君のことは、君だから好きになったんだよ。
〇〇:ふぁ…
ベッドの上で目を覚まして起き上がりカレンダーを見る。
今日は土曜日で本来なら休みの筈だが…
〇〇:会社行かなきゃだ…
休日出勤をしなければいけなかった。
憂鬱な気分で顔を洗いに洗面所に向かい、
部屋に戻ってスーツに着替え、
家を出ようとした。
が、玄関に向かうと…
紗耶:ストーーップ❗️
紗耶が玄関前を立ち塞いだ。
〇〇:ふぁ…紗耶、そこ退いて。
紗耶:嫌だ、退かないよ。
〇〇:会社行かなきゃなんだよ。
紗耶:この前もそう言ってたよね?
〇〇:この前?
紗耶:休みの日だって言って、一緒に出かける予定立てたのに、急に仕事だって言って行っちゃったじゃん!
そのことを言われ、まだ怒っているんだなと思った。
〇〇:あの時は、その…ごめんって。
〇〇:本当に仕事だったんだよ。
紗耶:本当に?
〇〇:本当だよ。
紗耶:浮気、じゃないよね?
〇〇:違うって!
流石に苛立ちそうになり、無理矢理紗耶を退かして玄関のドアに触れようとした。
〇〇:ごめん、行…
ぎゅっ
ドアノブに触れた瞬間、紗耶に後ろから抱きつかれた。
紗耶:ごめん〇〇…
〇〇:え?
紗耶:本当は分かってるよ。
紗耶:〇〇が浮気してないって。
〇〇:う、うん…
紗耶:仕事、頑張ってるって。
紗耶:でも…
紗耶:だから心配なの!
肩に水滴が落ちたのを感じた。
紗耶:無理してるんじゃないかって…
紗耶:だって最近、ずっと〇〇疲れたような顔してるんだもん。
その声を聞いて、進めようとした脚を止めた。
紗耶:前はいつも笑っていたのに…
ドアノブから手を離して、紗耶の方を向いた。
〇〇:紗耶、俺…
紗耶に向けて話そうとした瞬間、頬が濡れていた。
〇〇:俺…
溢れでそうなのを堪えて、口を動かした。
〇〇:全部、紗耶と俺のためにやっているって思ってた。
〇〇:普段残業が多いのも、上司が放り投げた仕事を済ませるのも、休みの日が急に出勤になっても嫌な顔せず会社に行くのも。
紗耶:うん…
〇〇:どんなに辛くても、苦しくても…
〇〇:いつかは終わりがあるって思って…
〇〇:そしたら、紗耶と沢山楽しく過ごせるって…
〇〇:でも…
我慢していたのが溢れ出そうになって、目から垂れていた。
それで頬がまた濡れた。
それを紗耶が手で拭ってくれて…
それから、目を見つめて微笑んでくれた。
紗耶:〇〇。
紗耶に頭を撫でられ、いつの間にか顔を紗耶の肩に乗せていた。
〇〇:…うぅ…
〇〇:でも、いつ終わるのか分からなくなってた…
〇〇:不安で、不安で…
〇〇:こんなんじゃ、紗耶のこと支えられないんじゃって…
気づいたら、顔中が涙まみれになっていた。
力が抜けて倒れそうになった。
〇〇:!
けど、紗耶が支えてくれた。
紗耶と目が合い、見つめあった。
紗耶:ねぇ、よく聞いてね?〇〇。
〇〇:う、うん。
紗耶:紗耶はね、〇〇だから好きになったんだよ。
紗耶:無理して働いているからじゃないんだよ?
紗耶:それで〇〇が壊れたら、紗耶は凄く悲しいよ…
〇〇:紗耶…
紗耶:だからね、もっと自分を大切にしてね。
紗耶:それが、紗耶の大好きな〇〇だから。
涙が止まらなくなった。
でも、それは悲しいからじゃない。
嬉しいからだ。
こんなにも、紗耶が想ってくれてるのが…
〇〇:あ、ありがとう…
〇〇:うぅ…うぅ…
紗耶:ふふ、久しぶりにすっごく泣いてるね。
紗耶:ちっちゃい時の、〇〇みたい笑
〇〇:う…そ、そうだね笑
久しぶりに思いっきり泣いて、
それから久しぶりに、
思いっきり笑った。
その日は会社を休んで、紗耶と過ごした。
それから数日経ち、会社の上の人たちに相談してきた。
そして、会社に辞表を出して来た。
上司はもちろんブチ切れた。
でも、そんなの関係ない。
だって、大切なのは、
俺と紗耶、
2人がありのままで幸せでいられることだから…
fin.
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