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7話「呪いのベルト」

ー前回までのあらすじー

 さくらの父から送られてきたファイズのベルトで変身し、人々を襲うオルフェノクと戦ってきた飛鳥は、さくらとともに啓太郎に頼まれた配達をしていた最中、オルフェノクに遭遇する。

 負傷をしながらも飛鳥はファイズに変身しオルフェノクと戦おうとするや、突如、ファイズに似たライダーが現れた。

 そのライダーの名は、カイザ。そして、その変身者は、土生瑞穂という…


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瑞穂:その左腕、見せて。

飛鳥:え、あぁ…

瑞穂に言われた飛鳥が服の左裾をめくると、傷が直線に切り刻まれており出血が止まらず腕に血の曲線が引かれていた。

瑞穂:結構酷い怪我だね。

そう言うと、瑞穂は身に付けていたウエストポーチから救急箱を取り出し、飛鳥の傷の手当てを始めた。



飛鳥:あ、痛っ…!

瑞穂が消毒液を染み込ませたガーゼを飛鳥の傷口に当てると、痛みで飛鳥は声をあげた。

瑞穂:ごめん、ちょっと我慢して。


傷口の処置を終えた瑞穂は、飛鳥の左腕に包帯を巻きテープで留めた。

瑞穂:応急処置は終わった。後は病院で診てもらって。

飛鳥:あ、ありがとう…

さくら:あの…土生さん。

瑞穂:久しぶりだね、さくらちゃん。

さくら:え?


初めて会ったとばかりに思っていた瑞穂から名前を呼ばれたさくらは驚いていた。

飛鳥:あなた、さくのこと…知っているの?

瑞穂:えぇ、昔よくさくらちゃんと遊んであげていたんだけどね。
覚えているかな、さくらちゃん?

さくら:ご、ごめんなさい…

瑞穂:あぁ、気にしないで。って言っても随分昔のことだし、さくらちゃんまだ小さかったから覚えていないよね笑。

笑っていた瑞穂だったが、その表情の裏に微かに哀愁が感じられた。


さくら:あの、土生さんがさっき変身したカイザのベルトって、どこで手に入れたんですか?

土生:うん、さくらちゃんのお父さんから送られてきたよ。多分、戦ってほしいんだと思うんだ、あのオルフェノクとね。

さくら:でも、私が送られてきたこのベルト、誰でも変身できるわけじゃないんです。現に私は無理でした。

土生:やっぱりそうなんだ。

飛鳥:やっぱりって、そのベルトも?

土生:うん、今のところ私だけが変身して何も起きなかった…

飛鳥:私だけ?

土生:あ、ごめん用事思い出したからこれで。また、二人に会うと思う。それから…

瑞穂は紙切れを一枚、さくらに渡した。

土生:これ、私の連絡先。あと、スマートブレインには気をつけて。

意味深な言葉を残して、瑞穂はバイクを走らせ去っていく。

さくら:あっ、ちょっと待って!

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ー警察署ー


麻衣:ど、どういうことですか!?

?:だから、この前一斉に失踪した女子高校生たちの件、あれは捜査が打ち切りになったんだよ。

麻衣:そんな、おかしいですよ!だって、昨日、女子高校生たちが失踪したあの体育館の壁を調べたら、不可解な傷がついていたのが見つかったって、これからって時に!?

?:そうは言ったって、上からストップがかけられたらどうしようもないんだよ、通常は。

納得のいかない白石は、資料を握りしめると机に叩きつけた。

?:待て、白石。

麻衣:止めたって無駄ですよ?

?:そうじゃない、話の続きがある。

麻衣:?

?:知っているか?一度死んだ人間が蘇って、人を襲うっていう都市伝説。



麻衣:何ですか、それ?

?:そうか、お前は知らないか。その蘇った奴に襲われた人間は、灰になってしまうっていうんだ。

麻衣:!?まさか…

?:そう、お前が前から気にしていた連続殺人事件の件だ。あれも、被害者はみんな灰になってしまっている。これは、あくまで憶測だが…

麻衣:その連続殺人犯が都市伝説の正体で、今回の女子高校生たちの失踪にも関わっているんじゃ…

?:そこで、お前にこれをやる。

白石の上司が渡したのは、一枚の名前の書かれた名刺だった。

麻衣:この人は…?

?:知り合いだ。彼女なら、何か知っているかもしれない。


上司の部屋を出た麻衣は、渡された名刺の名前を読み上げる。

麻衣:菅井友香…

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ー都内 市立病院ー

啓太郎:えんちゃんから聞きましたよ!大丈夫ですか、飛鳥さん!?

飛鳥:ちょっと声大きいよ!大丈夫、先生も安静にしてればすぐ治るって。

啓太郎:良かったぁぁ…

飛鳥:あ、ごめん。そういえば、配達の残り…

さくら:あ、それならさっき啓太郎と一緒に終えてきたので、大丈夫です。

飛鳥:そっか…ありがと。


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ー都内 高層マンションー


戦闘から逃れた美月とあやめは、マンションの美月の部屋に戻って来た。

あやめ:何なんですか、あれは…?

人間を襲っていたオルフェノクたちを止めようとした美月とあやめの前に現れたカイザのことを、あやめが美月に聞く。

美月:あれは…

美月が答えようとした時、部屋の玄関が開き、スマート・レディが現れた。

スマ:あれは、カイザと言います。仲間のオルフェノクたちを狙う、怖〜い人です。


美月:(カイザ?)

スマ:そして、もう1人。ファイズもオルフェノクたちを無作為に襲う怖い人です。そこで、お二人にミッションです。今から、ファイズとカイザのベルトを取り返して来て欲しいのです。


美月:ベルトを取り返すって、じゃあベルトは元々スマートブレインのものなんですか?

スマ:はい。このままだとオルフェノクは皆んなやられてしまいます。それはもう、え〜んえ〜んです…

嘘泣きをするスマート・レディ。

スマ:それじゃ〜、グッドラ〜〜ック♪

スマート・レディがいなくなると、美月がソファーに腰をかけ、机を見つめた。

美月:とりあえず、ベルトは取り返した方が良いのかも。もしも、人を襲う気がないオルフェノクもファイズとカイザが狙ってくるなら…

あやめ:私もそうします。

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ー菊池クリーニング屋ー


飛鳥:ねぇ…さく、あの人のこと本当に覚えてないの?

さくら:はい…、土生さんのことは何も…

飛鳥:そっか…

さくら:それより、土生さんがスマートブレインに気をつけろって言ってたのが気になって…もしかして、お父さんの身に何が起きたのか知っているんじゃないかなって。

飛鳥:うん、私もそれが引っかかってた。もし、さくの思っている通りなら…早く見つけなきゃだね、さくのお父さんを。

飛鳥の発言に、さくらは頷いた。


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ー櫻丘研究所ー

研究所の正門前には、ガードマンが2人で監視をしていた。そこへ一台のバイクが到着し、バイクから降りたドライバーはガードマンに研究所のIDを見せた。そのIDには、瑞穂の顔が写されていた。

ガードマンによるチェックが終わり、瑞穂は建物の入り口に向かって進んでいく。


瑞穂が向かった先にある部屋は、部屋の扉に名前が書かれていた。

「菅井友香」

瑞穂:戻ったよ〜。

友香:お疲れさ〜ん、瑞穂。

瑞穂:今日、ファイズに会ってきた。

友香:お!で、で、どうだった?

瑞穂:うん、きっと良い協力者になってくれそうだよ。オルフェノクと戦うのに。



友香:そっか、それは良かった!あぁ、そうだ。
これの解析が今終わったの。

友香が持っていた腕時計のようなアイテムを、瑞穂に見せた。

瑞穂:で、どうだった?

友香:うん…カイザじゃ使えないね、これ。もしカイザに変身して、無理矢理これを使えば、恐らく爆発するよ…

瑞穂:そっか…

友香:ごめんね、皆んなの力で奴らから奪い取ったのに…

友香が謝ってデスクに戻ると、瑞穂はアタッシュケースからカイザのベルトを取り出す。

瑞穂:皆んな…


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〜数ヶ月前〜

西田:じゃあ、瑞穂のお父さんがこれを送ってきたのか?

瑞穂:そうです、でも一体何なのか全然分からなくて。

(急ブレーキ音)

瑞穂たちが乗っていたキャンピングカーが、突然急ブレーキがかかる。

葵:どうしたの⁉️

高宮:マズい、オルフェノクだ❗️逃げろ❗️

運転する高宮の前に、ワニのような姿をしたオルフェノクが立ち塞がっていた。オルフェノクは、両肩から触手を伸ばし車のフロントガラスを割ると、触手を高宮の口に侵入させた。


瑞穂:高宮さん❗️

由依:瑞穂、早く出ないと❗️

由依は、襲われる高宮を見捨てられない瑞穂が運転席に向かおうとするのを止めた。


オ:ウォォォーッ❗️❗️❗️

雄叫びをあげるオルフェノクに、西田と由依、葵、そして瑞穂がライフルで迎え撃つ。

が、オルフェノクの頑丈な皮膚はライフルから放たれた弾を全て弾き、オルフェノクはほぼ無傷だった。

オルフェノクはそのまま突進し、瑞穂たちからライフルを手放させ、肉弾戦を仕掛ける。


4人に囲まれたオルフェノクだったが、オルフェノクの圧倒的な腕力や頑丈な胴体を前に、瑞穂たちは一方的にやられていた。

西田:くそっ、こうなったら!

西田は、友香が持っていたアタッシュケースを半ば強引に取り、ケースを開けカイザギアを装着する。

友香:西田さん⁉️一体何を…

西田:物は試しだ。


「9 1 3  Standing by」

西田:変身。

「Complete」

西田の身体周りを黄色い光線が覆い、やがて紫に光るマスクの目と黒いスーツに黄色いラインがボディに引かれた姿、カイザに変身した。


オ:グォォォ!

瑞穂:うっ…(息が…出来なっ!?)

瑞穂の首を掴み持ち上げていたオルフェノクは、カイザに変身した西田からキックを受け、瑞穂を手放す。

瑞穂:げほぉ…げほぉ…

西田:はぁ!

西田は起き上がったオルフェノクの胴体に連続でジャブを叩き込むと、オルフェノクが怯んだところにストレートを放つ。


オルフェノクとの距離が取れ、西田はXの形をした武器「カイザブレイガン」にメモリを装填し、カイザブレイガンから刀身を出現させ「ブレードモード」に変形させる。

西田:とぅあ!

カイザブレイガンで西田はオルフェノクの胴体を連続で斬りつけると、火花が散りオルフェノクが地面に転がされた。

「Exceed Charge」

カイザブレイガンの銃口から1発の光弾が放たれ、その光弾が光の檻のようなエネルギー波に変化してオルフェノクを拘束した。


西田:はぁぁぁぁ!!!

「カイザスラッシュ」を受けたオルフェノクが叫び声をあげ、爆発する。

オ:ぬごぉぉぉぉ!!!?

そして、オルフェノクの身体が灰になり消滅した。


由依:すごい…オルフェノクを倒した…

由依が感心していると、西田が胸を押さえ苦しんでいた。

西田:うぐ…

瑞穂:西田さん!?

瑞穂の膝の上で介抱された西田は、カイザの変身を解く。


西田:やったぁ…俺、倒したんだ…

葵:西田さん、しっかりしてください。

西田:これで、高宮の仇は取れ…

西田が言いかけたその直後、西田の身体は灰化し始め消滅してしまった。


由依・葵・友香:!?

瑞穂:西田さぁァァァん!!!



〜現在〜

瑞穂:(このベルトは、呪いのベルト…)

一人、痛ましい過去を思い出しながら、研究所の窓の方に向きながら瑞穂は目を瞑った。


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ー翌日ー

朝8時、ベッドの上で飛鳥は一人寝返りを打ち眠っていた。

飛鳥:zzz

さくら:飛鳥さ〜ん、まだ寝ているんですか?

寝ている飛鳥を起こそうと声をかけたさくらだったが、飛鳥はビクともしなかった。

さくら:(仕方ないか、昨日のこともあるし…)私、出かけてきますね。

一応、形だけでもとさくらは飛鳥に言うと、部屋を出た。


〜1時間後〜


(スマホの着信音)

飛鳥:ふぇ…、はいはい…

寝ぼけていた飛鳥は、スマホにかかってきた電話に出ると、啓太郎からの着信だった。

啓太郎:大変なんだ、飛鳥さん。オルフェノクが!?

飛鳥:!分かった、すぐ行くよ!!


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啓太郎:ひぃぃぃ…

オ:あーら、可愛い坊や。襲うのが惜しいくらいね。

啓太郎:じゃあ、どっか行ってください…

オ:そうね〜、そうしたいけど我慢出来ないの。さよなら〜

オルフェノノクが触手を伸ばすと、啓太郎に向かって触手を飛ばす。

啓太郎:!?


その瞬間、やってきたファイズのバイク・オートバジンがオルフェノクに突進し、間一髪で啓太郎は助かった。

飛鳥:ちょっと、うちの店長兼家主に何してんのよ!?

オ:なんだ、お前は!?ムカつく奴め!

飛鳥:あっそ、こっちはいい気分で寝てるとこ邪魔されてムカついてんのよ!

「5 5 5  Standing by」

飛鳥:変身!

「Complete」


ファイズに変身した飛鳥は、オートバジンの左ハンドルにメモリを装填し、ハンドルを抜き取りファイズの専用武器「ファイズエッジ」を取り出す。

飛鳥:たぁああ!

飛鳥はファイズエッジを振り、オルフェノクの胴体に連続で斬りつけ、最後に突き攻撃でオルフェノクを吹き飛ばした。


オ:ぐッ…

飛鳥:ふぅ〜、ちゃっちゃと終わらせよ。今日、本当は休みだったんだから、腕怪我してて。

「Exceed Charge」

飛鳥はファイズフォンのENTERボタンを押し、ファイズエッジの刀身にエネルギーを溜める。

飛鳥:てぁあああ!

ファイズエッジを上から地面に向かって振ると衝撃波が飛び、それはやがてオルフェノクを拘束するエネルギー状のリングに変化した。


そのまま、身動きが取れなくなったオルフェノクは、飛鳥のファイズエッジに斬り裂かれた。

オ:己ぇぇぇぇ!!!!

怒りの叫び声をあげながら、オルフェノクは青い炎をあげ灰化し消滅した。


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啓太郎:ありがとう、飛鳥さん。怪我、まだ治ってないのに。

飛鳥:良いって。ま、これで一旦帰らせてもらうけど。

啓太郎:うん、じゃあ僕はまだ配達が残っているから。

啓太郎が先にバイクで配達に向かい、飛鳥はオートバジンに乗ると菊池クリーニングを目指す。


飛鳥:…?

その帰り道の途中、飛鳥は道端に2つの人影を目にし、バイクを停車した。そこには、立ち話をしているさくらと瑞穂がいた。

飛鳥:(さく…もしかして、お父さんのことを聞きに?)


7話 完

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