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「風邪引いて寝込んだだけなのに、こんな幸せなことあって良いんですか!?」


ごほ、ごほ…

咳き込む声が朝の部屋に響き渡る。

昨日から体調を崩して寝込んでしまい、今日はバイトが入っていたが行けそうになかった。


バイト先には事情を話して今日は休みにしてもらったが、喉が痛く熱もしばらく冷みそうになくて、このままだと明日も休みになりそうだ…


それくらい、しんどかった。


今朝、なんとか病院には行って検査してもらった結果、単なる風邪と分かりホッとはしていた。


ベッドの横に置いてあった薬を水に含ませて飲むと、再び寝ることにした。

〇〇:(うぅ…早く治ってくれ…)

そう切に願いながら目を閉じた。




しばらくして、目が覚めて時計に目をやると13時を指していた。


〇〇:(そろそろ休憩時間か…)

すると、スマホから通知の音が鳴り響いた。

〇〇:(多分、信二のやつからだろうな。)

バイト先の友だちが心配してメッセージをくれたんだろうと思い、返信しようとスマホのロック画面を見た。


通知のところに信二からメッセージが届いているとの表示がされていたのは予想どおりだったが、その下にもう一つ通知が来ていた。


「久保史緒里さんからメッセージが届いてます」


〇〇:史緒里ちゃんから?


史緒里ちゃんは3ヶ月前からバイトに入って来た新人さんで、初めはふんわりとした綺麗な子だなと思った。

というか、ウチのみせに来るような子じゃないと思った。

それくらい、史緒里ちゃんは顔が白くて綺麗で、とにかく可愛すぎたのだ。

しかも、史緒里ちゃんは入って少ししてから何かと分からないことがあると俺にすぐに聞きに来たり、休憩中も話かけて来るようになった。

時々他のバイト仲間が史緒里ちゃんに話しかけても、大抵短い時間で会話が終わるのに、俺とだと何故か話が弾んで中々途切れなかった。

それで、時々店長に怒られそうになったりもした。

でもそのおかげか、史緒里ちゃんとは他の人よりもだいぶ親しい間柄になっていた。

他の、バイト仲間に影で羨ましがられるくらいに…




信二にLINEで返信してから、史緒里ちゃんからのLINEのメッセージを読み上げた。

史L:体調大丈夫ですか?

すぐ史緒里ちゃんに返信した。

○L:うん、なんとか…急に体調崩してごめんね。

すると、すぐ史緒里ちゃんから返信が届いた。

史L:いえ、こちらこそ普段世話かけてもらってばかりですから!

史L:無理しないでゆっくり休んでくださいね。

なんて優しい子なんだと思いながら、メッセージを打った。

○L:ありがとう。

史L:今日早く上がれそうなので、あとでお見舞いに行っても良いですか?

え?お、お見舞いに史緒里ちゃんが来てくれる??

でも風邪移しちゃ悪いよな…

○L:お見舞い?風邪移しちゃうかもしれないから無理しないで良いよ。

史L:大丈夫です、こう見えて私風邪一度も引いたことないので!

はっきりとそう言われたので、史緒里ちゃんの話に乗っかるようにメッセージを打った。

○L:本当に?すごいね。

史L:〇〇さんの分まで残りのシフト頑張りますので。

○L:ありがとうね。

史L:よく休んで待っててくださいね。


史緒里ちゃんとのLINEでのやりとりを終え寝ようと思ったが、史緒里ちゃんが見舞いに来てくれると思うと中々寝付けられなかった。


〇〇:(史緒里ちゃんが来てくれるだと!?)


ああ、ダメだ!!寝るんだ!!考えるな!!


そう頭の中で念じても、やっぱりあの話しかけられた時に史緒里ちゃんが見せる笑顔がどうしても頭の中をよぎってしまう。



もしかして、俺は…史緒里ちゃんのこと…




ピンポーンッ


インターホンが鳴り、俺はベッドから抜け出して玄関まで向かいドアを開けた。


史緒里:〇〇さん、お疲れ様です。

〇〇:史緒里ちゃん、お疲れ様。ごほ…来てくれてありがとうね。

史緒里:まだ、少し具合悪いですか?

〇〇:そうみたい…

史緒里ちゃんを家の中まで案内した。


史緒里:じゃあ、お粥とか作りますね。

〇〇:ありがとうね。

史緒里:いえいえ、いつも店でお世話になっている恩返しでもできればと思ってますから。

史緒里ちゃんがキッチンでお粥を作っている間、俺はリビングのソファーに布団に包まって横たわっていることにした。


〇〇:そういえば、今日店の方どうだった?

史緒里:今日も大変でしたよ、〇〇さんいないから店長も困った〜ってずっと嘆いてましたよ笑

○○:そっか笑

史緒里:私も、今日は〇〇さんがいなかったからちょっと不安でした。

〇〇:そんな、史緒里ちゃんなら大丈夫だよ。ごほ…店長も、この前史緒里ちゃんのこと褒めてたよ。ごほ…史緒里ちゃんは飲み込みが早くて良いって。

史緒里:それは、〇〇さんのおかげですよ。〇〇さんが丁寧に教えてくれて、私がなんかミスした時もすぐフォローに入ってくれて、〇〇さんがいないと私、まだまだですよ笑

〇〇:そうかな、そんなことないと思うけどな。史緒里ちゃんがしっかりしているのもあると思うよ。史緒里ちゃんは、バイトの時いつも一生懸命だし。

史緒里:そんな、変に私のこと持ち上げないでくださいよ笑

〇〇:はは、ごめんって笑

史緒里:それに、今日はちょっと寂しくて…だからすぐに…

料理の手を止めて、史緒里ちゃんの声が小さくなっていた。


〇〇:え?

史緒里:…あ、なんでもないです!待っててくださいね、お粥できるのを。

〇〇:う、うん。


それから史緒里ちゃんがお粥を作ってくれてる間、静かにしていた。


時々、史緒里ちゃんが料理しながら小さい声で歌っているのが聞こえてきた。


〇〇:(声も綺麗だな〜)


なんて思いながら、心地よくなっていた。





史緒里:お粥、できましたよ。

お盆に乗せて、作ってくれたお粥を史緒里ちゃんが持ってきてくれた。

〇〇:ありがとう。

俺は体をソファーから起こして、自分でお粥を食べようとした。

史緒里:あ、無理しないで良いですよ。

○○:え?

そう史緒里ちゃんは言うと、お粥の入った茶椀を持ち蓮華でお粥を掬うと俺の口元まで蓮華を運んだ。

史緒里:はい、あ〜んしてください。


え、う、うそだろ???

こ、こんなことまで史緒里ちゃんにしてもらって…良いのか???

明日、天気荒れるんじゃ????


などと頭の中でごちゃごちゃになっていた。


史緒里:あ、ふ〜ふ〜しておきますね。


お、おい???

しかも、ふ〜ふ〜まで!!??


史緒里:はい、〇〇さん。

〇〇:え、ああ…

そのまま、口をあ〜んと開け史緒里ちゃんにお粥を食べさせてもらった。

史緒里:どう、ですか??


そ、そんなの決まっているじゃないですか…


○○:美味しい、よ。

史緒里:良かった、嬉しいです!!


急に顔が熱くなった。

勿論、体調が悪くなったからではない。

あんな、女神のような微笑みを見せられたらからだ。




そして、あっという間にお粥も平らげていた。


史緒里:〇〇さん、さっきより顔色良くなりましたね。

そう言われて、いつの間にか喉の痛みもだいぶ引いたことに気づいた。

〇〇:史緒里ちゃんのおかげで、体調良くなったかも。

史緒里:良かったです、看病した甲斐があります。

気のせいか、史緒里ちゃんの顔が赤く見えた。

〇〇:史緒里ちゃん、熱があるんじゃ?

史緒里:え?だ、大丈夫ですよ。元気です、私は。

〇〇:そっか、良かった。てっきり史緒里ちゃんに風邪うつちゃったかと…

史緒里:あの…ずっと〇〇さんに言いたかったことがあるんです。


急に雰囲気が変わり、変な緊張が始まった。


史緒里:私、〇〇さんと一緒にいると楽しくて、だから今日〇〇さんが店にいなくてちょっと寂しかったんです。

〇〇:史緒里ちゃん…

史緒里:それで、気づいちゃったんです…私、





〇〇さんのこと、好きだって。




その瞬間、全てのものがスローになったかのように感じた。


幻聴かと思った。


でも、違った。



俺は、史緒里ちゃんに気持ちを打ち明けた。

〇〇:史緒里ちゃん、実は俺も…



史緒里ちゃんのことが好きだ。


史緒里:〇〇さん。

〇〇:だから、史緒里ちゃんが良ければ、その…付き合ってください!


頭を下げて、俺は手を差し出した。




そして、その手が握られた。顔を上げると、史緒里ちゃんが微笑んでいた。

史緒里:よろしくお願いします、〇〇さん。


史緒里ちゃんの握る手と同じく真っ白な顔に頰が桃のように色づいて、その美しさに見惚れてしまった。


fin.

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