狙われますね…私のせいで…

美月:そんなことない。私のせいでもあるよ!私が人間として生きたいって言うから、あやめちゃんを巻き込んで…

あやめ:いや、ラッキークローバーのメンバーに手を出した私のせいです…

飛鳥:そのラッキークローバーって何なの?

美月:ラッキークローバーの一員になれば、オルフェノクとしてスマートブレインの恩恵を受けながら何不自由無い生活を一生送れるんです。スマートブレインに所属するオルフェノクは皆、ラッキークローバーの一員になろうとしてます。

飛鳥:ラッキークローバーの一員になるためには、どうするの?

あやめ:私たちがラッキークローバーの一員になるための条件として、スマートブレインからファイズのベルトとカイザのベルトを取り返せと言われました。

美月:で、でも今はもうそんなことをする気は無いですよ?

飛鳥:ああ、うん。分かってるよ、二人のことは信じてるから。

あやめ:でも、これからもオルフェノクは飛鳥さんのことを襲ってくるはずです。ベルトを狙って。

美月:謝って済むことじゃ無いんですけど、本当に申し訳ないです。こんなことに巻き込んで。

飛鳥:そうね。とんでもないことに巻き込んでくれたね。

飛鳥に直接言われ、美月とあやめは申し訳なさそうな表情になった。

飛鳥:けど、今更逃げる気は無いよ。スマートブレインが敵だってことはこれでよく分かった。そして、ラッキークローバーも。

その時、飛鳥のスマホに通知がきた。

飛鳥:さくからか。

あやめ:遠藤さんは?

飛鳥:大丈夫だよ、今は菊池クリーニングにいる。啓太郎くんと土生さんもいるし。

あやめ:よかった…

飛鳥:じゃあ、帰るね。

飛鳥が上着を羽織り、玄関の方に向かう。



美月:飛鳥さん。

美月とあやめが玄関の方まで飛鳥を見送りに来た。

飛鳥:山、あやめちゃん。

飛鳥が振り返る。

飛鳥:私、二人の力になりたい。だから…

美月:飛鳥さん…

飛鳥:勝手にスマートブレインの奴らにやられたりしないでよね?

あやめ:飛鳥さん。

飛鳥は口角をあげ、そして背を向けて部屋から出て行く。




ーBAR CLOVERー


村上:随分と苛立ってますね、お二人とも。

蓮加:あったりまえじゃないですか!カイザのベルト奪えなかったし。

美波:私も、裏切り者の筒井あやめをやり損ねてね…

村上:やはり、北崎さんがいないと難しいですかね。それに、メンバーも一人欠けている。

美波:そうね、ここは維持張らず北崎くんに…


蓮加:やだ!私が倒すの!!

声を荒げて蓮加はバーから出て行く。

美波:ふふ、負けず嫌いな子。

村上:しかし、一つ気がついたことがあります。ファイズの装着者・齋藤飛鳥、カイザの装着者・土生瑞穂。この二人は人間でありながら、何故ベルトの力を使いこなせるのか。元々ベルトはオルフェノクのために作られたものです。


美波:ふ〜ん、そういうことね。どっちかがその変身出来る秘密を知っていると?

村上:はい。恐らく土生と呼ばれる方が知っているはずです。あの流星塾の卒業生の。




菊池クリーニングに戻った飛鳥はさくらと啓太郎、それに瑞穂とともに夕食をとることになった。

飛鳥:じゃあ、さくと土生さんは同じその流星塾の出身なの?


さくら:はい。父さんが身寄りのない子たちを
集めて面倒見てくれた所で、だから塾って言うより施設なんですけどね。

瑞穂:皆んな同じ境遇だったから、お互いに仲良くてね。誰かの里親が見つかると、毎回お別れのパーティーをしたよね。

啓太郎:へ〜、楽しそうですね。

さくら:でも寂しくなるから嫌だーって泣いた子もいたよ。

飛鳥:そうだったんだ。

さくら:そう言えば、いつだったか卒業した皆んなで集まったりしたんですよね。あの時…

笑顔だったさくらの表情が曇る。

飛鳥:どうした、さく?

さくら:あ、いいや…なんでもないです。




さくらと啓太郎と離れて、飛鳥と瑞穂は店のカウンターにいた。



飛鳥:話って?

瑞穂:さっきのことよ。さくらちゃんが記憶を取り戻したこと。

飛鳥:ああ、流星塾とかの話ね。

瑞穂:あの子、まだ全部を思い出した訳じゃない。

飛鳥:え?

瑞穂:流星塾を卒業した皆んなで集まった日、あの日のことを、さくらちゃんは全部思い出してない。

飛鳥:何があったの?


瑞穂:あの日…私たちは…


「逃げろぉおおお」
「いやぁああああ」
「さくらちゃん!」
「みず姉!!」


瑞穂の目は怒りに満ちていた。


15話 完

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