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9話「交錯 前編」

ー前回までのあらすじー

クリーニングの配達中、人間を襲っていたオルフェノクを目撃した飛鳥はファイズに変身しオルフェノクを倒すも、その瞬間を見たあやめがホースオルフェノクに変身し飛鳥に襲い掛かってきた。


ホースオルフェノクの魔剣に、飛鳥はファイズフォンをガンモードにして対抗しようとしたが、連続で飛んでくる魔剣による攻撃のせいでタイミングが取れなかった。

身体を拗らせて魔剣の攻撃を避け続けた飛鳥だったが、時々集中が切れて魔剣の攻撃がファイズのアーマーに当たると飛鳥は呻き声をあげた。

その時、何処からともなく飛行音が聞こえ、次の瞬間、弾丸の雨がホースオルフェノクに向かって降り注ぐ。



あやめ:ぐっ!?

あやめが振り返ると、オートバジンが戦闘ロボットのように変形して飛行し、車輪から弾丸を放っていたのが見られた。

あやめは咄嗟にオルフェノクの力で盾を生成し、弾丸から身を守ろうとしたが、乱射される弾丸の勢いに押され、ついに盾を手放してしまう。


飛鳥:!

飛鳥はその隙に、ファイズポインターを右脚にセットし、ファイズフォンの「ENTERボタン」を押した。

「Exceed Charge」

飛鳥はジャンプし、ポインターから敵を拘束するエネルギー状の赤いマーカーを発射すると、ホースオルフェノクを捕捉した。


飛鳥:たぁああああ❗️

あやめはすかさず魔剣を構えると、ファイズのキックの必殺技「クリムゾンスマッシュ」がドリルのように魔剣にぶち当たり、周囲に激しい音が鳴り響き赤い火花を散らす。

あやめ:ぐぅ⁉️

飛鳥:ふぉぉぉ⁉️

あやめ:っ、はぁあああ❗️❗️

接戦の末、あやめの魔剣が強引にエネルギー状のマーカーを破壊し、その余波でファイズドライバーが外れた飛鳥のファイズの変身が解除され、飛鳥は川に落下してしまう。

飛鳥:うわぁあああ⁉️


飛鳥の姿を見失ったホースオルフェノクの胸部からは、ファイズの必殺技を受けて青い炎があがっていた。やがてその炎が消え、あやめはオルフェノクの変身を解いた。

あやめ:うぐっ…ファ、イズ…

痣が出来た胸を抑えながら、あやめはその場に倒れてしまう。


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ー白石麻衣の自宅ー


麻衣:オルフェ…ノク。

櫻丘研究所で会った科学者・菅井友香から、オルフェノクのことを聞かされた麻衣は、その名を口にした。

(ここから回想)

友香:一度死んだ人間が蘇り、人間を襲うことで仲間を増やす、それがオルフェノクです。

麻衣:オルフェノク…。それって、何か病気的なものなんですか?例えば、ウイルスが原因で広まったとか。


友香:そうとも言えますし、そうじゃないとも言えます。

麻衣:どういうこと、ですか?

友香:白石さんは、ガイア仮説って聞いたことありますか?



麻衣:それは…地球を一つの生命体とみなすって言う…

友香:そうです。その仮説をもとに、オルフェノクの出自について考えたんです。

(ここまで回想)

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さくら:飛鳥さぁぁん!!

啓太郎:飛鳥さぁぁん!!

クリーニングの配達から戻ってこない飛鳥を心配したさくらと啓太郎が飛鳥を探しに、先ほどファイズとホースオルフェノクが戦っていた場所付近までやって来た。

啓太郎:!飛鳥さんのバイクだ。

啓太郎が指差す先にさくらと啓太郎が向かうと、菊池クリーニングの袋に包装された服の荷物が積まれたバイクが放置されていた。

さくら:…!飛鳥さん!?


遠くの方にファイズドライバーとその横に倒れている人を見つけたさくらが、ダッシュで駆けつける。

さくら:!?違う…飛鳥さんじゃない…

さくらが倒れていた人の体を仰向けにすると、意識を失っていたあやめの顔が現れた。

啓太郎:え?…!す、すごい怪我しているよ…この子!とにかく、うちに連れて行こう。

さくら:う、うん。

啓太郎があやめの体を抱きかかえて啓太郎のバンまで連れて行き。後部座席にあやめを寝かせた。


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美月:あやめちゃーーん!!

夕食のおつかいに出たきり、帰ってこないあやめを心配した美月が、川の近くであやめを探していた。

美月:あやめちゃん⁉️

その川に流される人の身体を見つけた美月は、川に飛び込んでその身体を引き上げた。

美月:⁉️(違う…この人は…誰?)

引き上げた人の顔を見るとそれはあやめの顔ではなく、意識を失っていた飛鳥の顔だった。

美月:(でも、このままじゃこの人が危ない…)

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ー菊池クリーニング屋ー

あやめを2階の飛鳥の部屋のベッドに寝かせ、さくらと啓太郎は再び飛鳥を探しに外に出た。

あやめ:…


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ー廃虚ー

飛鳥:…

段ボールの上に寝かされていた飛鳥は、意識が朦朧としながら薄目を開けた。

美月:まだ安静にしてください。傷があるので…

美月にそう言われたからなのか、飛鳥は再び眠りに就く。


(バイクの音)


そこに3台のバイクが爆音のエンジンで入ってきた。

不良A:おい、ここは勝手に使われちゃ困るな。

不良B:そうだな、取り敢えず使用料を頂こうか?

美月:ま、待ってください!この人の怪我の手当てがまだ…

不良C:は、中々可愛いじゃねーか、アンタ。

不良Cが美月に近づくと、美月の腕を掴み強引に引きずり出す。

美月:は、離してください!

そこに不良Aが来て、美月のブラウスを無理矢理脱がす。

不良A:へへ、良い身体してんな。

美月:いや…やめてください!



不良B:こいつ、呑気に寝てやがるな。

眠る飛鳥のもとへ不良Bが駆け寄り、飛鳥の胸に手を触れようとした。

美月:!

(ダメ❗️❗️)

その瞬間、美月は全身に力を込め額に模様を浮かべ、オルフェノクの姿に変貌する。


不良A:な、なんだテメ…⁉️

クレインオルフェノクに変身した美月は羽を広げ不良AとCを振り払い、飛鳥に手をかけようとする不良Bのもとへ羽ばたき、不良Bの首を鷲掴みにして宙に浮かせ、そのまま地面に叩き付けるように不良Bを投げ落とす。


不良B:がはぁ…

不良C:クソ、この化け物がぁ❗️

鉄パイプや懐から取り出した携帯用ナイフを手に不良たちが、美月に突っ込んできた。

美月の肩に鉄パイプが当たり鈍い音が辺りに響く。次の瞬間、美月は目の前にいた不良Aの胴体を腕で貫通させ、心臓を抉り取り握り潰す。

その瞬間、不良Aの口から血が飛び、そのまま地面に倒れ込み、砂埃が舞う。


不良C:ひ、ひぃ…💦

目の前で惨たらしく殺された仲間を見て、不良Cの腕が震えていた。だが、構わず美月は爪で不良Cの正面を切り裂き、血飛沫が舞う。

血塗れの身体で息絶えた不良たちの肉体が灰化し、消滅し粉塵が辺りに広がっていく。


クレインオルフェノクの変身を解いた美月が、
自身の掌を見ると、赤い血に染まっていた。

美月:あ…あぁ…

飛鳥:貴女…今のは…

声が聞こえて美月が振り返ると、目覚めた飛鳥がこちらを見つめていた。


美月:い、嫌…嫌ぁあああ!

悲痛な叫び声をあげ、美月は取り乱しながら走っていく。

飛鳥:ま、待って…痛っ💦

脇腹を抑えながら飛鳥は立ち上がり、廃虚から移動しようとした。

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あやめ:…?

目を覚ますと、見知らぬ部屋のベッドで自分は寝ていたのかと思ったあやめは、先ほどファイズと戦って負傷したことを思い出す。その時、

「助けて…」

あやめ:⁉️美月さん…

頭に直接語りかけるように、美月の助けを求める声が聞こえたあやめは、一目散に部屋から飛び出す。


あやめが戸を開けると、あやめの容態を心配して戻ってきたさくらが立っていた。

さくら:あ…

あやめ:…

あやめはそのまま無言でさくらの前を通り過ぎていく。

さくら:あ、待って!

思ったよりあやめの足が速く、さくらは追いつけそうにないと思い諦めた。

さくら:はぁ…はぁ…(家に帰っていったのかな?)


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啓太郎:飛鳥さぁぁん、どこなのぉ!?

大声をあげ、飛鳥を探し続けていた啓太郎の目に、向こうに見える橋を走り抜けていく美月の姿が見えた。

啓太郎:み、美月…さん?

遠くからではっきりとは見えなかったが、美月の目から涙が流れていたのが見え、何かあったのではと、啓太郎は美月のことが心配になった。


飛鳥:…啓太郎、くん?

後ろから飛鳥の声が聞こえ啓太郎は振り返ると、橋の手すりに寄っ掛かりながらこちらに向かってくる飛鳥が見えた。

啓太郎:飛鳥さん!

啓太郎は、飛鳥のもとにダッシュで向かう。


啓太郎:良かったぁ…もう飛鳥さんがオルフェノクにやられちゃったのかと思って、気が気でなかったですよ…

飛鳥:もう大袈裟ね…大丈夫だから。

啓太郎:本当に大丈夫ですか⁉️

飛鳥:だから、大丈夫だってば笑。

深刻な表情になる啓太郎に、飛鳥は笑いながら啓太郎の肩を叩く。

飛鳥:(でも…あの人…)


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美月:(違うの、お姉ちゃん…私は…)

先ほど廃虚で飛鳥に見つめられた時、美月には
自分の今の成れを悲しそうに見つめる姉の顔が見えた。

あの世にいる姉が、今の自分を拒否しているかのように感じてしまった美月は、無我夢中で何かから逃げるように走り続けていた。


美月:⁉️


あやめ:み、美月さん…

目の前に立っていたあやめを見た瞬間、美月はあやめに飛びつくように抱きついた。

美月:う、うぅ……

声を押し殺して涙を流す美月に、あやめはそっと腕を美月の背中に回し、優しく包む。

あやめ:良かった…美月さんが無事で…

夕陽が2人を照らしていた。


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ー白石麻衣の家ー

紗耶:お姉ちゃん、また難しそうな顔してるよ。

今年高校生になったばかりで麻衣の妹、白石紗耶が帰ってくるなり、麻衣の顔を覗き込む。

麻衣:紗耶、おかえり。

紗耶:ただいま〜、何か事件で悩んでるの?

麻衣:うん、まぁ〜そんなところ。

紗耶:あまりずっと悩み過ぎてると、綺麗な顔が台無しだよ?

麻衣:紗耶?貴女、まさか何か欲しいのがあって、そんなこと言ってんじゃないでしょうね?

紗耶:えへへ、バレちゃった?笑

麻衣:もう笑。早く宿題とか終わらせてきなね。

紗耶:はぁ〜い。

姉妹の何気ないやり取りが終わると、麻衣は再びテーブルに視線を落とし、友香から聞いたことを思い出していた。


(ここから回想)

友香:オルフェノクというのは、地球の意志で生まれた防衛システムであり、同時にバランス調整システムと考えているんです。

麻衣:?オルフェノクが…地球が生み出したシステム?

友香:今のところ、私はそう考えています。そして、そのシステム通りにいけば、今の人間は全て滅びます。

(ここまで回想)


麻衣:人間が…滅びる…


一方で、自分の部屋に戻った紗耶は、鞄からアタッシュケースを取り出す。


紗耶:…

そのケースを紗耶は無言で見つめていた。


10話に続く

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