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上司の見舞いに行ったら、告られて付き合うことになった…とさ


今日は休日だったが、出勤予定だった部長が体調を崩したとの連絡を受け、本人からの要望で見舞いに行くことになった。



家の玄関前に到着し、インターホンのボタンを押した。

〇〇:齋藤部長、〇〇です。

カチッ ガチャッ

玄関の鍵が開きドアが開けられると、額に冷えピタを貼った部長が現れた。

飛鳥:ごほっ…ごめんね。急に呼び出したりして。

〇〇:いえ、部長が倒れたって聞いて心配になっていたので…



普段の仕事の時は、いかにも出来るビジネスマンって雰囲気の齋藤部長だが、ここ最近ずっと残業続きでその疲労が溜まった為、体調を崩してしまったのだと思われた。

飛鳥:あっ…!?

弱った身体でなんとか立っていた齋藤部長だが、バランスを崩して倒れそうになった。

〇〇:大丈夫ですか?寝てたところまで、一緒に行きますね。

飛鳥:うん…助かるよ…

僕は部長に肩を貸し寝室のベッドまで付き添い、部長をベッドに寝かせ掛け布団を掛けてあげた。

〇〇:飲みものと薬、用意してきますね。

飛鳥:うん、ありがとう。






それから僕は台所に向かい、コップに氷を入れ買ってきたポカリを注ぎ、部長が飲みやすいようにストローを差した。

用意したポカリと買ってきた薬、薬を飲む用の水をお盆に乗せ、部長の寝室に戻りベッドの横のテーブルにお盆を置いた。

〇〇:エアコン、寒くないですか?

飛鳥:うん、大丈夫…

〇〇:分かりました。じゃあ、僕は部屋の外で…

部長の寝室から出て、廊下を挟んで隣のリビングで待機して、部長から何か要望があったらすぐ駆けつけるようにしようとした。



飛鳥:あっ、〇〇くん。

〇〇:はい。

飛鳥:近くに、居てくれない?

〇〇:でも…寝れないんじゃ…?

飛鳥:ううん…近くに居てほしい、な。

〇〇:分かりました。

椅子を持ってきて、部長が横たわるベッドの隣に椅子を置きそこに座った。

飛鳥:あと…薬、飲ませてくれる?

部長に頼まれ、市販の風邪薬の容器を開け部長の手に置いてあげ、部長が薬を飲むと水の入ったコップを部長に渡した。

飛鳥:ありがと。

〇〇:いえ。ゆっくり休んでください。

飛鳥:うん、そうさせてもらうね。

笑顔を見せた齋藤部長は布団を被り、目を閉じて寝返りを打つ。




部長が寝て、漸く僕はホッとした。


〇〇:(あぁ…良かった…変なこと起きないで…)

別に普段から齋藤部長が怖いとかそういう訳ではないし、というか普段から部長は後輩たちに面倒見の良い先輩と慕われてるし、勿論僕も部長に良くして貰っていた。

だからこそ、逆にここで変なこと起こして部長との関係を壊したくないなんて思ってしまった。


僕は持ってきた本、といっても既に読み切った小説だが齋藤部長の看護の合間に読もうと思っていたのを、鞄から取り出してページを開こうとした。





飛鳥:〇〇くん?

暫く寝ていた齋藤部長に声をかけられ、驚いて背中がビクついた。

〇〇:あ、何か要りますか?

飛鳥:ううん、ちょっとお話したいなって…

そう言われた瞬間、

〇〇:(話ってなんだ??とりあえず、何も起きないでくれ…)

飛鳥:もしかして、緊張してる?

〇〇:あ、いやぁ…

飛鳥:ふふ、大丈夫だよ。




飛鳥:〇〇くんって、彼女さんとかいる?

〇〇:え?いやぁ…居ないです。

飛鳥:そっか。

そんな質問をされることは予想外過ぎた。

飛鳥:こんなに良い子なのに…〇〇くん。

そう言われた瞬間、顔が真っ赤になった。

〇〇:ぶ、部長…あの…

飛鳥:ん、何?

〇〇:あの…その…やっぱなんでも無いです!

彼氏さん、いますか?なんて聞けるワケない。

無い無い無い!

などと、勝手に1人で心の中が騒がしくなっていた。

飛鳥:何々?気になって寝れないよ笑

〇〇:いや、さっきより元気になりましたか?

飛鳥:うん!

誤魔化したつもりで聞いたが、部長が満面の笑みになっていたのを見て、なんだか悪い気がした。

〇〇:良かったです。

飛鳥:ありがとね、休みなのに。

〇〇:いえ、いつも部長には色々世話になってますし。





飛鳥:じゃあ、そんな部長から大切な報告があります。

〇〇:大切な報告、ですか?

本当にさっき玄関で会ったときより齋藤部長が元気そうになっていたのを見て安心していたので、何気なく話を聞き続けていた。


飛鳥:私、齋藤飛鳥は、〇〇くんが好きになりました。

〇〇:?

飛鳥:あれ?聞こえなかった?

〇〇:い、いえ…聞こえてます。ただ、その…

飛鳥:って、急にでごめんね。

〇〇:そ、そんな!と、とんでもないです!
部長!気遣わせてすいません!

飛鳥:あはは、真面目だね笑


本当はいつか齋藤部長に気持ちを伝えるつもりだったが、先を越され告白された僕は、意を決して気持ちを伝えることにした。

〇〇:部長、実は…僕も…

飛鳥:え?

〇〇:前から、す、好きでした!部長のことが…

飛鳥:じゃあ、これから宜しくね。

〇〇:は、はい!宜しくお願いします。

飛鳥:うん!





その後、部長、いや飛鳥さんの体調も1日でほぼいつも通りに戻っていた。

飛鳥:あ〜、熱も下がったし身体も楽になったよ。

〇〇:良かったです、部長が元気になって。

飛鳥:あっ、部長って呼んだ!ダメだよ。

飛鳥さんにぬいぐるみを抱きながら注意された。

〇〇:あ、飛鳥さんが元気になって良かった、です笑

飛鳥:宜しい。

〇〇:あ、夕食は?

飛鳥:え、作ってくれるの?

〇〇:折角ですし。

飛鳥:やったああ!!


一応これでも上司だが、普段見せないようなあどけなさを感じる飛鳥さんの笑っている顔を見ると、こっちも自然と口角が上がった。


飛鳥:初めての彼氏の手料理が食べられるのか。

〇〇:そ、そうですね…

飛鳥:〇〇くん、顔赤ッ笑

〇〇:そ、そんなこと無いです!

飛鳥:いや〜、こんなに体調が直ぐ良くなったのも愛の力のお陰だね。

〇〇:いや、それは❗️❗️まぁ…

何か否定しきれない…否定しちゃうと味気ないというか。

飛鳥:あはは、でも本当にありがとう。

〇〇:いえいえ。飛鳥さん、可愛いですね。

飛鳥:ちょっ、急に…💦💦もう!

〇〇:仕返しです笑

飛鳥:このやろう!笑

fin.

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