16話「奪われたベルト」
ー櫻丘研究所ー
瑞穂:zzzz
研究所のベッドで眠っていた瑞穂が、寝返りを打つ。
〜〜〜〜〜〜〜〜
「みず姉ーー、グスン…皆んなが意地悪してくるの!!」
「よしよし、もう泣かないで。」
泣きじゃくれる幼いさくらを、瑞穂が抱きしめる。
「もう大丈夫だから、私はさくらちゃんの味方だからね。
「うん」
「みず姉、見て見て」
「これ、さくらちゃんが作ったの?」
「うん、みず姉と結婚するために指輪作ったの」
そう言って、さくらは折り紙で作った指輪を瑞穂に渡す。
「私と?でも、私女の子だよ?」
「うん、だってみず姉男の子みたいにカッコいいんだもん」
「そうかな?笑」
「うん、そうだよ。」
「そっか、ありがとう。」
〜〜〜〜〜〜〜〜
友香:瑞穂?
友香の声で瑞穂は目を覚ました。
瑞穂:ん…?
友香:なんか嬉しそうだね。
瑞穂:そ、そうかな…
友香:良い夢でも見たの?
瑞穂:まぁ〜、そんなところかな。
小さい頃、流星塾にいた時の思い出に瑞穂は浸っていた。
ー菊池クリーニングー
さくら:♬〜
啓太郎:ご機嫌だね、えんちゃん。
さくら:え?そうかな?
啓太郎:でも良かったよね、昔のこと思い出せてさ。
さくら:うん。
さくらが流星塾にいた時のことを思い出したことを啓太郎は言ったが、さくらが返事をした時一瞬だけ表情が曇っていたのが飛鳥には見えていた。
さくら:あれ?
さくらのスマホから通知音が鳴った。
さくら:みず姉からだ。「大事な話しがあって、今会える?」って。
さくらが瑞穂になんて返答しようか迷っていると、
啓太郎:会ってくれば?土生さんのことだし、きっと凄く大事なことだと思うし。ね?飛鳥さん。
飛鳥:え…まぁ…そうね。
さくら:ありがとう、二人とも。
啓太郎と飛鳥が頷き、さくらは身支度を整えて玄関を出て行く。
ースマートブレイン社 社長室ー
スマレ:大丈夫なんですか、社長?全然ベルトの奪還が上手くいってないみたいですが。
村上:心配することありませんよ。もうすぐ二つとも我々の手に入りますから。
スマレ:随分と自信満々ですね。
村上:ええ。
社長室のデスクの上で手を組みながら、村上は不敵な笑みを浮かべていた。
川に掛かった橋の上で、瑞穂はさくらを待っていた。
さくら:みず姉。
少しして、瑞穂のメッセージを読んださくらがやって来た。
瑞穂:ごめんね、急に呼び出して。
さくら:ううん。私もね、みず姉と話したかったの。楽しかったよね、皆んなで流星塾に居た頃は。
瑞穂:うん、そうだね。
さくら:元気にしてるかな、友香姉とか由依姉、あおたんとか。
瑞穂:・・・
さくらの口から由依と葵の名前が出た瞬間、
瑞穂の表情が曇った。
さくら:あ、それ。
さくらは瑞穂の左手に握られている指輪の折り紙を指差した。
さくら:ずっと持っててくれたんだね。
瑞穂:うん、さくらちゃんとの婚約指輪。
さくら:なんかそう言われると恥ずかしいな笑
瑞穂:さくらちゃんがそう言ったんだよ?笑
橋の上で、二人の笑い声が響いた。
瑞穂:でも、あの時嬉しかったな。結婚したいって言ってもらえて。
さくら:それは、子どもだったから…
さくらが顔を赤らめていると、
さくら:え…
さくらの背後に瑞穂がくっつき、瑞穂の腕がさくらを囲っていた。
瑞穂:本当にしても、良いんじゃない?
さくら:み、みず姉…
瑞穂の手に触れると、心臓の鼓動がさらに激しくなるのをさくらは感じた。
瑞穂:さくらちゃんが、今でも私のこと好きだったら。
瑞穂の声がいつにも増して柔らかさがあり、それがさくらに時間というものを忘れさせた。
飛鳥:サインかハンコをお願いします。
客:はい、ご苦労様です。
飛鳥:ありがとうございました。
クリーニングの配達を終えた飛鳥は、バイクに乗り込む。
飛鳥:・・・
バイクに乗り込んだ飛鳥は、昨日菊池クリーニングで瑞穂によって聞かされたことを振り返っていた。
(ここから回想)
瑞穂:あの日…私たちは…
飛鳥:何があったの?
瑞穂:・・・いや、なんでもない。
飛鳥:なんでもなくないでしょ?今の反応、どう見たって…
瑞穂:良いの、全て思い出す必要なんて。特に思い出すだけで辛くなるようなことは…
捨て台詞を吐いて、瑞穂は菊池クリーニングから出て行く。
飛鳥:はぁ…やっぱりあの人、気に食わない。
(ここまで回想)
飛鳥:ん?
飛鳥の視線の先に、不良3人が一人の青年を脅している様子があった。
不良1:ガキ、持っているもの出せ。
?:僕、何も持っていないよ。
不良2:良いから、小遣いくらいの金でも出せ。
?:お金、無いんだ。
不良3:じゃあ、どう落とし前つけてもらおうかな?
不良3が青年に近づくと、
?:やめた方が良いよ。僕に触れない方が良いよ。
不良3:ああ?何言ってんだテメーッ!?
不良3の拳が青年の胸ぐらを掴んだ瞬間、
サァ… ドサッ
飛鳥:!?
不良3の体は瞬く間に灰化して、消滅した。
不良2:なっ!?
?:ああ、だから言ったのに〜
不良2:ふざけんな化け物が!!!
不良2が拳を青年の頰にぶつけた瞬間、
サァ… ドサッ
不良3と同じように不良二は全身が灰化し、消滅してしまう。
不良1:ああ…
?:みんな僕に触れると、灰になっちゃうんだ。悲しいよね、僕って。
尻餅をついて動けなくなった不良1の脚を、青年が踏みつける。
サァ…
不良1:あ、あああ!!!!!
自信の体が崩れる様子を見ながら、不良1は断末魔を上げ消滅してしまった。
飛鳥:オルフェノク!
?:ん?
足場を3つの灰の山に囲まれた青年が飛鳥の方を振り向いた。
飛鳥はファイズドライバーを装着し、ファイズフォンに変身コードを入力した。
「5 5 5 Standing by」
?:へ〜、面白いの持っているんだね。
飛鳥:変身!
「Complete」
?:遊んでくれるの?嬉しいな〜
ファイズに変身した飛鳥を見て、青年は全身に力を込め灰色の光に包ませると、ドラゴンオルフェノクの姿へと変貌した。
ド:久々に楽しもうっと。
余裕を見せるドラゴンオルフェノクに向かって、飛鳥が突進してきた。
飛鳥:はあああ!!!
ドラゴンオルフェノクの腹部に向かって右拳でパンチを繰り出す飛鳥だったが、ドラゴンオルフェノクはビクともせず代わりに両腕についた巨大な篭手で飛鳥を弾き飛ばす。
飛鳥:うぐ…
ド:ふふ。
壁に打ち付けられた飛鳥は胸を押さえながら、再びドラゴンオルフェノクに向かってパンチを繰り出す。
飛鳥:はぁ!!
ド:ふん。
飛鳥の拳をドラゴンオルフェノクが篭手で弾き、篭手で飛鳥の正面を振り払う。
飛鳥:!?
すかさず飛鳥はドラゴンオルフェノクの篭手を避けて、カウンターのパンチを出そうとしたが、先に篭手が飛鳥の胸部を斬りつけた。
飛鳥:あがぁ!?
痛みに苦しむ飛鳥に、ドラゴンオルフェノクの篭手による攻撃が容赦なく降り注ぐ。巨体から繰り出されたとは思えないほどのスピードで攻撃が繰り出され、飛鳥はひたすらに避ける事しかできなかった。
飛鳥:うぐ…
ド:ちょっと強すぎたかな。良いよ、ハンデあげるからさ。
飛鳥:え?
突然、ドラゴンオルフェノクが両腕を広げて正面を無防備にさらけ出した。
ド:良いよ、1発だけ先に打ってきなよ。
飛鳥:(ふざけてるの?)
訳がわからず混乱した飛鳥だが、右手にファイズショットをはめてドラゴンオルフェノクに向かってダッシュする。
「Exceed Charge」
ファイズフォンのENTERボタンを押した飛鳥は、ドラゴンオルフェノクに向かってファイズショットの必殺技「グランドインパクト」を繰り出す。
飛鳥:はあ!!
ファイズショットがドラゴンオルフェノクの腹部にヒットしたが、小さな赤い衝撃波が一瞬だけ出現した後ドラゴンオルフェノクは少しだけ後退りしただけで、ドラゴンオルフェノクの腹部にはかすり傷一つすらもできていなかった。
飛鳥:そんな…
ド:ふふ、じゃあ僕の番だね。
自慢の篭手でドラゴンオルフェノクは飛鳥の顔面を斬りつけ、右脚で飛鳥の腹部をキックし吹き飛ばした。
飛鳥:うわぁああああ!!?
勢いで飛鳥はコンクリートの壁にぶつかり、その衝撃で壁が砕け散った。
飛鳥:(つ、強い…このオルフェノク。でも…)
背中に激しい痛みを感じながらも、飛鳥は息を切らしながら立ち上がった。
ド:へ〜、君すごいね。まだ動けるんだ。
飛鳥:っ…
「Reformation」
ファイズアクセルフォームへと変形した飛鳥は、高速で移動してファイズショットによるパンチをドラゴンオルフェノクに浴びせた。
その瞬間、
ド:ふん。
ドラゴンオルフェノクの体を覆っていた鎧が剥がれ、崩れた。
飛鳥:な!?
先ほどより身軽な形態となったドラゴンオルフェノクは、ファイズアクセルフォームのスピードを上回る俊敏な動きでパンチやキックを繰り出してきた。
ド:とぅああ!
飛鳥:く…
ドラゴンオルフェノクの高速な攻撃に為す術もないまま、飛鳥は食らい続けて地面に倒れ込みアクセルフォームの制限時間がきてしまった。
「TIME OUT」
力尽きた飛鳥の首をドラゴンオルフェノクが掴み、身体を持ち上げた。
ド:面白かったよ、これもらうね。
元の頑丈な形態に戻ったドラゴンオルフェノクは、無抵抗な飛鳥からファイズドライバーを無理やり剥ぎ取った。
飛鳥:(ファイズのベルトが…)
さくらと一緒にオルフェノクたちの手から守ってきたベルトを取られてしまった飛鳥はファイズの変身が解除されてしまい、ドラゴンオルフェノクに掴まれた首から灰が溢れ落ち始めた。
サァ…
飛鳥:はぅ…ぐっ…
ド:ふふ。
さくら:みず姉、私ね…
瑞穂:うん。
さくらが瑞穂の手に触れながら、何かを言いかけたその時、
(衝撃音)
突然現れたオルフェノクが二人に奇襲をかけ、さくらと瑞穂は引き離された。
瑞穂:さくらちゃ…!
倒れたさくらの元に駆けつけようとした瑞穂は、背後から脊髄に衝撃を与えられ気絶してしまう。
さくら:!?
美波:見つけたわよ、カイザの装着者さん。
瑞穂の体を、ラッキークローバーの美波は片手で抱えていた。
オ:梅澤さん、この娘はどうしますか?
美波:好きにして良いわ。カイザのベルトは手に入ったし。
美波はそう言い残すと、近くに停めていた車の後部座席に気絶した瑞穂を乗せて、車を走らせて去っていく。
さくら:みず姉!?
オ:へへ、たっぷりと楽しませてもらうぞ。
迫り来るオルフェノクに、さくらは恐怖で身動きが取れなくなっていた。
さくら:ああ…
17話に続く
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