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イスレア王国の少年(1/3)

 これは,遠く離れた異国の昔話。



 一人の少年がいました。その少年に両親はいません。
 両親は王国に殺されてしまったのです。国王の圧政によって。

 その国では収入の半分の納税、長時間の労働が制約として決められており、市民は満足な生活を送ることができませんでした。
 そして、それらを守れない者、逆らおうとする者たちはみな、何の躊躇もなく殺されるのです。

 少年の両親も制約を守ることができませんでした。大切な人たちを殺された少年は、国を憎みます。

 なぜ,そこまで残虐な行動を市民にとるのでしょうか。それは王家の人間が裕福な暮らしをするため、そして国の軍事力を上げるためです。
 長年隣国と戦争を続けた結果、国はとても厳しい状況でした。戦争には勝ち続けていましたが、それに見合う分だけの損害を受けており、国の現状は悲惨なものです。

 そんな状況を立て直すために必要なお金を市民に払わせているのです。そして、残りのお金で王家の人間は裕福な暮らしをしていました。
 王家の人間たちは「国の強化の為に尽力した褒美」と自分たちに言い訳をして、毎晩、酒を飲み交わし私欲の限りを尽くしていました。それに対して市民は長時間の労働、厳しい納税により、限界が来ていました。

 そんな状況を知っている少年は国を変えることを考えます。ですが、ただの子供にはどうすることもできずに、ただ国への恨みが膨らむばかりでした。
 そんなある日、少年が町を歩いていると、厳しすぎる制約に耐えかねた市民が、王国兵に訴えていました。

「こんなにお金を払っていたら私たちは生活ができません。税金を減らしてください。お願いします!」

 全市民を代弁するかのような願いだった。しかし王国兵はこう言いました。

「誰のおかげでお前たちのようなゴミが生活できていると思ってるのだ。すべては国王様がこの国を維持しているから生きていられるのだ!そんなこともわからない人間など、この国で生きている価値などない!」

 そう言い放った王国兵は剣を抜きました。街中で悲鳴や泣き叫ぶ声が聞こえてきます。それを見た少年は激しい怒りの中、こんなことを思いました。

「こんな国があっていいはずがない。すべての人が幸せに生きていける世の中でなければならない!こんな王国のやつらなんてすべて殺して俺が国を変えるんだ!!」

 そんな理想を掲げる少年は、何もすることができません。行き場のない怒りが少年を動かそうとします。しかし、感情のまま出ていけば、さっきの市民と同じく殺されてしまいます。


 少年はもう限界でした。

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next→5/11(Monday) 20:00

Written by D-JACKS 

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