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11話「お菓子な(可笑しな)家?」

愛萌:ボンヌ・レクチュール。愛萌です。

人の姿に化けられるメギド・レジエルとの戦いで、〇〇は周囲を焼き尽くす強力な技でレジエルを退却させることに成功するも、意識を失ってしまうのです。

しかも、〇〇が繰り出したその技は、命の危険に晒される程の恐ろしいものだったのです…う〜、大丈夫か〇〇〜!!

でも、本で〇〇はかつて剣士たちがメギドから世界の均衡を守ったという事実を知り、今度は自分たちが世界を守ることを決意し技を会得すべく、強大な力が眠る失われし場所・アヴァロンを目指すことに…

とその前に、またもやメギドが本の世界で悪さを始めたようですね〜




ー本の世界ー

本の世界へとやってきた優佳と美玖の目の前に、荒廃とした村が目に入る。
家々は屋根や壁が破壊され、畑は作物が無残に荒らされていた。

美玖:これ…メギドの仕業だよね…?

優佳:そう考えて間違いないと思う…

と2人が話していると、一軒の家の煙突から煙が出ていた。

優佳:!…あの家、誰かいるね。

美玖:行ってみるか。

2人が小屋の方へ向かい、入り戸の前に立ちノックする。

優佳:すいませ〜ん、どなたか居ませんか〜?




ガチャッ

勢いよく戸が開き、男が猟銃を持って現れた。

男:く、来るなぁーー!化け物!

男は目を閉じながら銃口を優佳たちに向けた。

優佳:ちょっ、いやいやいや!!

美玖:待って、待って!よく見てぇぇ!!

優佳と美玖は慌てて身体を地面に屈ませ、銃口の照準から自分たちの身体をずらした。


男:…ん?こ、これは失礼!

頭に手を被せしゃがむ優佳と美玖を見た男は、急いで猟銃を下ろした。

男:なんと、お二人は剣士様ですか?

水勢剣流水を持つ優佳と、剣を持つ美玖を見た男がそう聞いてきた。

優佳:えっと…そ、そうです。

美玖:じ、実は旅をしていたところ道に迷いまして…

男:そうでしたか…それは大変でしたな。ささ、中に入ってください。


男は優佳と美玖を家の中の食卓に招き、お茶を2人に差し出す。

男:どうぞ。疲れた身体がきっと癒されます。

優佳:ありがとうございます。

美玖:この村で、何があったんですか?

外で見た惨状の訳を、この男なら知っていると思い美玖が話題に出す。

男:はい…突然、化け物の集団が村を襲ってきたんです…小さな村ですが、それでも私にとって大切な村…村の人たちは化け物どもに襲われ、姿が消えてしまったんです。私の妻も…

男は顔を手で覆い、机に伏せていた。

優佳:お気の毒です…


男:きっとバチが当たったんです…

美玖:どういうことですか?

男は口を閉ざし、深呼吸をした。

男:親としての恥です…決してゆるされないことを…

優佳:?お子さんがいるんですね?

男:!

男は口を手で覆い、挙動不審になっていた。

美玖:まさか、あなたのお子さんも…その、化け物に…

男:いえ、もっと酷いことをしました…私は、2人の子どもを森の奥に置いてきました…それも、二度も…

優佳・美玖:!?


ー守護者の砦ー




好花:う〜ん、見つからない…アヴァロンのアの字も見つからないよ〜!

守護者の砦の本棚から取り出した膨大な数の本を読み漁っていた〇〇と好花だったが、アヴァロンに関する情報はまだ得られていなかった。

〇〇:けど、この中にあるはずなんだよな…アヴァロンのことがきっと…

ソフィア:アヴァロンには、剣士でもたどり着いた者は未だいません…

〇〇:剣士でも辿り着けない…


○○の視線が、手元の本から近くに置いてあった剣の型に関する本に移る。

○○:(先代の剣士たちが作り上げたもの…)

いくつかの剣の型の本のうち、火炎剣烈火のを持ち出した○○は、奥の扉の方へ向かう。

好花:?まさか、リベラシオンに入るの?

○○:うん、剣の腕も上げなきゃいけないし…

ソフィア:くれぐれも、無茶はしないようにしてくださいね。

後ろからソフィアに忠告された○○は、軽く頷き扉の奥の暗闇へと進んでいく。





ー本の世界ー

美玖:どうして、そんなことを…

男:飢饉のせいで私たちは、パン一つすら手に入らないほど貧しくなっていました…妻は、2人を見捨てるしかないと言い、私に森の奥に捨ててこいと命じました。最初は私は躊躇い断りました。しかし、家はどんどん貧しくなり、妻の具合が悪くなり、私は妻のためと思い、仕方なく2人を…

優佳:(!もしかして…)そのお子さんたちの名前は?

男:兄のヘンゼルと妹のグレーテルです。

やはり、といった表情になる優佳と美玖。

男:こういうのもおかしな話ですが、あの子たちが村にいなくて幸いだったのかもしれません…ですが、お願いがあるんです。


男は机から立ち上がると、床に膝を付き土下座をした。

男:どうか、あの2人を探してきてください。

優佳と美玖が顔を見合わせ、再度男の方を向く。

優佳:あなたがしたことは、親としては最低です。

男:重々承知してます…私が願い出たことも身勝手極まりないです…

美玖:だからこそ、約束してください。もう二度と、お子さんたちを見捨てたりしないと。

男:も、勿論です!!決して、二度と…





ーリベラシオンー

どこまで続くのかわからない広大な黒い空間と一筋の光以外何も無い場所。

時の流れが現実世界とも本の世界とも異なり、通常の人間が入ってもものの数秒で退却せざるを得ない程、過酷な場所。

そして、古より剣士たちの鍛錬がなされてきた場所。

○○:うぐっ…

バタンッ

リベラシオンの過酷さを身体に早速受け始めた○○。

地面に膝をついた○○の脳裏に、レジエルとの戦闘が蘇る。


〜回想〜

レジエル:もうクタクタって感じね?

(剣と剣がぶつかる音)

○○:許さない…

レジエル:え?

○○:ふぅおおおおおお❗️❗️



(爆発音)




○○:…ッ、ぅあああああああ❗️❗️

叫び声をあげながら、○○は火炎剣烈火を地面に突き刺す。

○○:はぁ…はぁ…

火炎剣烈火を握りしめる力が強くなると同時に、○○の身体全体から汗が流れていた。

○○:……

目を閉じて、額を火炎剣烈火の持ち手に触れさせるその姿は、何かを祈っているかのようにも見えた。




ー本の世界ー

男から2人の子ども、ヘンゼルとグレーテルを探すよう頼まれた優佳と美玖は森の中を捜索していた。

美玖:なんか、すっごく甘い匂い…しない?

美玖が鼻をひくつかせるのをみて、優佳も鼻をひくつかせる。

優佳:!もしかして、あの家…?

優佳が指差す先には、チョコのような茶色の壁と
生クリームのような白い屋根で覆われた煙突付きの一軒家が建っていた。



優佳が家の壁に触ると非常に柔らかく、壁に手をついたまま壁の奥に突っ込みそうになり、慌てて体勢を整えた。

もしやと思い壁を摘むと、力を入れずとも千切れた。その千切ったかけらを口にすると、ふわふわした食感とチョコの甘い味、バターの香ばしい風味が口の中で広がる。

優佳:う…美味い…✨

美玖:まさか、この壁…

美玖も恐る恐る家の壁を千切り、口にすると、

美玖:う、美味すぎる❗️

パンの美味に惹かれ、美玖がもう一口食そうとした瞬間、

美玖:いやいや、ダメ❗️今週は糖質制限するんだから❗️

と自らパンの壁を食べることを静止した。



が、隣の優佳は夢中でパンの壁に食らいついていた。

優佳:美味し過ぎふ〜。ふぁ〜、いくらでも食べられふ〜🎶


美玖:ちょっ、食べ過ぎだよ❗️ストップ、ストップ❗️

が、美玖の声は届かず優佳は構わず食べ続けた。

優佳:ふぁ〜、幸せ…zzzzzz

パンの壁に寄っかかって優佳は眠りに就いてしまう。

美玖:いや、寝てるし!食べ過ぎて寝るとか、子どもかい!!!

(爆発音)

背後から攻撃を受けた美玖が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。




美玖:ってて…あ!?

目の前に、魔女のような風貌のメギドが優佳に近づき、寝てる優佳の頰に手を触れる。

メギド:ほほほ、間抜けな子ね。このパンに睡眠薬を混ぜてるとも知らず、呑気に食べまくるとは。

美玖:(睡眠薬っ!?だから優佳は寝てしまったのね…)

美玖は起き上がり、優佳を肩に担いだメギドに剣を向ける。



美玖:優佳を返して!

メギド:ふん、お前さんが私に勝てるとでも?聖剣を持っていないお前さんに。

メギドは持っていた杖から複数の闇の球を召喚すると、美玖に向かって飛ばす。

美玖:!?

美玖は飛んできた球のうち最初の2発を剣で弾き飛ばし、残りの球を横に身体を転ばせて回避した。

美玖:っ……!優佳ぁーー!!

美玖が攻撃を受けている隙に、メギドは優佳を連れて姿を消してしまっていた。

それだけではなく、先ほどのパンの壁の家も消えていた。




美玖:ああ、どうしようどうしよう…

優佳を誘拐され、美玖はテンパっていた。

美玖:あ、そうだ!〇〇くんたちに…

美玖はガトライクフォンを取り出し、〇〇と好花に連絡を取ろうとした。

美玖:…でも…

番号を入力して、電話をかけようとした美玖だが、その手を止める。



ー回想1ー

美玖:聖剣が認める…か。

ソフィア:美玖さん、貴女にも聖剣に選ばれる可能性は十分あります。

美玖:え、いや…私なんかが…笑

ー回想2ー

メギド:ふん、お前さんが私に勝てるとでも?聖剣を持っていないお前さんに。




美玖:…

美玖はガトライクフォンをしまい、森の奥へと歩み始める。



ー守護者の砦ー

好花:○○、大丈夫かな…

ソフィア:本来ならもう出てきてもおかしくない時間です。ですが、まだ中にいられるというのは…やはり、○○さんも只者ではありませんね。

好花:心配なので、私見てきます。

ソフィア:待ってください!

ソフィアに呼び止められ、好花が振り返る。

好花:○○が無茶しているかもしれないんです!
だから、私が…

ソフィア:今は、○○さんを信じましょう。

好花:で、でも…

躊躇う好花に、ソフィアが寄り添う。

ソフィア:私も心配です。ですが、乗り越えなきゃいけない時もあります。今、○○さんにとって
その時なのかもしれません…

好花:ソフィアさん…

好花とソフィアは、リベラシオンに続く扉の方へ視線を向ける。



ー本の世界ー

1人森の中で、ヘンゼルとグレーテル、そして優佳と優佳を拐ったメギドを探していた美玖の耳に、
どこからともなくハーモニカの音が聞こえてくる。

美玖:(綺麗な音…)

音が聞こえてくる方向に向かって足を運んでいくと、美玖と同じくらいの背丈の、フードを被った人がハーモニカを吹いているのが見えた。

?:!

そのフードの人の周りに、メギドの雑魚たちが集まりだし、フードの子は包囲されてしまう。

美玖:メギド⁉️

美玖は背中に背負っていた剣を抜き取り、ダッシュしてフードの人を助けに向かう。

メギド:グガァァ❗️

?:❗️

襲われていたフードを被った子の周囲にいたメギドたちを、美玖が剣で次々と斬りつける。

美玖:せやぁぁぁ!!!

美玖に斬りつけられたメギドたちが爆発していく。



美玖:大丈夫?怪我はない?

?:はい…

声の高さだけなら男の子でも女の子でもありえる感じだった。

美玖:さっきの、綺麗な音だったね。

?:この曲を聴くと、落ち着くんです。

美玖:君の名前、聞いても良いかな?

美玖に聞かれたその子がフードを少し後ろに下げると、端正な顔立ちが見えた。

?:ヘンゼルです。

名前を聞き、男から探すよう頼まれた2人の子どものうちの兄を見つけたことが判明したが、美玖は
困惑していた。

美玖:(この子…本当に男の子??か、可愛い過ぎる❗️❗️)


12話に続く







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