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6話「Xのライダー」


ー菊池クリーニング屋ー

啓太郎:そーいえばさ、昨日のオルフェノク誰かに攻撃されてたよね?

朝の食卓で啓太郎に聞かれた飛鳥とさくらが、あごに手を添え、頭の中で昨日起きたことを振り返っていた。

一度はファイズのベルトをオルフェノクの戸田に奪われたが、すぐ背後から謎の人物に攻撃され戸田はベルトを手放してしまい、その後ファイズに変身した飛鳥に倒されたのだ。


さくら:あぁ、確かに…でも、誰なんだろう?姿は見えなかったし…もしかして…

さくらが何か思い当たる節がある感じを匂わせたが、途中で言うのを止めた。



飛鳥:何?何か知っているの、さく?

さくら:いやぁ…もしかしたら、私たち以外でオルフェノクと戦っている人なのかな、って思ったんです。

啓太郎:だとしたら、その人に会ってみた方が良いんじゃないかな?ほら、味方は多い方が良いじゃん?

さくら:ちょっと、啓太郎!話進め過ぎ、それにまだ味方かどうかは分からないでしょ?

啓太郎:そんなことないでしょ!僕たちを助けてくれたんだし。ねぇ、飛鳥さん?

さくらと啓太郎の視線が飛鳥に向けられたが、飛鳥は興味なさそうな表情でいた。




飛鳥:さぁ〜ね、どうだか…

啓太郎:え、興味なし??

飛鳥:まぁ、誰であれ助けてくれたんだから、それで良くない?…

啓太郎:なんだよ〜、二人とも乗り気じゃないの…

さくら:だいたい啓太郎、昨日勝手に変身しようとしないでよね。危うくオルフェノクに、ベルト取られるところだったじゃない!

啓太郎:それは、僕だって人助けしたかったし…

さくらに強く非難され肩を落とす啓太郎だったが、飛鳥は大きなあくびをして目を逸らした。


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ー都内 高層マンションー


(スマホの着信音)

美月:ふぁ〜、はぁ〜い…

眠っていた美月は、ベッドの傍に置いていたスマホの音で目を覚まし盛大なあくびをしながら、スマホを手に取った。

スマホの画面に表示された受話器マークをスライドすると、ビデオ通話に切り替わった。


戸田:私だ、山下くん。君に、最後の実習を見せる。それは…

戸田が言いかけた瞬間、戸田の顔から青い炎が上がり出す。

美月:!?

戸田:オルフェノクの死だ…それは、完全な消滅。

美月:戸田さん!?

戸田:それと、ファイズには、気をつけろ…奴は、我々にとって危険…

映像が乱れ、ビデオ通話が強制終了させられる。


美月:(戸田さん、一体何が…!?それに…)

あやめ:どうか…しましたか?

美月:!

美月の戸田とのやりとりの音で目を覚ましたと思われるあやめが、いつの間にか隣にいた。

美月:ううん…なんでも、ないよ…

美月は急いでスマホを懐に隠した。

美月:(戸田さんが言ってた、ファイズって…)


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啓太郎:よしっと、準備OK。

啓太郎がクリーニング屋の開店の準備を済ませ一息ついている中、飛鳥はソファーでゴロついていた。

飛鳥:ふぁ〜あ〜。

啓太郎:ちょっと、飛鳥さん。そんなニート見たいな感じで…あ、そうだ。飛鳥さん、手伝ってください。

飛鳥:はい?

啓太郎:だって、どうせ暇ですよね?

啓太郎は飛鳥を無理やり起こすと、服装を整えさせエプロンを着せた。


飛鳥:ちょっ、何よこれ??

啓太郎:今日から、飛鳥さんはうちのアルバイトってことで。

飛鳥:な、勝手に決めないでよ!?アルバイトなんかしないわよ!

啓太郎:ダメですよ、いい大人が平日の昼間から家でゴロゴロなんかしてちゃ。

飛鳥:ゴロゴロじゃない、休憩よ。

啓太郎:じゃあ、休憩終わりってことで。

飛鳥:っていうか、さくは?さくに頼んでよ…

啓太郎:えんちゃんなら、新しいバイト先に挨拶しに出かけましたよ。だから、今は飛鳥さんしか頼めないんですよ。

客:あの〜、クリーニングお願いしま〜す。

啓太郎:はーい、今行きま〜す!


啓太郎が飛鳥を連れてカウンターにやってくると、一人の女性の客がクリーニングに出すと思われる洋服を詰めた紙袋を抱えていた。

客:あら、啓太郎ちゃん。アルバイトさん雇ったの?

啓太郎:そうなんです、今日からここで働いてもらう齋藤飛鳥さんです。

客:すごいわね〜、啓太郎ちゃん。もう立派な経営者じゃな〜い。

啓太郎:いや〜、みなさんのおかげで笑。

飛鳥:何ニヤニヤしているのよ!しかも、また勝手に…

啓太郎:ほら飛鳥さん、挨拶!

飛鳥:え、もう…どうも、初めまして…

客:それにしても、あなた顔が小さいのね〜まるで、こうなんか豆粒みたいな…

啓太郎:そ〜なんで…!??


客が持ってきた服の枚数を数え終えた啓太郎が飛鳥の方を向くと、飛鳥の表情から殺気がダダ漏れしていた。

飛鳥:ああ??💢今、なんて???💢💢

客:あ、いやぁぁ…その…

飛鳥の鋭い眼光に負けたのか、客が萎縮していた。

啓太郎:ああ、気にしないでください💦あ、スカート2着とブラウス3着で、服は全部で5着ですね?しっかりキレイにしておきますね。

啓太郎は預かり証に金額を書き入れチェックをし、控えを客に渡した。

客:よ、よろしくね。啓太郎ちゃん…

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あやめ:ところで、これから私たち、どうすれば良いんでしょうか…

マンションから出て散歩をしていた美月とあやめは、あやめが話題を振ったことにより歩みを止めた。

美月:それは、まだ分からない…ただ、オルフェノクたちの目的は、人間を襲って仲間を増やすことらしい。でも…

あやめ:?

美月:でも出来ないよ、何も恨みも無い人を襲うなんて…

あやめ:それは、私も同じです。

(悲鳴)

美月・あやめ:⁉️


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悲鳴が聞こえた方へ美月とあやめがダッシュで向かうと、2体のオルフェノクがそれぞれ、サラリーマンとOLの首を掴んでいた。

その周りには、複数の人間の生前着ていたと思われる衣服や身につけていた鞄、そして灰の山々が散乱していた。

美月:やめて❗️


美月がオルフェノクに変身し、羽を広げて飛行しながらオルフェノクたちに突進した。

オ1:ぬわぁ!?

美月に体当たりを食らわされたオルフェノクたちは吹き飛び、そのお陰でオルフェノクたちに拘束されていたサラリーマンとOLが解放され、あやめが避難させた。

あやめ:今のうちに、逃げてください。



サラリーマンとOLがあやめに従い逃走するのを確認してから、あやめもオルフェノクの姿に変貌し美月に加勢する。

オ1:なんだお前ら!?何故、邪魔をする!?

美月:貴方たちは、この人たちに何かされたの!?

オルフェノクと美月の影が青白く光り、人の姿が映し出される。

オ1:んな訳あるか!

美月:だったら、もう人を襲うのはやめて!

オ1:何を言っているんだ、人間を襲うのはオルフェノクの使命だろうが!

オルフェノクが連続でパンチを繰り出し、美月はそのパンチを避け続け、隙をついてカウンターを入れた。


一方、あやめが対峙していたオルフェノクは右手にボウガンを召喚し、ボウガンから矢を放った。すかさずあやめは剣を召喚して、剣で矢を弾き飛ばす。


オ2:馬鹿なことはやめろ!こんなことして、どうなるかわかっているのか?

あやめ:え?

オ2:これは、裏切り行為だ。スマートブレインが黙ってないぞ!


(銃撃音)


突如、銃声が鳴り響き、戦闘の最中の美月たちが複数の光弾を浴びて吹き飛ばされ、地面に転がされた美月とあやめのオルフェノクの変身が解けた。



美月:ぐぅ…!

背中に痛みを感じていた美月だったが、攻撃の放たれた木陰に視線を向けた。するとその木陰から、Xのマークが描かれたマスクと全身に黄色いラインが引かれた、ファイズによく似たライダーが現れたのだった。

そのライダーは、美月たちが対峙していたオルフェノクたちに襲いかかり、マスクと同じようにXの形をした持ち手が特徴的な剣を逆手に持ちながらオルフェノクたちを斬りつけていく。

美月:(まさか…あれは、ファイズ?)

あやめ:げほぉ…美月さん、あれ…

美月:あやめちゃん、ここは逃げよう…

美月は自力で起き上がり、倒れていたあやめが起き上がるのを手伝い、あやめに肩を貸し、その場から去っていった。


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オ1:誰だ、貴様は!?

?:名乗る必要、ある?

謎のライダーは、逆手に持っていた剣から今度は持ち手の銃口から光弾を放ち、オルフェノクの胴体に光弾が被弾した。

オ1:ぐおぉ!?

オ2:ちっ…

謎のライダーからの攻撃を受けていなかったオルフェノクの方が、遊泳体になって近くの川に飛び込み姿をくらました。



「Exceed Charge」

謎のライダーが剣の銃口から1発の光弾を放ち、その光弾が光の檻のようなエネルギー波に変化してオルフェノクを拘束した。

オ1:な、何っ!?

?:はぁあああ!!

剣を構えた謎のライダーの姿が一瞬で消え、次の瞬間、オルフェノクの胴体を切り裂いた。

オ1:うわぁぁぁぁぁ!!??

オルフェノクが爆発し、青い炎を上げながら全身が灰と化して消滅した。


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ー菊池クリーニング屋ー

店の入り口の引き戸が開き、クリーニングの配達を終えた飛鳥が戻ってきた。

啓太郎:あ、飛鳥さん、おかえりなさい!

さくら:おかえりなさい、手伝っていたんですね。

飛鳥:はぁ〜、ただいまぁ…

啓太郎:もうダメですよ、お客さんたちを怖がらせちゃ…

飛鳥:だって、どいつもこいつも人のことを!!…豆だとか、爪楊枝だとか…

啓太郎:ハイハイ、落ち着いてください。ま、ちょっと言い過ぎでしたけど…

飛鳥:ていうか、啓太郎くんもさりげなくディスられてたんだよ?彼女なしとか、草食系だとか、芋だとか?

啓太郎:別に良いじゃないですか、みんな心配して言ってくれているんだし。

飛鳥:そういうことじゃないでしょ…なんだって…


愚痴を垂らし疲れ果ててソファーにダイブした飛鳥に、さくらが茶を用意してくれた。

さくら:お疲れ様です。

飛鳥:ありがと…あ、そういやバイトどうだったの?

さくら:今週から週2で入ることになりました。店長さんも、優しい人でした。

飛鳥:そっか、良かったね。

さくら:啓太郎のこと、手伝ってくれてありがとうございます。


飛鳥:っていうよりは、勝手にバイトにさせられたんだけどね…

さくら:でも、啓太郎が助かっているって言ってましたよ。まぁ、アイロンがけが苦手なのとかは、聞きましたけど…

飛鳥:だって、熱過ぎたから。

さくら:それに、ちょっと客を怖がらせたとかも…

飛鳥:それは、向こうが弄ってくるから。




啓太郎:ごめん、飛鳥さん。これの配達がまだ残っていたんで、お願いします。

預かっていた客の衣服のアイロンがけの作業を済ませなければいけなかった啓太郎は、飛鳥に今日の最後の配達を頼んだ。

飛鳥:ふぇ〜い、了解〜。

さくら:あ、私も一緒に行きますよ。

飛鳥:え…良いよ、なんか悪いし。

さくら:大丈夫ですって!


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飛鳥と一緒に配達を手伝うと言ったさくらは、バイクを運転する飛鳥の後ろに乗り、飛鳥の腰に腕を巻いていた。

さくら:はぁ〜、あったかい…

飛鳥:ちょっと、それするため??

さくら:だって、落ち着くんですもん♪

飛鳥の温もりに浸っていたさくらは、にやけつきながら言った。

飛鳥:もう…ちゃんと掴まっててよ、出ないと振り落とされちゃうから。

さくら:は〜い。

やれやれ…といった表情をしながらも、飛鳥も微笑みを浮かべていた。

(急ブレーキ音)


さくら:!?

飛鳥が急にブレーキをかけ、何が起きたのかと思ったさくらは飛鳥の後ろから顔を覗かせると、気味の悪い笑い声をしていた男が立っていた。

男:くっくく…君たち、ベルト持っているよね?

飛鳥:!

男の姿が変わり、先ほど美月たちが戦っていたオルフェノクの姿に変貌していた。


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飛鳥:オルフェノク…!?

オルフェノクの右手に召喚されたボウガンから矢が放たれ、飛鳥たちの乗っていたバイクに被弾し、飛鳥たちが吹き飛ばされる。

さくら:う…痛っ…

飛鳥:さく!?大丈夫!?

さくら:平気です…それより、早く…

飛鳥:うん!

飛鳥は急いで転倒していたバイクの近くに転がっていたアタッシュケースから、ファイズギアとファイズフォンを取り、ファイズギアを装着する。



オ2:ふん。

オルフェノクはボウガンの照準をさくらの方に向け、ボウガンから矢を再び放つ。

飛鳥:!?

オルフェノクの放った矢からさくらを庇おうと、飛鳥は左腕でさくらを地面に伏せさせた。が、矢が飛鳥の腕を擦り、飛鳥の左腕から血が吹き出た。

飛鳥:うぐっ…!?

さくら:飛鳥さん!!??


飛鳥:平気、大したこと…ないから…

飛鳥は傷の痛みをこらえながら、ファイズフォンに番号を入力した。

「5 5 5  Standing By」


飛鳥:変身!

「Complete」


ファイズに変身した飛鳥がオルフェノクの元に一気に距離を詰め、右腕からストレートを放つ。

飛鳥:はぁあ!

飛鳥の攻撃を受け地面に転がされたオルフェノクに、飛鳥が続けて攻撃を繰り出そうとした瞬間、飛鳥の左腕から激痛が走り飛鳥の動きが止まる。

飛鳥:がぁ…うぅ…!!

飛鳥が苦しむ様子を見たオルフェノクは、飛鳥に仕返しのフックを数発叩き込み、最後にキックを飛鳥に浴びせた。

飛鳥:うわぁああ!!


オルフェノクからの攻撃と、左腕に負った傷の痛みが飛鳥の体にダメージを蓄積させていた。

さくら:飛鳥さん!?

飛鳥にかけよったさくらだが、オルフェノクのボウガンの先端がこちらに向けられているのに気付くのが遅かった。

さくら:あっ!?

オルフェノク:ふん。

ボウガンの引き金をオルフェノクが引こうとした瞬間、


(銃撃音)


先ほどオルフェノクが戦っていた謎のライダーが飛び込んで姿を現し、オルフェノクにパンチを浴びせていた。

飛鳥:!?

さくら:も、もう一人の…ファイズ?

?:すぅあ!!


連続でパンチを受け怯んでいたオルフェノクに、謎のライダーがファイズフォンそっくりの携帯から光弾を、オルフェノクの胴体目掛けて発射した。

オルフェノク:ぐう…


飛鳥:!

謎のライダーがオルフェノクを圧倒しているのを見て、飛鳥はメモリをポインタに装填し、右足にセットした。

「Ready  Exceed Charge」

?:ん?

背後にいた飛鳥が必殺技を繰り出そうとしているのを読み取った謎のライダーは、飛鳥からの攻撃のラインから自分を外し、様子を見守ることにした。

飛鳥が空高くジャンプし、前宙しながら右足から赤いエネルギー状のマーカーを出現させ、オルフェノクを拘束する。



飛鳥:たぁああああ!

ファイズの必殺技「クリムゾンスマッシュ」を受け、オルフェノクは爆発し全身が崩れて消滅した。



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飛鳥:あなた、何者?

ファイズの変身を解除し腕を抑えていた飛鳥に呼びかけられ、Xの仮面をしたライダーが振り返ると、ベルトからファイズフォンに似た携帯を抜き取り、変身を解除した。

?:土生瑞穂、カイザの装着者って言えば良いかな?

さくら:カイザ…?

6話 完



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