「大事なこと」
夜、同僚たちが皆退勤した後のオフィスで俺は彼女に問い詰められていた。
麻衣:〇〇。
〇〇:ど、どうした?そんな怖い顔して。
麻衣:どうしたじゃないわよ、忘れたの?
〇〇:わ、忘れたって…あ!
麻衣:思い出してくれた?
急いでデスクに置いていた書類を麻衣に渡す。
〇〇:ごめん!今日までに終わらせてって言ってたの、終わってたけど渡すの忘れてた!
麻衣:もう、そうじゃなくて!
〇〇:え?違うの?
麻衣:当然だよ。
〇〇:えっと…あ、明日の客先のことか。
麻衣:違う、商談のことじゃないって。
〇〇:えっと、それじゃあ…来期に向けた…
麻衣:もう仕事のことじゃないよ!
大声で怒鳴られてしまった。
〇〇:仕事のことじゃ、ない?
麻衣:そうだよ。もう、彼女との約束、忘れちゃったの?
〇〇:え、あ!今度、あの店に行こうって言ってたことか。大丈夫だよ、予約ならちゃんとしてるから。
麻衣:え?あの店、予約取れたの⁉️凄い、ありがとう!
〇〇:もちろん、大事な2人の記念日だもん。
しっかり良いとこ取れたから。
麻衣:あっ、ってそれは凄く嬉しいけど、そうじゃないの。
〇〇:え?
麻衣:もう、この前話し合ったばっかりじゃん…
〇〇:この前…話し合っ…
記憶を探ってみた。
「ごめん、大事な時期なのに体調崩しちゃって」
「もう無茶しないでよ。過労で死んじゃったらどうするの?」
「はは、そんなことにならないよ」
「笑い事じゃないよ、本当にあるんだから」
「麻衣ちゃん。」
「〇〇くんにもしものことがあったら、私…」
「ごめん、麻衣ちゃんに不安な気持ちにさせちゃって」
「うん。〇〇くん、聞いて」
「何、麻衣ちゃん?」
「私は、〇〇くんが仕事熱心だから好きになった訳じゃないんだよ。〇〇くんだから、好きになったんだよ。」
「麻衣ちゃん…お、俺もそうだよ。」
「約束して。これからは絶対無理しないって。」
「分かった。」
〇〇:麻衣ちゃん、俺なら大丈夫だよ。無理はしてないから。
麻衣:本当に?
〇〇:本当、本当!
麻衣:分かった。
それから、麻衣ちゃんが手を繋いできた。
麻衣:〇〇くんのこと、大好きだからね。
〇〇:俺も麻衣ちゃんが、世界で一番好き。
麻衣:もう、〇〇くん。
顔が赤くなっている麻衣ちゃんが可愛いかった。
こんなに可愛いくて優しい彼女に愛されている俺は幸せだ。
fin.
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