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太陽みたいに明るい君と出会えて晴れたんだ。

高校生活と聞いて、

期待に胸を膨らませる者もいれば、

あの頃に戻りたいと嘆く者もいるだろう。

または、

もう二度と高校なんか!

と振り返りたくなくて蓋をしたい者もいるだろう。

これは、転校した先で出会った女の子と男の子との物語…





その日、私は転校した学校に初めて行くために家を出た。

理央:ふ〜、緊張するな〜

なんとなく制服が同じ子たちに付いて行けば、新しい学校に辿り着けるだろうと思いながら、道を歩いていた。

少しして、学校が少し遠くに見えるところまで来た。

理央:あそこが新しい学校か。

と一人期待を胸に学校までの道を進もうとした時、歩いている学生たちの中に、1人アスファルトの地面に顔を向けながら歩く男の子がいた。

その子は他の歩いている学生と同じ制服を着ていたが、他の学生たちが学校への道を進むなか彼は別の道を進みやがて姿を消した。

理央:あの子…どこ行くのかな?



気になって、私は彼の跡をつけた。

彼について行くと、進んだ先に巨大な一本の木がそびえ立っていた。

理央:あ。

彼が木に近づくと、枝に止まっていたスズメたちがその彼のもとに降り立ち集まってきた。

彼が膝を下ろして手を広げると、手にあったパンくずにスズメたちが嘴を近づけて取っていた。

童話の世界に出てくるような光景に、私は思わず見惚れてしまった。

しかし、こっちの視線に気づいたのか彼が急にこっちに振り返った。


?:!?

理央:あっ…

驚いて、一瞬体がこわばった。勝手に覗いていたことをすぐ謝ろうかと思ったが、

?:何してるの?

とその子に先に聞かれた。


理央:あ、その…道に迷っちゃってね…私、転校したばかりなの。ほら、君と私、同じ学校の制服じゃない?

?:あ、うん…

理央:だからさ、君に聞けば学校どこか分かるかなって思って。

?:学校なら、ここ進んで右に曲がれば着けるよ。

彼が教えた道は、さっき私が通った道だった。

理央:ああ、そうなんだ!

?:うん。

理央:ありがとう、教えてくれて。

?;うん、じゃあ。

そして、彼はまたスズメたちの方に向いた。


理央:あれ?学校行かないの?

?:え、ああ…あとで行く。

理央:一緒に行かない?

?:ごめん、今忙しいから。

理央:忙しいって、学校遅刻しちゃうよ??

?:大丈夫だから。

理央:大丈夫じゃないって、ほら。

その時、私は彼の腕を無理矢理引いた。

?:やめてくれって!!!!

理央:!

物静かそうだった彼がいきなり声を荒げ、驚いて言葉を失った。


?:ごめん、でもほっといてくれ…

そう言って、彼は木の枝に避難したスズメたちに謝って、また下に集まらせていた。

その時、彼の足元に小さな包帯があるのが見えた。




その後、私はずっと彼とスズメたちを見守っていた。


?:よ〜し、もう大丈夫だからな。

その子の手で隠れて見えなかった一羽のスズメの姿が見えると、羽に包帯が巻かれていた。

?:まだ居たんだ…

理央:うん。すごいね、君。動物の手当て出来るんだ。

?:父さんが獣医でね。

理央:じゃ、行こ。学校に。

?:・・・・

手を差し伸べたが、男の子は一向に反応しない。

理央:・・・・

?:僕となんか居ない方が良いよ…

なんとなく、そんな返答が来る気がしていた。


理央:もしかして、いじめられてるの?

?: !?

理央:そうなんでしょ?

?:ち、違うから…別に…

理央:じゃあ、なんでそんな…

?:やめてくれ!そんな、目しないでくれ!!

理央:やっぱり…

?:どうせ、こんな僕なんか可笑しいんだよ!!人間とは仲良くなれないで、動物にばっか話かける僕なんか!!!

髪をクシャクシャに掴んで頭を抱えていた。


しばらく黙ったまま、膝を曲げて地面に座り込む彼の隣に立っていた。


?:・・・・

理央:・・

そっと膝を下ろし、私は彼の頭を撫でた。

?:なんで…なんで…、ほっといてくれないの?

理央:ごめん、私には出来ないよ…だって、私もだから。

?:え?


そう、転校する前。


私も、人から虐めを受けていた。





ある日、チアリーディングの練習に出た時のこと。

最初は、下駄箱に入っていたシューズが盗まれた。

ただの悪戯かと思って放っておいていたが、それから私に対する嫌がらせが徐々にエスカレートしていった。

チアリーディングに使うポンポンやゼッケンが破かれてゴミ箱に捨てられたりした。

最終的には、トイレに仕掛けられていた水バケツを浴びせられた。


嫌がらせを仕掛けたのは、チアリーディングの仲間だと思っていた人たちだった。

動機は、私がサッカー部のイケメンな男の子に迫ろうとしていたからだと。

虐めの首謀者は他ならぬ私の親友で、彼女はその男子学生を私に取られるのが我慢ならなかったそうだ。


その虐めが原因で、私は転校した。



理央:私凄く悲しかった…友だちだと思ってたのに。

?:・・・

理央:ごめん、こんな話聞きたくないよね?

?:いや…別に気にしてないよ…

理央:だから、同じように虐められている君が放っておけないの。

?:でも…

理央:?

?:でも、僕と君とじゃ話が違うよ…僕はただ人と喋るのが苦手なんだ。だから、僕と居たらイライラさせるんだ、皆んなを。だから、仕方な…

理央:そんなのおかしいよ!

〇〇:え?

理央:そんなので、虐めて良いなんておかしい!!

さっき男の子が声を荒げた時と同じくらい、声量が思わず出た。

理央:だって、君はこんなに優しいじゃない!
怪我してる動物を手当てしたり、私の話をちゃんと聞いてくれたりして。



僕の人生は惨めだ。

そう思っていた。

昔から人と喋るのが苦手で、相手の質問とかにすぐ答えられないでイライラさせたりして、
それで人と話すのが怖くなった。


高校にあがって、虐めっ子たちの格好の餌食になった。


でも、これは喋れない僕が悪いのだと思っていた。


だから、受け入れるしかないのだと…


彼女に会うまでは。


理央:君のことを皆んな分かってないだけだよ!君の良いところを!

〇〇:僕の…良いところ…

理央:だから、お願い。負けないで!

〇〇:え?

理央:虐めてくる人たちに負けないで!

理央:私が一緒についていくから!!


最初は彼女のことを鬱陶しいと思っていた。

ただ僕を物珍しいと思って揶揄っているのだろうとすら思っていた。


でも、今はそんなこと思えなかった…


こんな外で、涙で顔がクシャクシャになりながら、僕に負けるなと言ってくれる君を見たら…

〇〇:ああ…

え、目にゴミが…

違う。なんだ、これ。

久しく忘れていた気持ちが戻ってきた。


〇〇:っ…!

彼女の両腕が僕の背中まで囲い、寒かった筈がの身体が急に暖かくなった。

余計に涙が止まらなくなった。

それは、彼女もまた同じだった。


暫く、僕らは言葉を交わさず一つになっていた。



〇〇:山口〇〇。

理央:え?

〇〇:僕の名前。教えておきたくて…

理央:うん。私は、清水理央。

落ち着いた僕らは互いに名前を教えた。


そして、2人で学校に向かった。




校長:ああ、心配したよ清水さん!全然来ないから。

理央:すいません、道に迷ってたんです…でもそしたら、〇〇くんが案内してくれて。でも、途中でお腹が痛くなって…

〇〇:それ嘘じゃ…(小声で)

理央:良いから!(小声で)

理央:で、ずっと〇〇くんに付き添ってもらっていたんです…すいません!

校長:そうか、分かった。じゃあ、あとで君のクラスまで案内しよう。〇〇くん、私から先生には訳を伝えておくよ。

〇〇:あ、ありがとう…ございます。


教室に入ると、担任の先生はいなかった。



?:お前、遅刻かよ。

虐めっ子の1人が噛みついてきた。

?:来んなよな、陰気くせーから。

僕は無視して、自分の席についた。

少し寂しかった。

さっきまで、理央がいたからかもしれない。


でもあることに気がついた。

僕の左側に、先週まで無かったはずの机と椅子が置かれていた。

教室の戸が開けられ、担任の先生が入ってきた。

担任:よーし、皆んな。今日は転校生を紹介する。

開いた戸から入ってきた転校生を見て、僕は目が丸くなった。


理央:はじめまして、清水理央です。


教室はザワついた。

多分、転校生があまり美人だからだろう。

自己紹介を終えた理央が僕を見つけ、さりげなく目で笑ってくれた。

担任:じゃあ、そこ空いているから座ってくれ。

理央が僕の隣に来て、席に座った。

理央:やったね、クラス一緒になれて。しかめ隣だね(小声で)

〇〇:うん。(小声で)

理央:よろしくね。(小声で)

〇〇:うん、よろしく。(小声で)



もし理央が僕の高校に転校してくれなかったら、僕の高校生活は多分一生思い出したくないものになっていただろう…




それから、一年後…


帰り道

理央:待ってよ〜、〇〇くん!

〇〇:理央ちゃん。

理央:はぁ〜、もう置いていくなんてひど〜い!誰かに私が襲われたりしたらどうするのよ!?

〇〇:大丈夫だって。理央ちゃん、見た目より怖いから。

理央:それどういう意味よ?

コンッ

〇〇:痛ッ!

理央:悪口言ったからお仕置きだもん♪

〇〇:ごめん、言い方変える。強いから、理央ちゃんは。

理央:そんなことないよ〜、〇〇くんの方が強いじゃん。この前アイツを追い払ったじゃん。

〇〇:いや、あれは睨みつけただけだよ…

理央が話していたのは、理央に絡んできた虐めっ子の1人を〇〇が追っ払った話だった。

あの時、あと少しで〇〇は虐めっ子にアッパーを決めそうになったが、ギリギリで手を止めた。

理央:鷹みたいだった。

〇〇:じゃあ、理央ちゃんは鷲。

理央:なんで猛禽類で喩えるのが始まったのよ?

〇〇:さぁ〜ね笑

理央:ま、良いか笑


こんなに夕陽が綺麗だと思えるようになったのは、きっと君に会えたからだろう。

暗い曇り空な日々に、とっても暖かい日差しを差してくれた。

ありがとう。


fin.

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